椎間板ヘルニアの自然治癒期間は?回復過程とセルフケアの注意点を解説

椎間板ヘルニアの自然治癒期間は?回復過程とセルフケアの注意点を解説
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「もしかして椎間板ヘルニアかも」と不安に感じている方は多いです。実は椎間板ヘルニアは自然治癒する可能性があり、多くの場合、3か月程度で症状が改善すると言われています。66%もの人が症状が改善するというデータも存在します。

一方で、痛みが長引く、あるいは悪化するケースもあるため、症状がひどい場合は病院への受診が必要です。この記事では、椎間板ヘルニアの自然治癒のメカニズムから回復過程症状改善のためのセルフケアまで、具体的な方法を交えて詳しく解説します。ご自身の状況と照らし合わせながら、適切な対処法を見つけて、一日も早く痛みからの解放を目指しましょう。

以下の記事では、椎間板ヘルニアの痛みを和らげるための具体的な姿勢や、自宅でできるストレッチ法を紹介しています。
>>椎間板ヘルニアの痛みを和らげる姿勢と効果が期待できるストレッチ法を紹介

椎間板ヘルニアが自然治癒する目安は3か月

椎間板ヘルニアは、背骨の間にあるクッションである椎間板の一部が飛び出し、神経を圧迫することで腰や足の痛み、しびれを引き起こす病気です。椎間板ヘルニアは多くの場合、3か月程度で症状が改善すると言われています。自然治癒の過程では、飛び出した椎間板が体内で吸収され、炎症が落ち着き、神経への圧迫が軽減されます。

椎間板ヘルニアが自然に治る過程は以下のとおりです。

  1. 飛び出した椎間板が水分を失って縮む
  2. 免疫細胞であるマクロファージが椎間板の一部を分解し吸収する
  3. 椎間板のまわりの組織が縮む
  4. 飛び出した椎間板を押し戻す
  5. 神経の圧迫が減り、痛みやしびれの症状が改善する

3か月という期間はあくまで目安であり、症状の重さや生活習慣、体質などによって個人差があります。軽症であれば数週間で治ることもありますが、重症の場合や適切なケアを怠ると数か月以上かかる可能性もあります。

椎間板ヘルニアの種類によって、自然治癒のしやすさが異なります。椎間板ヘルニアの種類と特徴は以下の表のとおりです。

椎間板ヘルニアの種類特徴自然治癒のしやすさ
脱出型椎間板の一部が完全に飛び出している比較的早く吸収されやすい
分離型椎間板の一部が断裂し、飛び出している比較的早く吸収されやすい
膨隆型椎間板が膨らんでいるが、まだ飛び出していない吸収されにくく、治癒に時間がかかることが多い

椎間板ヘルニアの回復過程

椎間板ヘルニアの回復過程は、大きく4つの時期に分けられます。以下の4つの時期について詳しく解説します。

  • 亜急性期
  • 亜急性期
  • 回復期
  • 再発防止期

それぞれの時期の特徴を理解することで、適切な対応をし、回復をスムーズに進めることができます。

急性期

急性期は、発症から約2週間の期間です。急性期の特徴は、激しい痛みです。炎症がピークに達し、神経が刺激されることで、腰や足に鋭い痛みが走ります。くしゃみや咳といった動作でさえも、痛みが悪化することがあります。

急性期の治療で大事なのは、何よりも痛みと炎症を抑えることです。安静にして、患部を冷やしてください。冷やすこと(アイシング)は、炎症を抑える効果が期待できます。最初の48時間は、アイシングを積極的に行いましょう。

痛みが強い場合は、医師の指示のもと、痛み止めや炎症を抑える薬を使用することもあります。コルセットを装着して腰を固定することで、動きを制限し、痛みを軽減する効果も期待できます。

亜急性期

亜急性期は、発症から2〜6週間の期間です。亜急性期になると、炎症が徐々に治まり、痛みも軽減してきます。鋭い痛みから鈍い痛みへと変化し、日常生活動作も少しずつ楽になる場合が多いです。

急性期ほどではありませんが、まだ安静が必要です。無理な動きは避け、身体への負担が少ない短時間のウォーキングマッケンジー体操などを行います。マッケンジー体操は、特定の方向に身体を動かすことで、椎間板にかかる圧力を調整し、症状の改善に役立つ可能性のある体操です。

ただし、痛みがぶり返す場合は、運動を中止し、安静に戻してください。自分の身体の状態をよく観察しながら、徐々に活動レベルを上げていくことが大切です。

回復期

回復期は、発症から6週間~3か月程度の期間です。痛みやしびれはさらに軽減し、日常生活もほぼ通常どおりに送れるようになります。回復期になると、飛び出した椎間板の縮小もかなり進んでおり、MRI検査などで確認できることもあります。

回復期で大切なことは、再発予防です。腹筋や背筋を鍛えることで、腰への負担を軽減し、再発を防ぐことが可能です。正しい姿勢を保つために、ウォーキングや水泳など、全身運動も積極的に行いましょう。ただし、痛みが再発するようであれば、運動量を調整するか、中止してください。

再発防止期

再発防止期は、発症から3か月以降の期間です。痛みはほぼ消失し、日常生活に支障はなくなります。しかし、椎間板ヘルニアは再発のリスクが常に存在します。再発予防のための生活習慣を継続することが重要です。再発防止のために以下を心がけましょう。

  • 適度な運動や正しい姿勢を保つ
  • 体重管理(BMI25未満)をする
  • 禁煙する
  • 重いものを持つときは、腰を曲げずに膝を曲げて持ち上げる
  • 長時間の座位は避け、30分に1回は立ち上がる
  • プランクなど体幹トレーニングをする

再発予防のための習慣を続けることで、椎間板への負担を軽減できます。たとえ症状がなくなっても、油断しないことが大切です。

病院を受診する目安

椎間板ヘルニアは、3か月経っても痛みが続く場合や、症状が悪化する場合もあります。ご自身の症状を注意深く観察し、適切なタイミングで医療機関を受診することが大切です。

病院を受診する際、目安となる症状を以下の表にまとめました。

症状受診の目安理由・注意点
日常生活に支障が出る強い痛みやしびれ安静時も痛みが治まらない、夜も眠れない場合鋭い痛みから鈍い痛みに変化する場合、炎症が進行している可能性あり
排尿や排便障害尿や便が出にくい、尿や便がもれる場合神経が強く圧迫されており、放置すると後遺症が残る危険性あり
神経症状の悪化足の力が入りにくい、しびれて感覚がない場合神経圧迫や神経損傷が疑われる
3か月以上の症状3か月以上症状が続く場合自然治癒が難しいケースや他の病気が隠れている可能性あり
発熱や体重減少が伴う発熱や体重減少を伴う腰痛がある場合感染症や腫瘍など、他の病気が隠れている可能性あり

椎間板ヘルニアは、適切な治療を受ければ多くの場合改善します。症状が気になる場合は、我慢せずに早めに医療機関に相談しましょう。早期に診断と治療を開始することで、症状の悪化や慢性化を防ぎ、より早く日常生活を取り戻せる可能性が高まります。

ヘルニアは、症状や重症度によって、受診すべき科や医師の選び方が異なる場合があります。以下の記事では、椎間板ヘルニアの受診先として適切な診療科や専門医の選び方、症状別の受診目安について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアは何科を受診すべき?専門医の選び方と受診目安について

回復のためのセルフケア

少しでも早く回復し、再発を防ぐためにもセルフケアは重要です。日常生活でできる6つのセルフケア方法を紹介します。 

  • 適正体重を維持する
  • 正しい姿勢を意識する
  • ストレスを管理する
  • 急性期はアイシングをする
  • 急性期以降は温熱療法で血流を促進する
  • 適度な運動で筋力をつける

適正体重を維持する

体重が増えると、腰への負担も大きくなります。特に、お腹周りの脂肪は腰椎に負担をかけるため、椎間板ヘルニアの症状を悪化させる可能性があります。適正体重とは、健康を維持するために望ましいとされる体重の範囲のことです。

BMI(ボディマス指数)は、適正体重の指標として広く用いられています。BMIは、体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)で計算し、値が25以上の場合は「肥満」です。適正体重を維持することで、腰への負担を軽減し、症状の改善を促すことが期待できます。

正しい姿勢を意識する

日常生活での姿勢は、椎間板ヘルニアに大きく影響します。猫背や長時間同じ姿勢でいると、腰への負担が増し、症状が悪化しやすくなります。良い姿勢とは、耳、肩、股関節、膝、くるぶしが一直線上に並ぶ状態です。座っているときは、背筋を伸ばし、骨盤を立てた姿勢を意識しましょう。

骨盤を立てるというのは、骨盤が床に対して垂直になることです。骨盤を立てることで、腰への負担が軽減されます。30分に1回は立ち上がり、軽く身体を動かすことで、腰への負担を軽減できます。立っているときも背筋を伸ばし、お腹に力を入れるように意識しましょう。

ストレスを管理する

ストレスは、自律神経のバランスを崩し、血行不良や筋肉の緊張を引き起こすため、椎間板ヘルニアの症状を悪化させる要因となります。ストレス解消法は以下を参考にしてください。

  • リラックスできる時間を作る
  • 趣味を楽しむ
  • 十分な睡眠時間を確保する

睡眠時間は個人差がありますが、7〜8時間が適切とされています。

急性期はアイシングをする

椎間板ヘルニアの発症初期(急性期)は、炎症が強く出ている状態です。急性期は、患部にアイシングをすることで、炎症を抑え、痛みを和らげることが期待できます。保冷剤や氷嚢をタオルで包み、患部に15〜20分程度当てましょう。

アイシングは1日に数回繰り返してください。ただし、冷やしすぎには注意し、凍傷を起こさないように気を付けましょう。皮膚が赤くなったり、紫色に変色したりした場合は、すぐにアイシングを中止してください。

急性期以降は温熱療法で血流を促進する

急性期を過ぎ、痛みが落ち着いてきたら、温熱療法で血行を促進し、筋肉の緊張を和らげましょう。温熱療法とは、温かいものを使って患部を温めることです。温熱療法には以下の方法があります。

  • ホットタオル
  • 温熱パッド
  • お風呂

お風呂は、40〜42度程度の温度20〜30分程度が適切です。入浴は、全身の血行を促進し、リラックス効果も高いためおすすめです。ただし、熱すぎるお風呂は、かえって炎症を悪化させる可能性があるので注意が必要です。

適度な運動で筋力をつける

椎間板ヘルニアの回復期以降は、適度な運動で体幹の筋肉、特に腹横筋や多裂筋を鍛えることが大切です。腹横筋や多裂筋は、コルセットのように腰椎を支える役割があり、鍛えることで腰への負担を軽減し、再発予防にもつながります。

ウォーキングや水中ウォーキング、ヨガなどの負担の少ない運動から始め、徐々に強度を上げていきましょう。水中ウォーキングは、水の浮力によって関節への負担が軽減されるため、椎間板ヘルニアの方にもおすすめの運動です。マッケンジー体操やキャット&ドッグなどのストレッチも、椎間板内圧を調整を促す効果が期待できます。

特に体幹を鍛えることで、腰への負担を軽減しやすくなります。以下の記事では、椎間板ヘルニアに配慮した筋トレメニューや、実践時の注意点について詳しく紹介しています。無理のない範囲で筋トレも取り入れたい方は、ぜひご参考ください。
>>椎間板ヘルニアに効果が期待できる筋トレメニューと実践時の注意点

まとめ

多くの場合、椎間板ヘルニアは3か月程度で自然治癒すると言われていますが、症状の重さや個人差によって治癒期間は異なります。回復時期に合わせた、適切なセルフケアや対処方法が回復を早めるポイントになります。

日常生活では、正しい姿勢を保つ、適正体重を維持する、ストレスを溜め込まないなど、腰への負担を軽減することが大切です。急性期はアイシング、急性期以降は温熱療法を行い、回復期には適度な運動で体幹を鍛えることが、早期回復と再発予防につながります。

ご紹介したセルフケアはあくまで補助的なものです。症状が改善しない場合や、排尿や排便障害などの深刻な症状が現れた場合は、自己判断せずに速やかに医療機関を受診しましょう。専門家の適切な診断と治療を受けることで、よりスムーズな回復と再発防止が期待できます。

以下の記事では、椎間板ヘルニアの症状を悪化させないために、日常生活で注意すべき動作や習慣について詳しく解説しています。知らずにやってしまいがちなNG行動をチェックして、悪化を防ぎましょう。
>>椎間板ヘルニアでやってはいけないこと!悪化を防ぐ注意点

参考文献

Zhong M, Liu JT, Jiang H, Mo W, Yu PF, Li XC, Xue RR. Incidence of Spontaneous Resorption of Lumbar Disc Herniation: A Meta-Analysis. Pain Physician, 2017, 20(1), E45-E52.

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