脊髄損傷とは

ここでは脊髄損傷とはどういうものなのか、その概要や症状、合併症について解説していきます。

概要

脊髄損傷とは、何らかの要因で脊髄が損傷した状態です。脊髄は末端で感じた感覚を脳に伝える、もしくは脳からの指令を伝える役割があります。歩くことや座ること、冷たいものに冷たいと感じる、暑い部屋に行って暑いと感じるのはいずれも脳からの指令や末端で感じたことなどが関係しています。脊髄損傷の状態だと感覚が機能しなくなる麻痺状態になるのです。

基本的には外からの圧力・衝撃で損傷してしまい、交通事故や高所からの転落、転倒などが該当します。またスポーツを行っている際に脊髄損傷になるケースも多く、競馬の騎手が落馬によって脊髄損傷になるケースもあります。

脊髄損傷は年間5,000人ほどが受傷するとされ、年代に応じて受傷原因は異なります。若い人は交通事故や転落、スポーツ、年齢を重ねる中で平地転倒の割合が増えていく傾向にあるのも特徴です。

症状

脊髄損傷の症状は損傷した部位や損傷具合によって大きく異なります。ここからは症状について詳しく解説します。

発症部位

発症部位に関してはそれぞれの部位で区分けされており、頸椎はC1からC7、胸椎はT1~T12、腰椎はL1からL5、仙椎はS1からS5に分けられています。

分かりやすく説明すると、発症部位から下の部分が働きにくい状態となります。例えば胸椎で損傷が起きれば、頸椎は損傷していないため上半身は動かせるものの、下半身は動かしにくく、感覚も消えてしまうのです。

そのため、発症部位が上にいけばいくほど、症状は深刻なものとなり、生命の維持で精一杯という事態を招きます。

例えば、頭を守る頸椎の場合、C1~3の部位で損傷が起きると横隔膜などが動かせなくなるため、自力での呼吸ができません。そのため、人工呼吸器を使わないと生命の維持ができなくなってしまうのです。一方同じ頸椎でもC6~8の部位での損傷だと横隔膜は動かせるため、呼吸自体はできますが、腹式呼吸しかできないなど、発症部位の違いでかなりの違いがみられます。

知覚麻痺

知覚麻痺は脊髄が損傷することで感覚情報が脳に伝わらない状態を指します。脊髄は脳から指令を伝え、末端から情報を受け取るための伝達路ですが、損傷によって末端からの伝達路が遮断されてしまい、手足などの感覚がわからないなどの状態になったのが知覚麻痺です。

皮膚などにある受容器で熱い、冷たい、痛いなどの情報をつかみ、その情報を脊髄に向かって信号を送り、脊髄から脳に向かって伝達されることで、熱いや痛いなどの情報を把握できます。知覚麻痺だと、熱いや痛いなどの情報が入りようがない状態にあります。

完全麻痺

完全麻痺は完全損傷とも呼ばれ、損傷した部位における運動機能が完全になくなり、感覚自体も失われた状態を指します。

伝達路が損傷した部位を境に完全に分断される形となるため、完全麻痺になってしまうと、部位全体の機能が停止されたような状態になり、コントロールがきかない状態になってしまいます。

不全麻痺

不全麻痺は不全損傷とも呼ばれ、運動機能の一部が失われた状態です。一部が失われた状態なので、完全になくなったわけではなく、一部の機能のコントロールは可能です。

運動機能や感覚など一部分は機能しているため、リハビリによって麻痺している部分をカバーすることで日常生活を送ることもできます。

一方で脊髄損傷直後は「脊髄ショック」と呼ばれる状態に陥り、完全麻痺と不全麻痺の見分けがつかなくなることがあります。事故などで脊椎損傷などのケガを負った場合にはこれ以上損傷部分を大きくしないよう、できる限り固定してから病院に搬送され治療を受け、完全麻痺か不全麻痺かを見極めることになるでしょう。

合併症

脊髄損傷には完全麻痺や不全麻痺の他にも合併症が存在します。ここでは合併症のケースを解説します。

尿路障害・腸管障害

脊髄損傷により、尿管や腸管が麻痺してしまい、尿路障害や腸管障害を起こします。いずれの障害も最初はうまく排泄できない状態となり、膀胱に尿がたまる一方だったり、下痢を引き起こしてから便秘になったりする状態です。

尿路障害の場合は薬で対処できるケースがある一方、集尿器やカテーテルを活用しないと対応できないケースもあります。腸管障害は今までの排便だと対応できないため、食事の対応や浣腸の活用、排便スタイルの工夫など様々な形で対応しなければなりません。

自律神経機能障害

自律神経機能障害は自律神経関連の障害を指します。脊髄損傷は自律神経にも影響を与えてしまうのです。症状としては血圧が急に上下するなど様々な影響をもたらしてしまいます。こうした現象を「自律神経過反射」と呼び、先ほどの尿路障害などが自律神経を強く刺激してしまうことで起こりやすくなります。

体温調節機能に障害をもたらすほか、脈が速い頻脈の状態、末梢血管拡張症、起立性調節障害など自律神経に関連する各種症状が出てしまうため、注意が必要です。

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