椎間板ヘルニアとぎっくり腰の見分け方|対応策や受診の目安を解説

椎間板ヘルニアとぎっくり腰の見分け方|対応策や受診の目安を解説
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腰に痛みを感じたとき「椎間板ヘルニア?」「ぎっくり腰?」と不安になる方もいるのではないでしょうか。どちらも腰痛を伴うため自己判断は難しく、医療機関の受診が大切です。この記事では、椎間板ヘルニアとぎっくり腰の違いを4つのポイントでわかりやすく解説します。

それぞれの症状や発症原因、検査方法、経過の違いを知ることで、ご自身の状態を客観的に把握するヒントになります。それぞれの症状に適した対応策や、日常生活で役立つ腰痛予防のポイントもご紹介します。

椎間板ヘルニアとぎっくり腰の違い4つのポイント

椎間板ヘルニアとぎっくり腰の違い4つのポイントとして、以下の内容を解説します。

  • 症状の違い
  • 発症原因の違い
  • 検査方法の違い
  • 経過の違い

症状の違い

椎間板ヘルニアとぎっくり腰では、痛みの種類や場所に違いがあります。以下の表でそれぞれ痛みの場所やしびれの有無、痛みの種類をまとめていますので参考にしてください。

項目椎間板ヘルニアぎっくり腰
痛みの場所・腰・お尻・足
しびれの有無あり(神経根の圧迫による)通常なし
痛みの種類・鋭い痛み・鈍い痛み・しびれるような痛み激しい痛み

椎間板ヘルニアの痛みやしびれは、飛び出した椎間板の髄核が神経根(脊髄から枝分かれする神経の根元部分)を圧迫するため、生じてしまいます。坐骨神経痛は、神経根が圧迫されることで生じる代表的な症状の一つです。

ぎっくり腰は、正式には「急性腰痛症」と呼ばれ、腰を中心とした痛みで、お尻や足への痛みやしびれはあまり見られません。ぎっくり腰の痛みは、腰の筋肉や靭帯、関節などが損傷することで発生すると考えられています。炎症反応を伴うことが多いため、安静にすることで痛みが軽減する場合が多いとされています。

なお、椎間板ヘルニアによって突然激しい痛みが生じて「歩けないほどつらい」と感じることもあります。以下の記事では、そんなときに自宅でできる緊急対処法や、受診の判断ポイントについて詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアで激痛が出て歩けないときの緊急対処法

発症原因の違い

椎間板ヘルニアとぎっくり腰は、発症原因も異なります。それぞれの発症要因の違いやタイミングについて、以下の表を参考にしてみてください。

項目椎間板ヘルニアぎっくり腰
発症原因・加齢・長年の負担・急激な負荷・外傷・遺伝的要因・急な動作・重い物を持つ・不自然な姿勢
発症のタイミング・徐々に悪化・急に悪化突然

椎間板ヘルニアは、加齢による椎間板の変性、長年の姿勢の悪さによって引き起こされることが多いです。遺伝的要因も指摘されています。長期間にわたる負担の蓄積が原因となるケースが多いですが、急激な負荷や外傷がきっかけで発症することもあります。

ぎっくり腰は、くしゃみや咳、顔を洗う、靴下を履くなど、日常生活の何気ない動作がきっかけで起こることがあります。中腰姿勢での作業や、急に重いものを持ち上げた際に発症しやすいです。

検査方法の違い

椎間板ヘルニアの診断には、MRI検査が有効です。MRI検査では、椎間板の状態を詳しく確認できます。確認により、椎間板がどの程度飛び出しているか、神経を圧迫しているかどうかなどを正確に診断できます。

レントゲン検査では、骨の状態を確認できます。ぎっくり腰の診断は、問診や身体診察が中心となります。医師は、患者さんの症状や痛みの様子を詳しく聞き取り、腰の状態を触診することで診断を下します。画像検査は、他の疾患との鑑別が必要な場合や、症状が長引く場合に行うことがあります。

経過の違い

椎間板ヘルニアは、自然に治ることもありますが、症状が長引いたり再発したりするケースも多いです。特に、神経症状が強い場合は、手術が必要になることもあります。ぎっくり腰は、多くの場合、数日から数週間で痛みが軽減し、自然に回復します。

ぎっくり腰を繰り返すことで、慢性腰痛に移行する可能性もあります。適切な処置を行わないと慢性化したり再発したりする可能性もあるため、注意が必要です。適切な治療のためにも、医療機関を受診し、経験豊富な医師の診断を受けることが重要です。

椎間板ヘルニアの治療法

椎間板ヘルニアの治療法として、以下の2つを解説します。

  • 椎間板ヘルニアの保存療法
  • 椎間板ヘルニアの手術療法

それぞれにメリットとデメリットがあるため、医師とじっくり話し合い、ご自身に合った治療法を選択することが大切です。

椎間板ヘルニアの保存療法

保存療法とは、手術を行わずに痛みやしびれなどの症状を和らげる治療法です。具体的には、薬物療法、理学療法などがあり、単独で行うことも、組み合わせて行うこともあります。

薬物療法では、痛みや炎症を抑える薬を内服し、湿布を使用します。使用する薬剤は、鎮痛剤や消炎鎮痛剤、神経障害性疼痛治療薬、筋弛緩剤など、症状に合わせて選択します。神経の炎症や損傷による痛みには神経障害性疼痛治療薬が用いられます。

理学療法では、専門の理学療法士による治療で、腰や周辺の筋肉の柔軟性を高め、体幹を支える筋肉を強化します。温熱療法や牽引療法、運動療法などがあります。運動療法では、ストレッチや筋力トレーニングなど、患者さんの状態に合わせた個別のメニューを作成します。

以下の記事では、椎間板ヘルニアに配慮した筋トレメニューや、実践時の注意点について詳しく紹介しています。無理のない範囲で筋トレも取り入れたい方は、ぜひご参考ください。
>>椎間板ヘルニアに効果が期待できる筋トレメニューと実践時の注意点

椎間板ヘルニアの手術療法

保存療法で効果が得られない場合や、神経麻痺などの症状が進行している場合は、手術療法を検討します。手術療法の主な目的は、飛び出した椎間板によって圧迫されている神経を解放することです。椎間板ヘルニアの手術には、大きく分けて以下の2種類があります。

  • 内視鏡下手術
  • 従来法

内視鏡下手術は、手術部位を小さく切開し、内視鏡を用いて椎間板を切除する方法です。体への負担が少なく、入院期間も短いメリットがあります。近年、技術の進歩により、内視鏡下手術がより安全かつ効果的に行えるようになってきています。顕微鏡を用いた手術も、手術部位を小さくできる方法の一つです。

皮膚を切開して筋肉を剥がし、椎間板を切除する手術法です。内視鏡下手術に比べて手術部位が大きくなりますが、広い範囲のヘルニアに対応できるメリットがあります。どの治療法にもメリット・デメリットがあるため、医師とよく相談し、ご自身の状態に合った手術法を選ぶことが大切です。

ぎっくり腰の対応策

ぎっくり腰の対応策として、以下の3つを解説します。

  • ぎっくり腰の応急処置(安静、冷却など)
  • ぎっくり腰の回復期における運動療法
  • ぎっくり腰の再発予防策

ぎっくり腰の応急処置(安静、冷却など)

ぎっくり腰の応急処置の目標は炎症を抑えることです。ぎっくり腰になった際は、炎症が起きているため、以下の応急処置を行いましょう。

応急処置説明効果
安静無理に動かず、楽な姿勢で安静にする炎症の悪化を防ぐ
冷却患部に冷却パックなどを当て、15〜20分を目安に冷やす炎症を抑え、痛みを和らげる
鎮痛剤痛みが強い場合は、医師や薬剤師に相談の上、服用する痛みを軽減する

ぎっくり腰になったら、まず安静にすることが重要です。無理に動くと炎症が悪化し、痛みが強くなる可能性があります。横になって安静にするのが一番ですが、どうしても動かなければならない場合は、コルセットなどを着用して腰をサポートしましょう。コルセットは、腰への負担を軽減し、痛みを和らげる効果があります。

炎症を抑えるためには、施術部位を冷やすことも効果が期待できます。冷却パックや氷嚢などをタオルに包み、15〜20分を目安に施術部位に当ててください。冷やしすぎると凍傷を起こす可能性があるので、注意が必要です。冷却により血管が収縮し、炎症の原因となる物質の放出を抑える効果が期待できます。

痛みが強い場合は、市販の鎮痛剤を服用することも選択肢の一つです。さまざまな種類の鎮痛剤がありますが、持病がある場合や他の薬を服用している場合は、医師などに相談してから服用してください。自己判断で薬を服用することは、思わぬ副作用を引き起こす可能性があるため、避けるべきです。

安静にする期間は、痛みの程度によって異なりますが、通常は数日〜1週間程度です。痛みが軽くなってきたら、徐々に体を動かすようにしましょう。

ぎっくり腰の回復期における運動療法

痛みが落ち着いてきたら、徐々に運動療法を開始します。運動療法は、腰周りの筋肉を強化し、柔軟性を高めることで、再発予防にもつながります。おすすめの運動療法は、以下の表のとおりです。

運動療法の種類効果注意点
ストレッチ腰周りの筋肉の緊張をほぐし、柔軟性を高める痛みのない範囲で行う
ウォーキング全身の血行を促進し、回復を早める少しずつ時間を延ばしていく
体幹トレーニング腰を支える筋肉を強化する正しいフォームで行う

慢性腰痛に対する運動療法の効果は研究で示されており、手技療法を併用することでさらに効果が期待できるとの報告もあります。手技療法とは、マッサージなどの手による治療法のことで、筋肉の緊張を和らげたり、関節の動きを改善したりする効果があります。

ぎっくり腰の再発予防策

ぎっくり腰は再発しやすい腰痛です。再発を防ぐためには、日頃から腰への負担を減らすように心がけることが重要です。再発予防策として以下の5つのポイントを押さえましょう。

  • 正しい姿勢:猫背は腰に負担がかかりやすい
  • 持ち上げ方:腰を曲げずに膝を曲げて持ち上げる
  • 適度な運動:筋肉を強化でき、柔軟性も高めることができる
  • ストレッチ:筋肉の柔軟性を保つことができる
  • 体重管理:肥満は腰への大きな負担になる

それぞれのポイントを意識することで、ぎっくり腰の再発リスクを減らすことが可能です。

以下の記事では、椎間板ヘルニアの痛みを和らげるために効果的とされるストレッチを詳しく解説しています。自宅で無理なく実践できる方法を知りたい方は、ぜひチェックしてみてください。
>>椎間板ヘルニアの改善が期待できるストレッチ!自宅でできる痛み軽減法

椎間板ヘルニアとぎっくり腰の受診目安

椎間板ヘルニアとぎっくり腰の受診目安として、以下の内容を解説します。

  • 椎間板ヘルニアで医療機関を受診すべき症状
  • ぎっくり腰で医療機関を受診すべき症状

椎間板ヘルニアで医療機関を受診すべき症状

椎間板ヘルニアで以下の症状が現れたら、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。

  • 痛みやしびれが強い、または広範囲に及ぶ
  • 安静にしていても痛みが治まらない
  • 脚に力が入りにくい、または歩行が困難
  • 排尿・排便に異常がある
  • 下肢の感覚がおかしい

初期症状は軽い腰痛だけのこともあります。神経の圧迫が進むと、お尻や太もも、ふくらはぎ、足先にまで痛みが広がることがあります。自己判断は危険ですので、必ず経験豊富な医師の診察を受けるようにしてください。

以下の記事では、椎間板ヘルニアの初期に現れるサインや、見逃さないためのチェックポイントについて詳しく解説しています。早期発見のために、ぜひ確認してみてください。
>>椎間板ヘルニアの初期症状と見逃せないサイン!早期発見のポイント

ぎっくり腰で医療機関を受診すべき症状

ぎっくり腰で医療機関を受診すべき症状は、以下の場合です。

  • 2週間以上たっても痛みが改善しない
  • 痛みが強くなる、または脚にしびれが出る
  • 発熱を伴う
  • 安静にしていても痛みが強い
  • 麻痺や排尿・排便障害がある

何かしらの症状が当てはまる方は、他の病気が隠れている可能性や、重症化のリスクがあるため、早めに医療機関を受診しましょう。ぎっくり腰は、適切な処置を行えば、多くの場合比較的早く回復します。自己判断で我慢せずに、医療機関に相談することで、安心して治療を受けられます。

まとめ

椎間板ヘルニアとぎっくり腰は、どちらも腰痛ですが、症状や原因、治療法が異なります。椎間板ヘルニアは、神経に触れるほど椎間板が飛び出すことで、痛みやしびれを引き起こします。ぎっくり腰は、筋肉や靭帯の損傷が原因で起こる急性の腰痛です。

自己判断は禁物です。痛みが強い、長引く、足にしびれがあるなどの症状が出たら、すぐに医療機関を受診しましょう。早期診断・治療で、日常生活への影響を最小限に抑えられます。日常生活では、正しい姿勢や持ち上げ方を意識し、腰への負担を軽減することが大切です。

適度な運動とストレッチも、腰痛予防に効果的です。自分の体と相談しながら、無理なく続けていきましょう。

以下の記事では、椎間板ヘルニアの回復を早めるために日常生活で実践できる具体的な生活習慣や注意点について詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
>>椎間板ヘルニアを早く治す方法!回復を促進する生活習慣

参考文献

arenthiran P, Granville Smith I, Williams FMK.Does the addition of manual therapy to exercise therapy improve pain and disability outcomes in chronic low back pain: A systematic review.Journal of bodywork and movement therapies,2025,42,146-152

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