腰の痛みやお尻から足にかけてのしびれなどの症状は、椎間板ヘルニアが原因の可能性があります。腰椎4番5番(L4/5)の間に発生する椎間板ヘルニアは、日常生活に大きな影響を及ぼす場合があります。腰椎4番5番は、上半身の重さを支えつつ体を動かす役割を担っているため、負担がかかりやすい部位です。
この記事では、4番5番の椎間板ヘルニアによる腰痛や坐骨神経痛、下肢のしびれなどの症状を詳しくご紹介します。保存療法や手術療法といった治療法に加え、ご自身で取り組めるセルフケアの方法も解説します。ヘルニアと上手に向き合う方法をお探しの方は、ぜひ参考にしてください。
目次
椎間板ヘルニア4番5番の症状
椎間板ヘルニア4番5番の症状について、以下の項目を解説します。
- 腰痛:安静時や動作開始時に出現
- 坐骨神経痛:臀部から足への痛みやしびれ
- 下肢のしびれ:感覚異常や麻痺
- 間欠性跛行:一定距離歩くと痛みやしびれで歩行が困難
- 膀胱直腸障害:頻尿、尿失禁、便秘などの症状
腰痛:安静時や動作開始時に出現
腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニアの4番5番は、腰痛の原因としてよく知られています。安静時や動き始めに痛みが強くなる場合があり、椎間板が飛び出して神経を圧迫し、炎症を起こすことが主な要因です。朝起きた直後や長時間座った後に痛みが増す傾向がみられます。
痛みの程度や症状は個人差があり、軽い違和感から強い痛みまで幅広いです。軽度の場合は、日常生活に支障をきたさない鈍い痛みで済むこともありますが、進行すると鋭い痛みや動作困難が生じることがあります。くしゃみや咳などの動作でも激しい痛みが走ることがあり、日常生活に影響を及ぼします。
腰痛の種類や特徴は、以下の表をご参照ください。
痛みの種類 | 特徴 | 具体的なイメージ |
鋭い痛み | 瞬間的に電気が走るような痛み | 針で刺されたような、鋭く突き刺さる痛み |
鈍い痛み | じわじわと続く痛み | 重いものが腰にのしかかっているような、持続的な痛み |
締め付けられるような痛み | 腰が締め付けられるような感覚 | コルセットで締め付けられているような、圧迫感 |
以下の記事では、椎間板ヘルニアによる腰痛を軽減するための即効性が期待できる対処法や、自宅で取り入れやすいケア方法について解説しています。すぐに実践できる工夫を知りたい方は、ぜひご覧ください。
>>椎間板ヘルニアの痛みを和らげる方法と即効性が期待できる対策
坐骨神経痛:臀部から足への痛みやしびれ
坐骨神経痛は、お尻から太もも、ふくらはぎ、足先にかけて現れる痛みやしびれが特徴です。椎間板ヘルニアの4番5番では、飛び出した椎間板が坐骨神経を圧迫し、症状が引き起こされます。坐骨神経は人体で最も太い神経で、腰から足先まで伸びています。
4番5番の椎間板ヘルニアによる坐骨神経の圧迫で、症状が広範囲に及ぶ場合があります。痛みの程度は、軽いしびれから立っていられないほどの激しい痛みまでさまざまです。症状が長引くと、日常生活に支障をきたすこともあります。坐骨神経痛の主な症状は、以下のとおりです。
- 片側の足にしびれや痛みが現れる
- 電気が走るような鋭い痛みが生じる
- 痛みやしびれが足先まで広がる
- 長時間座っていると症状が悪化する
以下の記事では、椎間板ヘルニアと坐骨神経痛がどのように関連しているのかを詳しく解説しています。原因や症状の違い、効果的な治療法についても紹介していますので、症状にお悩みの方はぜひご参考ください。
>>椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の関係性!症状と適切な治療法を解説
下肢のしびれ:感覚異常や麻痺
椎間板ヘルニアが第4腰椎と第5腰椎の間で神経を圧迫すると、下肢にしびれや感覚異常、麻痺が生じます。しびれは足全体や特定の部位に限定して現れることがあります。感覚が鈍くなるだけでなく、過敏になる場合もあります。
重症化すると足に力が入らなくなり、歩行困難に至ることがあります。医学論文では、68歳男性が3年間にわたって腰痛と両下肢の放散痛、しびれを訴え、MRI検査によりL4–L5の椎間板ヘルニアと診断された症例が報告されています。
症状は時間の経過とともに進行することがあります。初期は軽度のしびれでも、放置すると麻痺へと悪化するおそれがあるため、早期の診断と治療が重要です。
間欠性跛行:一定距離歩くと痛みやしびれで歩行が困難
間欠性跛行(かんけつせいはこう)は、一定の距離を歩くと下肢に痛みやしびれが生じ、歩行が困難になる状態です。数分間休むことで症状が軽減し、再び歩けるようになります。4番5番の椎間板ヘルニアにより神経が圧迫されることで、下肢の血流が悪化し、発症すると考えられています。主な症状の特徴は、以下のとおりです。
- 歩行開始時は問題ないが、10〜15分ほどで痛みやしびれが出る
- 数分間の休憩後に再び歩行できる
- 症状の進行に伴い、歩ける距離が短くなる
症状が進むと日常生活にも影響するため、早めに医療機関を受診してください。
膀胱直腸障害:頻尿、尿失禁、便秘などの症状
椎間板ヘルニア4番5番では、膀胱直腸障害が起こることがあります。飛び出した椎間板が、排尿や排便をコントロールする神経を圧迫することが原因です。頻尿や尿失禁、便秘などの症状が現れ、日常生活に支障をきたすこともあります。
頻尿や尿失禁、便秘などの症状が現れた場合は、医療機関を受診することが重要です。可能性は低いですが、手術が必要となるケースもあります。排尿や排便の感覚がおかしい、残尿感がある、尿が出にくい、便秘が続くなどの症状に気づいたら、すぐに医師に相談しましょう。
椎間板ヘルニア4番5番の治療法
椎間板ヘルニア4番5番の治療法は、主に以下の2つです。
- 保存療法:薬物療法、理学療法、装具療法
- 手術療法:内視鏡手術、椎間板摘出術
保存療法:薬物療法、理学療法、装具療法
保存療法とは、手術を行わずに痛みやしびれなどの症状を軽減する治療法です。非手術でも症状が改善することが多いため、初期の対応として保存療法が広く用いられています。保存療法の主な内容は、以下のとおりです。
- 薬物療法:炎症や痛みを抑える
- 理学療法:運動や物理療法で機能改善を目指す
- 装具療法:腰部を支える装具を使用
薬物療法で使用される薬は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や神経障害性疼痛治療薬、筋弛緩薬などがあります。症状に応じて使い分けられ、痛みや炎症の軽減が目的です。理学療法では、理学療法士の指導のもとでストレッチや筋力強化を行い、腰部の柔軟性と安定性を高めることが目的です。温熱療法や牽引療法も含まれ、症状の改善や再発予防が期待されます。
装具療法では、コルセットなどの装具により腰を安定させ、患部への負担を軽減します。装着により、痛みの軽減と日常生活の支援が可能です。保存療法は、通常6週間〜3か月程度実施されます。改善が見られない場合や症状が悪化する場合には、手術療法の検討が必要です。
手術療法:内視鏡手術、椎間板摘出術
保存療法で十分な効果が得られない場合や神経の麻痺など重度の症状がある場合には、手術療法を検討します。症状の程度や画像診断結果をもとに、医師と相談して治療法を決定します。手術療法には、以下の2つの主な方法があります。
- 内視鏡手術:小さな切開による低侵襲手術
- 椎間板摘出術:広範囲の病変に対応する手術
内視鏡手術では、内視鏡を使用して、ヘルニア化した椎間板の一部を切除します。身体への負担が少なく、術後の痛みや出血も軽度である傾向がありますが、適応が限られる症例も存在します。
椎間板摘出術では、皮膚を切開して椎間板を摘出する方法で、内視鏡手術では対応できない部位にも適応可能です。術後の痛みや入院期間が長くなる可能性があります。手術後は、再発防止と社会復帰を目的としたリハビリテーションが重要です。医師や理学療法士の指導のもとで段階的な機能回復を目指しましょう。
術前の画像所見と術中の所見に差異がある場合「硬膜内腰椎椎間板(こうまくない ようつい ついかんばん)ヘルニア」の可能性が考慮されます。椎間板の一部が神経を包む膜の内部に入り込むまれな状態であり、手術中の超音波検査や病理検査で診断が可能です。
椎間板ヘルニア4番5番のセルフケア5選
椎間板ヘルニア4番5番のセルフケアを5つご紹介します。
- 適度な運動
- 正しい姿勢
- 体重管理
- 禁煙
- 適切な睡眠
適度な運動
椎間板ヘルニアの症状緩和には、腰への負担を抑えた有酸素運動が効果的です。有酸素運動には、ウォーキングや水泳が含まれます。血行促進によって筋肉の緊張を和らげ、痛みの軽減が期待できます。
ウォーキングは1日30分を目安に、自分のペースで継続しましょう。早歩きでなくても構いません。近所を散歩したり、通勤時に一駅分歩いたりすることも効果的です。水泳は、水の浮力によって腰への負担が軽減されるため、腰痛がある人にも向いています。プール内を歩いたり、無理のない範囲で泳いだりしてください。
ジョギングとジャンプを伴う運動は、椎間板への圧力が大きく、症状を悪化させるおそれがあるため避けましょう。運動を始める前に、医師または理学療法士へ相談し、運動内容や頻度、強度について助言を受けてください。
正しい姿勢
日常生活で正しい姿勢を意識することは、椎間板ヘルニアの予防と緩和に有効です。猫背などの姿勢は、腰椎への負担を増やし、症状の悪化につながります。正しい姿勢とは、耳・肩・腰・膝・くるぶしが一直線にそろっている状態です。
デスクワーク中心の方は、椅子に深く座り、背筋を伸ばしてあごを引いた姿勢を意識してください。パソコン画面は目線の高さに調整し、キーボードやマウスは身体の近くに配置しましょう。
腰への負担軽減には、1時間に1回程度、軽く身体を動かすことも有効です。ストレッチや体操を取り入れて、長時間同じ姿勢を続けないよう心がけてください。
以下の記事では、椎間板ヘルニアの痛みを和らげるためにおすすめの姿勢や、自宅でできる効果的なストレッチ方法について詳しく紹介しています。日常生活に簡単に取り入れられるポイントが満載ですので、ぜひ参考にしてみてください。
>>椎間板ヘルニアの痛みを和らげる姿勢と効果が期待できるストレッチ法を紹介
体重管理
体重の適正管理は、椎間板ヘルニアの発症や悪化の予防に重要です。体重が過剰になると腰に大きな負担がかかります。適正体重はBMI(体格指数)で判断します。健康的なBMIの目安は18.5〜25です。BMIは、体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)という式で計算します。
体重管理には、以下の習慣が推奨されます。
- 規則正しく1日3食を摂る
- 野菜や果物を中心にした栄養バランスのよい食事
- 間食や夜食、脂質の多い食事を控える
- 食事量は腹八分目を意識する
過度なダイエットは逆効果になる場合があります。必要に応じて、医師や栄養士へ相談しましょう。
禁煙
喫煙は椎間板への血流を低下させ、椎間板の変性を進行させる要因とされています。ニコチンの血管収縮作用により、組織に必要な栄養が届きにくくなるためです。禁煙は椎間板ヘルニアの進行予防だけでなく、生活習慣病の予防にも役立ちます。禁煙の継続が難しい場合は、以下の対策が有効です。
- 医師への相談
- 禁煙外来の利用
- 禁煙補助薬の使用
家族や周囲の協力を得ながら、無理のない方法で禁煙を継続することが重要です。
適切な睡眠
質の高い睡眠は、身体の回復力を高め、椎間板ヘルニアの症状緩和に貢献します。睡眠中に分泌される成長ホルモンは、組織の修復や疲労回復に関与しています。毎日決まった時間に寝起きすることで、睡眠のリズムを整えましょう。
寝る前のカフェイン摂取やスマートフォンの使用は避けてください。より良い睡眠を得るためには、環境の整備も必要です。以下の点に留意しましょう。
- 室温と湿度を快適に保つ
- 静かで暗い室内環境をつくる
快適な睡眠環境の維持により、身体の回復が促され、痛みの軽減にもつながります。
まとめ
腰痛や坐骨神経痛、下肢のしびれなどの症状は、日常生活に大きな支障を与えることがあります。治療法には保存療法から手術療法まで幅広い選択肢があり、医師と十分に相談することが大切です。
治療を効果的に進めるうえでは、日常生活でのセルフケアも欠かせません。適度な運動の習慣や正しい姿勢の維持、体重の適切な管理、禁煙、質の高い睡眠などが、症状の緩和や再発防止に役立ちます。どれも継続することが重要なので、できることから少しずつ始めてみましょう。
つらい症状が続いている場合は、ひとりで抱え込まず、医師や専門家に相談することをおすすめします。適切な治療とセルフケアを組み合わせながら、無理のないペースで症状の改善を目指していきましょう。
以下の記事では、椎間板ヘルニアの手術におけるリスクや代表的な合併症、手術が必要となるケース、回復までの期間の目安について詳しく解説しています。手術を検討している方や不安を感じている方は、参考にしてみてください。
>>椎間板ヘルニアの手術リスクと合併症!適応と回復期間の目安
参考文献
Ge C-Y, Hao D-J, Yan L, Shan L-Q, Zhao Q-P, He B-R, Hui H. Intradural Lumbar Disc Herniation: A Case Report and Literature Review. Clin Interv Aging, 2019, 14, p.2295-2299.
戻る