椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の関係性!症状と適切な治療法を解説

椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の関係性!症状と適切な治療法を解説
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腰やお尻から足にかけて、電気が走るような痛みやしびれを感じたことはありませんか?腰やおしりの痛み・しびれは椎間板ヘルニアが原因で起こる坐骨神経痛の可能性があります。坐骨神経痛は、放っておくと日常生活に影響を及ぼす可能性があり、注意が必要な状態です。

この記事では、椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の関係性を解説します。具体的な症状や適切な治療法も紹介します。腰やお尻、足の痛みに悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

椎間板ヘルニアが坐骨神経痛を引き起こす仕組み

腰には、お尻から足の先まで伸びる「坐骨神経」という人体で最も太い神経が通っています。坐骨神経は、脳からの指令を足に伝えたり、足からの感覚を脳に伝えたりする重要な神経です。ヘルニアにより椎間板が飛び出すと、坐骨神経を圧迫することがあります

坐骨神経が圧迫されると、神経に炎症が起こりお尻や足に痛みやしびれなどの症状を引き起こす場合があります。重要なのは、坐骨神経痛は「症状」であり、椎間板ヘルニアは坐骨神経痛の「原因」の一つに過ぎないということです。

北米脊椎協会(NASS)のガイドラインでも、腰椎椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛に対して、適切な診断と治療の重要性が強調されています。お尻や足に痛みやしびれなどの症状がある場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な検査と診断を受けることが重要です。

椎間板ヘルニアによる症状には軽度から重度まで段階があり、それぞれに合った対処法を知っておくことが回復への近道です。以下の記事では、症状のレベル別に見た特徴や対処法について詳しく解説しています。
>>腰椎椎間板ヘルニア症状のレベル別特徴と対処法

椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の症状

椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の症状を、以下の項目に沿って解説します。

  • 椎間板ヘルニアの初期症状
  • 坐骨神経痛の特徴的な症状
  • 症状が悪化するサイン

椎間板ヘルニアの初期症状

椎間板ヘルニアの初期症状は、腰痛と下肢の痛みやしびれです。椎間板ヘルニアの腰痛は、軽い痛みから耐え難いほどの激痛まで多岐にわたります。前かがみの姿勢やくしゃみ、咳などで痛みが悪化することがあります。多くの場合は片側の足に症状が現れます。

初期段階では安静にすることで症状が軽くなる場合もありますが、自然に治癒するとは限りません。放置すると悪化し、日常生活に支障をきたす可能性もあります。少しでも気になる症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。

坐骨神経痛の特徴的な症状

坐骨神経痛の特徴的な症状は、お尻から足先にかけて痛みやしびれが広がる「放散痛」です。電気が走るようなピリピリとした痛みやしびれ、鋭い痛み、じんじんするような感覚など、患者さんによって表現もさまざまです。

長時間立っていたり、座っていたりすると症状が悪化し、くしゃみや咳といった動作でも痛みが強くなることがあります。痛みは片側の足に起こることが多いですが、両足に症状が現れる場合もあります。

坐骨神経痛の症状の現れ方や感じ方は人それぞれで、症状の程度もさまざまです。症状が軽い場合は、日常生活に大きな支障がない場合もあります。重症化すると、歩行困難になるなど、日常生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。

症状が悪化するサイン

椎間板ヘルニアや坐骨神経痛の症状が悪化するサインは以下のとおりです。

  • 排尿障害:尿が出にくい、尿が漏れる、残尿感があるなど
  • 排便障害:便秘や便失禁など
  • 麻痺:足に力が入らない、感覚が鈍くなる、歩行が困難になるなど

排尿障害などの症状は、神経の圧迫が強くなっているサインです。症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診してください。緊急性の高い状態である可能性があります。特に、排尿・排便障害や麻痺は、重症化のサインです。放置すると、後遺症が残る可能性もあるため、迅速な対応が必要です。

上記の症状は必ずしも椎間板ヘルニアや坐骨神経痛だけが原因ではありません。他の病気の可能性もありますので、自己判断せず、医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。

椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の検査と診断方法

椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の検査と診断方法について、以下の項目を解説します。

  • 問診
  • 診察による神経学的検査
  • 画像検査(レントゲンやMRI、CTによる診断)
  • 他の疾患との見分け方

問診

問診では、医師はあなたの症状について詳しく聞き取りを行います。具体的には、以下の質問をされることが多いです。

  • いつから痛みやしびれが始まりましたか?
  • どのような痛みやしびれですか?(鋭い痛み、鈍い痛み、ジンジンする、チクチクするなど)
  • 痛みの場所はどこですか?
  • どんなときに痛みが強くなりますか?
  • 過去の病歴やケガはありますか?
  • 仕事や日常生活の様子はいかがですか?
  • その他に気になる症状はありますか?(排尿・排便障害、足の冷え、しびれなど)

重たい荷物を持った翌日から腰が痛くなったという場合、椎間板ヘルニアの可能性が高くなります。長時間座っていると足がしびれてくる場合、坐骨神経痛の可能性が考えられます。問診は正確な診断の第一歩です。気になる症状をしっかりと医師に伝えましょう。

診察による神経学的検査

問診の後は、診察台の上で体を診ます。神経学的検査では、神経の働きに異常がないかを調べます。神経のどこにどのような障害があるかを特定するために重要な検査です。具体的な検査項目は以下のとおりです。

  • 感覚検査:綿棒や針などで軽く触れ、皮膚の感覚が正常かどうかを調べる
  • 筋力検査:足の力などを調べ、筋力の低下がないかを確認する
  • 反射検査:ハンマーで腱を軽く叩き、反射の強さを調べる
  • ラセーグテスト:仰向けに寝た状態で、医師が片方の足を持ち上げ、痛みの変化を確認する
  • ストレートレッグ・レイジングテスト(SLRテスト):足をまっすぐ伸ばした状態で持ち上げ、坐骨神経の伸長具合を評価する

さまざまな検査を通して、どの神経がどの程度圧迫されているのかを詳しく調べられます。

画像検査(レントゲンやMRI、CTによる診断)

神経学的検査に加えて、画像検査を行うことで椎間板の状態や神経の圧迫状況をより詳しく調べられますレントゲンは、骨の状態を調べる検査です。椎間板ヘルニア自体は写りませんが、骨の変形や異常がないか、他の疾患の可能性がないかなどをチェックできます。

MRI検査は椎間板や神経の状態を調べる検査です。椎間板の突出や神経の圧迫などを鮮明に確認できるため、椎間板ヘルニアの診断に広く用いられている検査です。CT検査では骨と軟部組織の状態を調べられます。医師は画像検査の結果や問診、神経学的検査を総合的に判断し、診断を確定します。

「レントゲンで椎間板ヘルニアが見えるのか?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。以下の記事では、各検査法の特徴や違い、椎間板ヘルニアの診断におけるそれぞれの役割について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアはレントゲンで見える?検査法の違いと特徴を解説

他の疾患との見分け方

坐骨神経痛は、椎間板ヘルニア以外にもさまざまな原因で起こることがあります。腰部脊柱管狭窄症や梨状筋症候群、脊椎腫瘍、まれに子宮内膜症なども坐骨神経痛の原因となることがあります。

上記の疾患は、坐骨神経痛と似たような症状を引き起こすため、椎間板ヘルニアと区別することが重要です。医師は問診、神経学的検査、画像検査の結果を総合的に判断し、他の疾患の可能性も考慮しながら診断を行います

特に、下肢のしびれや痛みが長引く場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。

椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の治療法4選

椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の治療法は以下のとおりです。

  • 薬物療法で痛みと炎症を抑える
  • 理学療法で運動とリハビリで機能回復を促す
  • 神経ブロック注射で痛みを緩和する
  • 重症の場合は手術療法を検討する

薬物療法で痛みと炎症を抑える

薬物療法は、痛みや炎症を抑え、症状を和らげる治療法です。内服薬として処方されることが多く、患者さんの状態に合わせて薬の種類や量が調整されます。代表的な薬としては、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)や神経障害性疼痛治療薬、筋弛緩剤、血管拡張剤などがあります。

非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)は、痛みや炎症の原因物質であるプロスタグランジンを抑えることで、痛みと炎症を軽減する薬です。市販の痛み止めにも含まれている成分で、比較的入手しやすい薬です。胃腸障害などの副作用が現れる可能性もあるため、医師の指示に従って服用してください。

神経障害性疼痛治療薬は、神経の損傷や圧迫によって起こる痛みやしびれを和らげます。神経の働きを調整することで、痛みを伝えにくくする効果が期待できます。副作用として眠気やふらつきが出現する可能性がありますので、運転などの作業をする際は注意が必要です。

筋弛緩剤は、筋肉の緊張を和らげ、痛みを軽減する薬です。筋弛緩剤は、筋肉の緊張をほぐすことで、血流を改善し、痛みを和らげる効果があります。副作用として眠気やだるさを感じることがあります。

血管拡張剤は、血管を広げ、血流を改善することで、痛みやしびれを軽減する薬です。血流が良くなると、神経への酸素供給が改善され、神経の機能回復が促進されます。めまいや立ちくらみなどの副作用が生じる可能性があります。

理学療法で運動とリハビリで機能回復を促す

理学療法は、運動やリハビリを通して、体の機能回復を目指す治療法です。ストレッチや筋力トレーニング、温熱療法、電気刺激療法などがあり、患者さんの状態に合わせて、適切なプログラムを作成します。継続的に行うことが重要です。

ストレッチは、硬くなった筋肉を伸ばし、柔軟性を高めることで、痛みを軽減し、動きをスムーズにします。筋力トレーニングは、腹筋や背筋などの体幹を鍛えることで、腰椎への負担を軽減し、姿勢を安定させます。椎間板ヘルニアの場合は、腹横筋や多裂筋といったインナーマッスルを鍛えることが重要です。

インナーマッスルは、コルセットのように腰椎を支える役割があり、鍛えることで腰への負担を軽減し、再発予防につながります。温熱療法は、温罨法(おんあんぽう)やホットパックなどで患部を温めることで、血流を改善し、痛みを和らげます。

電気刺激療法は、低周波や高周波の電流を患部に流すことで、痛みを軽減し、筋肉の緊張を和らげる方法です。

神経ブロック注射で痛みを緩和する

神経ブロック注射は、局所麻酔薬やステロイド薬を神経の周囲に注射することで、痛みを遮断し、炎症を抑える治療法です。痛みの原因となっている神経に直接作用するため、即効性があり、痛みの緩和に効果が期待できます。

神経ブロックにはさまざまな種類があり、痛みの部位や原因に合わせて適切な方法を選択します。効果の持続期間は数日〜数週間程度で、痛みが強い場合や、他の治療法で効果が得られない場合に検討される場合が多いです。

重症の場合は手術療法を検討する

手術療法は、保存療法で効果がない場合や、症状が重い場合、日常生活に支障をきたす場合に検討される治療法です。椎間板ヘルニアの場合は、飛び出した椎間板の一部を取り除く椎間板切除術などが行われます。手術療法は他の治療法と比較して体への負担が大きいです。

医師とよく相談し、手術のメリットとデメリットを理解したうえで、手術を受けるかどうかを判断することが重要です。自己判断せずに医療機関を受診し、原因を特定するための適切な検査と診断を受けましょう。 

また突然の激痛で歩行が困難になるような緊急のケースでは、迅速かつ適切な対処が求められます。そんなときに備えて、あらかじめ対処法を知っておくことはとても重要です。以下の記事では、そのような緊急時の対応方法について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアで激痛が出て歩けないときの緊急対処法

まとめ

椎間板ヘルニアは坐骨神経痛の主な原因の一つであり、飛び出した椎間板が坐骨神経を圧迫することで、お尻から足にかけて痛みやしびれが生じます。症状は人それぞれですが、初期は腰痛や下肢の痛み、しびれなどが現れ、悪化すると排尿・排便障害や麻痺といった重篤な症状が現れることもあります。

検査は問診や診察、画像検査などを通して行われ、適切な治療法が選択されます。治療法には、薬物療法や理学療法、神経ブロック注射、重症の場合は手術療法があります。早期発見・早期治療が大切ですので、少しでも気になる症状があれば、我慢せずに医療機関を受診してください。

あなたの症状やライフスタイルに合った治療法で、痛みやしびれから解放され、快適な日常生活を取り戻しましょう。

特に、腰椎の4番と5番の間で起こるヘルニアは多く、その部位特有の症状や対処法があります。以下の記事では、L4-L5に生じた椎間板ヘルニアの特徴や、家庭でも取り入れやすいセルフケアについて詳しく紹介しています。
>>椎間板ヘルニア4番5番の症状と治療法!効果が期待できるセルフケアを解説

参考文献

D Scott Kreiner, Steven W Hwang, John E Easa, Daniel K Resnick, Jamie L Baisden, Shay Bess, Charles H Cho, Michael J DePalma, Paul Dougherty 2nd, Robert Fernand, Gary Ghiselli, Amgad S Hanna, Tim Lamer, Anthony J Lisi, Daniel J Mazanec, Richard J Meagher, Robert C Nucci, Rakesh D Patel, Jonathan N Sembrano, Anil K Sharma, Jeffrey T Summers, Christopher K Taleghani, William L Tontz Jr, John F Toton; North American Spine Society. An evidence-based clinical guideline for the diagnosis and treatment of lumbar disc herniation with radiculopathy. Spine J, 2014, 14(1), p.180-191.

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