椎間板ヘルニアとぎっくり腰の違いを医師が解説!症状の違いを徹底比較

椎間板ヘルニアとぎっくり腰の違いを医師が解説!症状の違いを徹底比較
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腰にビリッとくる強い痛みを感じたことはありませんか?数ある腰痛の中でも、「椎間板ヘルニア」と「ぎっくり腰」は、痛みが激しく、日常生活に深刻な影響を及ぼすことがあります。

椎間板ヘルニアとぎっくり腰はどちらも腰の疾患ですが、原因や症状、治療法は異なるため注意が必要です。この記事では、椎間板ヘルニアとぎっくり腰の違いを徹底的に比較解説することで、あなた自身の腰痛の理解を深め、適切な対処法を見つけるためのお手伝いをします。

椎間板ヘルニアの仕組みや発症のメカニズムを基礎から理解しておくことは、症状の現れ方や進行との関係を正しく把握するうえで重要です。本記事では、椎間板ヘルニアの主な原因や特徴的な症状、日常生活でできる対策や治療の選択肢について、初めての方にもわかりやすく説明しています。正しい知識を身につけることで、不安の軽減や適切な対応にもつながります。
>>椎間板ヘルニアとは?原因や症状・対策を解説

椎間板ヘルニアとぎっくり腰の違い3選

椎間板ヘルニアとぎっくり腰の違いを、以下の項目に沿って解説します。

  • 症状の違い
  • 原因の違い
  • 治療法の違い

症状の違い

椎間板ヘルニアとぎっくり腰は、痛みの性質やしびれの有無、痛みの持続期間が大きく異なります。椎間板ヘルニアでは、坐骨神経が圧迫されることで「坐骨神経痛」が現れることもあります。坐骨神経痛の症状は、腰痛に加えて、お尻や太もも、ふくらはぎ、足先など、神経に沿って痛みやしびれが広がるのが特徴です。

ヘルニアによって神経が圧迫されることで、感覚が鈍くなる、足に力が入りにくくなる「筋力低下」が起こることもあります。坐骨神経痛や筋力低下の症状は、常に続く場合と断続的に現れる場合があり、くしゃみや咳、力を入れた際に悪化することがあります。

ぎっくり腰の痛みは、腰を中心とした局所的な痛みが特徴です。くしゃみ・咳をした瞬間、あるいは立ち上がる・ひねるといった何気ない動作が引き金になることが多く、特別な事故や強い衝撃がなくても起こる点が特徴です。椎間板ヘルニアのように痛みやしびれが足に広がることは比較的少ないとされています。痛む期間も数日~数週間と比較的短いのが特徴です。

原因の違い

椎間板ヘルニアとぎっくり腰の根本的な原因も異なります。椎間板ヘルニアは、背骨の間にあるクッション材である椎間板が、加齢とともに変性し、組織の一部が飛び出すことで神経が圧迫される疾患です。遺伝的要因や肥満、姿勢の悪さや激しい運動も原因の一つです。

「ぎっくり腰」は、突然の動作によって腰椎やその周辺に強い負荷がかかり、筋肉や靭帯に微細な損傷や炎症が起こることで発症するとされています。予兆がないまま突然強い痛みに襲われることが多く、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。

日頃から運動不足の方や、長時間の同じ姿勢を続ける方は、筋肉が硬くなりやすく、ぎっくり腰になりやすい傾向があります。ぎっくり腰を繰り返すと、椎間板への負担が増え、椎間板ヘルニアの発症リスクも高まるため注意しましょう。

誤った動作を繰り返すことで痛みが悪化することもあるため、体の使い方には注意しましょう。以下の記事では、椎間板ヘルニアの方が注意すべき姿勢や、日常生活における体の使い方について解説しています。
>>椎間板ヘルニアで注意したい姿勢と日常生活での体の使い方を解説

治療法の違い

椎間板ヘルニアとぎっくり腰では、最適な治療法が異なります。椎間板ヘルニアは、保存療法から開始することが多いです。保存療法の種類には、薬物療法や理学療法、神経ブロック注射などがあります。手術療法は、保存療法を数週間〜数か月継続しても症状が改善しない場合や、症状が重い場合に検討します。

手術には、飛び出した髄核を取り除く方法や、神経の圧迫を取り除く方法など、患者さんの状態に合わせて最適な方法が選択されます。ぎっくり腰の治療は、安静と痛みの緩和が中心です。急性期の痛みが強いタイミングは安静にして、炎症を抑えるための湿布や痛み止めを使用します。

コルセットを装着して腰を固定することで、負担を軽減することもあります。痛みが落ち着いてきたら、ストレッチや軽い運動を行い、徐々に体を動かしていくことが重要です。

椎間板ヘルニアの症状、原因、治療

椎間板ヘルニアの症状や原因、治療法を解説します。

症状(腰痛、下肢の痛みやしびれ、排尿、排便障害)

代表的な椎間板ヘルニアの症状は以下のとおりです。

  • 腰や足、ふくらはぎの痛み
  • 電気が走るような鋭い腰の痛み
  • 腰から足のしびれ
  • 筋力低下
  • 排尿、排便障害(重症の場合)

上記の症状は、ヘルニアによって脊髄神経が圧迫されることが原因です。通常、私たちは排尿・排便を意識的にコントロールできますが、脊髄神経が圧迫されると、排尿・排便のコントロールが困難になります。

原因(加齢、遺伝、肥満、姿勢、激しい運動)

椎間板ヘルニアの主な原因は、加齢で生じる椎間板の変性です。椎間板は、中心部の髄核(ずいかく)と髄核を包む線維輪からできており、背骨のクッションの役割を果たします。加齢とともに、椎間板は水分を失って弾力性が低下するため、線維輪に亀裂が生じやすくなります。線維輪の亀裂から髄核が飛び出すことが、痛みやしびれなどの原因です。

椎間板の変性は加齢によって進行することが多いですが、それ以外にもさまざまな要因が関係しています。遺伝的に椎間板の構造が弱い体質の人は、年齢に関係なく早い段階で変性が進みやすく、発症リスクが高まると考えられています。肥満は体重による物理的な負荷を腰椎にかけ続けるため、椎間板への圧力が増し、変性を助長する原因になります。

さらに、長時間にわたる悪い姿勢や、腰に大きな負担がかかるような激しい運動も、椎間板に過度なストレスを与える要因となります。特に危険なのは、激しい運動をしたり重いものを持ち上げたりする動作です。椎間板に大きな負担を与えるので、日常生活の動きにも注意が必要です。

画像診断(MRI、CT、X線検査)

椎間板ヘルニアの診断には、画像検査が不可欠です。代表的な画像検査には、MRI、CT、X線検査があります。椎間板の状態を詳しく確認できるMRI検査は、ヘルニアの診断に多く用いられる検査です。CT検査は、骨の状態を詳しく確認できる検査で、ヘルニアによって骨が変形している場合などに役立ちます。

X線検査は、骨の異常や変形を確認するための検査です。ヘルニアの診断にはMRI検査のほうが多く用いられています。近年の研究では、深層学習を用いた画像診断支援アルゴリズムも開発されており、ResNetベースの畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いた分類タスクでは高い精度を示しています。

治療法(保存療法、手術療法)

椎間板ヘルニアの治療は、保存療法と手術療法を使い分けており、多くの場合、まずは保存療法から開始します。保存療法には以下の種類があります。

  • 薬物療法:痛みや炎症を抑える
  • 理学療法:運動機能の維持や改善を目的とする
  • 神経ブロック注射:神経の近くに麻酔薬を注射し痛みを緩和する

症状が重い場合や、保存療法の効果が表れない場合は、手術が検討されます。手術には複数の方法があり、患者さんの症状やライフスタイルに合った方法を選択できます。自分に合った治療法を探すために、腰の痛みなどを感じた場合は早めに医療機関を受診しましょう。

ぎっくり腰の症状、原因、治療

ぎっくり腰の症状や原因、治療法を解説します。

症状(急激な腰痛、動作制限、前かがみの姿勢)

ぎっくり腰の主な症状は以下のとおりです。

  • 突然の激しい腰痛(鋭い痛み、鈍い痛みなど)
  • 前かがみの姿勢
  • 腰の曲げ伸ばし、ひねりの動作制限
  • 日常生活動作の困難(歩行や着替え、座位保持など)

痛みの持続期間は、痛みの程度や生活習慣、適切な処置を行うかなどによって個人差があります。一般的には数日〜数週間続くことが多いですが、1週間程度で痛みが軽減する場合もあります。痛みが慢性化してしまうケースもまれにあります。

原因(重いものを持ち上げる、くしゃみ、咳、急な動作)

ぎっくり腰の主な原因は腰への急激な負荷、あるいは長期間にわたる負担の蓄積です。重いものを持ち上げたり、くしゃみや咳をしたりする動作は、腰の筋肉や靭帯に瞬間的に大きな負荷を与えるため注意が必要です。

普段からの姿勢の悪さや運動不足も、ぎっくり腰のリスクを高めます。猫背や反り腰などの不良姿勢は、腰に負担をかけ続け、筋肉や靭帯の疲労を蓄積させます。運動不足は腰周りの筋肉を弱化させ、急な負荷に対応する能力を低下させるため注意が必要です。

中腰での作業やデスクワークなど、長時間同じ姿勢を続ける方は、特に注意しましょう。ぎっくり腰は「腰に負担がかかった」という単純な理由だけで発症するのではなく、日頃の生活習慣の積み重ねが背景にある場合も多いです。

画像診断(X線検査、MRI)

ぎっくり腰の診断は、医師による問診と診察から始まります。痛みの程度や部位、発症の状況、日常生活への影響などを詳しく聞き取り、体を診察することで、ぎっくり腰かどうかを判断します。問診では、いつ、どのような状況で痛みが強く出るのか、他に症状があるかなどを尋ねます。

診察では、腰の可動域や圧痛の有無、神経学的検査などを行い、症状の原因を探ります。他の疾患との鑑別や、より詳細な状態を把握するために、画像検査を行うこともあります

代表的な画像診断としては、レントゲン検査とMRI検査があります。レントゲンでは骨折や骨の変形などを確認し、MRIでは筋肉や靱帯、椎間板といった軟部組織の状態を詳しく見ることができます。MRI検査により、ぎっくり腰の原因になっている組織の損傷の程度を詳しく評価できます。

治療法(安静、鎮痛剤、湿布、コルセット、理学療法)

ぎっくり腰の治療の基本は安静です。発症直後は、痛みが強い時期なので、無理に動かず、安静にして痛みを和らげることが重要です。横になるのがつらい場合は、楽な姿勢で座ったり、少し体を動かしたりしても構いません。痛みが増強するような動作は避けましょう。

痛みが強い場合は、医師の指示のもと、鎮痛剤や湿布薬を使用します。鎮痛剤は、痛みの軽減効果があり、湿布薬は、炎症を抑える効果が期待できます。鎮痛剤などの薬剤は、症状に合わせて適切な種類と用量を選択することが必要です。自己判断で市販薬を使用せず、必ず医師に相談しましょう。

痛みが落ち着いてきたら、コルセットを着用して腰をサポートすることで、再発を予防します。コルセットは、腰を固定することで負担を軽減し、安定させる効果が期待できます。装着時間は、医師の指示に従いましょう。

理学療法士の指導のもとでリハビリを行うことで、腰回りの筋肉を強化し、柔軟性を向上させることができます。ぎっくり腰は、一度発症すると繰り返しやすい傾向があるため、日常生活での姿勢の見直しや、定期的な運動習慣を取り入れることも重要です。

まとめ

椎間板ヘルニアとぎっくり腰は、いずれも腰に痛みを生じさせる疾患ですが、その原因や症状の現れ方、治療方針には違いがあります。椎間板ヘルニアは、椎間板の一部が突出して神経を圧迫することで起こり、腰の痛みに加えて、お尻や脚にしびれや痛みが放散するのが特徴です。

ぎっくり腰は、急な動作や無理な姿勢などが原因で腰の筋肉や靭帯が損傷し、激しい痛みを生じる疾患です。安静と痛みの緩和を中心とした治療を行います。コルセットやリハビリテーションもぎっくり腰の改善に役立つ可能性があります。

どちらの疾患も、早期発見・早期治療が大切ですので、痛みがある場合は自己判断せずに、医療機関を受診して適切なアドバイスを受けましょう。日頃から正しい姿勢や適度な運動を心がけ、腰への負担を軽減することも、予防につながります。

日常生活の中でどのような習慣を心がけるかによって、回復スピードにも差が出ることがあります。以下の記事では、椎間板ヘルニアの回復を促すために取り入れたい生活習慣やセルフケアのポイントについて詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアを早く治す方法!回復を促進する生活習慣

参考文献

William Moraes da Silva, Silvio César Cazella, Rafaela Soares Rech. Deep learning algorithms to assist in imaging diagnosis in individuals with disc herniation or spondylolisthesis: A scoping review. International Journal of Medical Informatics, 2025, 201, -, p.105933.

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