頚椎椎間板ヘルニアで仕事を休む期間の目安と職場復帰のタイミング

頚椎椎間板ヘルニアで仕事を休む期間の目安と職場復帰のタイミング
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首や肩の痛み、腕や手のしびれが続く場合、頚椎椎間板ヘルニアの可能性があります。悪化すると日常生活だけでなく、仕事にも大きな支障をきたすおそれがあります。症状によっては通勤や業務の継続が困難となり、休職が必要になることもあります。特に長時間のデスクワークを行う方は注意が必要です。

この記事では、頚椎椎間板ヘルニアによって仕事を休む期間の目安や、復職のタイミングについて解説します。主な症状や治療法、予防策についても詳しく紹介します。現在症状に悩んでいる方はもちろん、将来の不安を感じている方も参考にしてください。

頚椎椎間板ヘルニアの仕事への影響

頚椎椎間板ヘルニアは、悪化すると、日常生活だけでなく仕事にも影響を及ぼすことがあります。仕事への影響について、以下の内容を解説します。

  • 仕事を休む期間の目安
  • 職場復帰のタイミング

仕事を休む期間の目安

頚椎椎間板ヘルニアで休職が必要となる期間は、症状の程度や治療法、仕事内容によって異なります。保存療法を選択した場合、症状が軽いと1〜8週間程度の安静が必要になることがあります。初期の痛みが強い間は安静にし、痛みが和らいできた段階で少しずつ体を動かすようにします。およそ6週間で症状が改善すれば、職場復帰を検討できる可能性があります。

手術が必要な場合、職場復帰までは4〜8週間かかることが一般的です。重症の場合は、1〜2か月、もしくはそれ以上かかるケースもあります。PLDD(経皮的レーザー椎間板減圧術)のような体への負担が少ない手術では、入院期間が短くなる可能性があります。

デスクワーク中心の仕事であれば、比較的早期の復帰が期待できます。力仕事や長時間の運転など、首に負担がかかる職種では、より長い休養が必要となることがあります。

建設作業と事務職では、同じ症状でも復職までの期間が異なる可能性があります。休職期間はあくまで目安であり、個人の状態によって大きく変わります。軽度の症状でも、自然に回復するまでに3か月かかると言われています。

職場復帰のタイミング

職場復帰のタイミングは、症状の回復状況と医師の判断によって決まります。痛みが軽減し、日常生活に支障がなくなってきたら、復帰時期について医師と相談しましょう。

復帰後は、再発を防ぐための工夫が欠かせません。無理な姿勢や長時間の作業を避け、こまめに休憩を取るよう心がけます。重い物を持つ作業や、首に強い負担がかかる運動は、術後3か月程度控えることが推奨されています。

復職後も医師の診察を定期的に受けて経過を観察しながら、適切なケアを続けることが大切です。職場の上司や同僚に状況を伝え、理解と協力を得ることで、スムーズな復帰が期待できます。

職場復帰は、症状の改善具合や生活への支障の有無、職場環境への適応を総合的に判断しながら進める必要があります。医師と相談し、無理のない職場復帰を目指しましょう。

頚椎椎間板ヘルニアの症状5選

頚椎椎間板ヘルニアの主な5つの症状は、以下のとおりです。

  • 首や肩の痛み
  • 腕や手のしびれや痛み
  • 握力低下や手の動かしにくさ
  • 歩行障害
  • めまいや吐き気

首や肩の痛み

頚椎椎間板ヘルニアの代表的な症状は、首や肩の痛みです。健康な状態では、椎間板は隣り合う椎骨の間でクッションの役割を果たし、脊柱にかかる衝撃を吸収しています。ヘルニアによって椎間板の一部が飛び出し、神経を圧迫することで、痛みが生じます。

痛みの種類はさまざまで、鈍痛や鋭い痛みのほか、電気が走るような痛みやしびれが広がることもあります。「神経根痛」と呼ばれる現象で、神経が通る領域に沿って痛みが出るのが特徴です。

痛みは、頭を動かしたり、咳やくしゃみをしたり、重いものを持ち上げた際に悪化することがあります。長時間同じ姿勢での作業やデスクワークなど、首に負担のかかる状態も悪化の要因となります。

腕や手のしびれや痛み

腕や手のしびれや痛みも特徴的な症状の一つです。首の骨(頚椎)の間から飛び出した椎間板が、腕や手に伸びる神経を圧迫するために起こります。神経の通り道である椎間孔が狭窄することで、神経が圧迫されやすくなります。特にC7(隆椎)は棘突起が長く、下方に位置するC8神経も圧迫される可能性があります。

しびれや痛みは、指先や手のひら、手首、前腕、上腕など、さまざまな場所に現れる可能性があり、範囲も人それぞれです。症状の種類も、ピリピリやチクチク、ジンジンとした痛みなど、多岐にわたります。朝方や夜間に強くなる傾向があります。腕を特定の方向に動かすことや、首を傾けるなどの動作で、症状が悪化する場合もあります。

このような症状を和らげるためには、日常生活でできる対処法やケアを知っておくことが重要です。以下の記事では、頚椎椎間板ヘルニアによる痛みを軽減する方法や、自宅でできる具体的なケアについて詳しく解説しています。
>>頚椎椎間板ヘルニアの痛みを和らげる方法と自宅でできるケア

握力低下や手の動かしにくさ

神経が圧迫されると、筋肉の働きにも影響を及ぼし、握力が低下したり、手や指の細かい動きが難しくなったりすることがあります。神経が筋肉に送る信号がうまく伝わらなくなることが原因です。以下のような動作が困難になることがあります。

  • シャツのボタンを留める
  • ペットボトルの蓋を開ける
  • 字を書く
  • 箸を使う

物を落としやすくなったり、掴む力が弱くなったりすることもあります。日常生活に支障をきたすだけでなく、仕事や趣味にも影響を与える可能性があります。

歩行障害

頚椎椎間板ヘルニアが進行すると、脊髄が圧迫されて歩行障害を引き起こすこともあります。足に力が入らなくなったり、歩行時にふらついたり、足がもつれるなどの症状が現れることがあります。歩行障害は、頚椎椎間板ヘルニアの中でも重症なケースで起こりやすい症状です。もし歩行に異常を感じたら、すぐに医療機関を受診しましょう。

めまい、吐き気

めまいや吐き気も、頚椎椎間板ヘルニアの症状として現れることがあります。ヘルニアによって自律神経が刺激されることが原因の一つと考えられています。めまいや吐き気は、他の病気でも起こるため、頚椎椎間板ヘルニアが原因と断定はできません。症状が続く場合は、他の症状とあわせて医師に相談することが重要です。

頚椎椎間板ヘルニアの2つの治療選択肢

頚椎椎間板ヘルニアの治療法の選択は、症状の程度や日常生活への影響、患者さん自身の希望を総合的に考慮して決定します。2つの治療法について、以下の内容を解説します。

  • 保存療法の種類と期間
  • 手術療法の種類と期間

保存療法の種類と期間

保存療法は、手術をせずに薬やリハビリテーションなどで症状を和らげる治療法です。頚椎椎間板ヘルニアの初期治療として選択されることが多く、体への負担が少ないため、高齢の方や持病のある方でも比較的安心して受けることができます。保存療法の主な種類は以下のとおりです。

  • 薬物療法:痛みや炎症を抑える薬を服用する
  • 理学療法:首や肩周りの筋肉を強化する運動やストレッチ、マッサージをする
  • 装具療法:首を固定する装具を装着する
  • 神経ブロック注射:痛みの原因となっている神経に直接薬を注射する

薬物療法の代表的な薬は、炎症を抑える非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や筋肉の緊張を和らげる筋弛緩剤、神経の痛みを和らげる神経障害性疼痛治療薬などがあります。医師は、患者さんの症状に合わせて最適な薬剤を選択します。理学療法は、理学療法士の指導のもと、自宅でも継続して行うことで、症状の改善と再発予防につながります。

首を固定する装具は、首の動きを制限することで、炎症を起こしている組織を安静に保ち、治癒を促進する効果があります。長期間の装具装着は、首の筋肉の衰えにつながる可能性もあるため、医師の指示に従って使用することをおすすめします。神経ブロック注射は、即効性が高く、痛みが強い場合に有効な治療法です。

保存療法の期間は、症状の程度で異なりますが、一般的には数週間〜数か月かかります。初期の痛みが強い時期は安静にし、痛みが落ち着いてきたら徐々に体を動かすようにします。多くの場合、約6週間で症状が改善し始めますが、アスリートが以前のレベルに復帰するには、一般的に集中的なリハビリテーションが推奨されます。

手術療法の種類と期間

保存療法で効果が得られない場合や症状が重い場合、脊髄症状(歩行障害や排尿障害など)がある場合は、手術療法が検討されます。手術療法は、飛び出した椎間板を取り除いたり、神経を圧迫している骨棘などの部分を取り除いたり、神経の通り道を広げることで症状を改善します。手術療法の種類は、以下のとおりです。

  • 頚椎前方固定術:首の前側を切開し椎間板を摘出して、骨を移植して固定する手術
  • 頚椎椎弓形成術:首の後ろ側を切開し神経を圧迫している骨や靭帯の一部を取り除く手術
  • 頚椎人工椎間板置換術:損傷した椎間板を人工椎間板に置き換える手術

頚椎椎弓形成術は、体への負担が少ない手術法ですが、脊椎の安定性を損なう可能性もあるため、症例によっては前方固定術と併用されることもあります。

頚椎人工椎間板置換術は、脊椎の可動性を維持できる利点がありますが、人工物を使用するため、長期的な経過観察が必要です。近年では、体への負担が少ない経皮的レーザー椎間板減圧術(PLDD)などの低侵襲手術も選択肢の一つとなっています。

手術療法の期間は、手術の種類や症状の程度によって異なり、入院期間は数日〜数週間、職場復帰までは4〜8週間程度かかることが一般的です。重症例では、1~2か月、あるいはそれ以上の期間が必要となる場合もあります。

一部の研究によれば、リハビリテーションと競技に特化したトレーニングプログラムを組み合わせることが、アスリートの競技復帰に有効である可能性が示唆されています。医師とよく相談し、自分の状態や生活スタイルに合った治療法を選択することが大切です。

さらに詳しい症状や治療の進歩、そして日常生活で気をつけるポイントについては、以下の記事も参考になります。
>>頸椎椎間板ヘルニアの症状と最新治療法!日常生活の注意点

頚椎椎間板ヘルニアの予防と再発防止策5つのポイント

頚椎椎間板ヘルニアの予防と再発防止策5つのポイントは以下のとおりです。

  • デスクワーク時の正しい姿勢
  • 適度な運動
  • ストレッチ
  • 睡眠時の枕の選び方
  • 日常生活での注意点(重いものを持つ、激しい運動など)

デスクワーク時の正しい姿勢

現代社会において、パソコン作業やスマートフォンの使用は避けられません。長時間の使用は、知らず知らずのうちに首への負担を増大させ、頚椎椎間板ヘルニアのリスクを高めています。猫背の姿勢は負担がかかりやすいため、注意が必要と言われています。正しい姿勢を保つためには、以下のポイントを意識しましょう。

  • 画面の高さを調整する:目線と画面の上端を同じ高さに調整する
  • 椅子に深く座る:椅子に深く腰掛け、背筋を伸ばす
  • こまめな休憩:1時間に1回は立ち上がり、軽いストレッチや首の運動を行う
  • 適切な机と椅子の選択:身長に合った高さの机や、高さが調整できる椅子を選ぶ

さらに、デスクワークによる負担を軽減するためには、姿勢の工夫に加えてストレッチの習慣も重要です。以下の記事では、椎間板ヘルニアによる痛みを和らげるための姿勢や、効果が期待できるストレッチ法について詳しく紹介しています。
>>椎間板ヘルニアの痛みを和らげる姿勢と効果が期待できるストレッチ法を紹介

適度な運動

適度な運動は、首や肩周りの筋肉を強化し、頚椎椎間板ヘルニアの予防と再発防止に効果的です。全身運動は血液循環を促進し、筋肉をリラックスさせます。以下のような運動は効果的です。

  • ウォーキング
  • 水泳
  • ヨガやピラティス

ウォーキングは1日30分程度を目安に、姿勢を意識して歩きましょう。水泳は浮力により体への負担が少なく、首や肩周りの筋肉を効果的に鍛えられます。ヨガやピラティスは体幹を鍛え、正しい姿勢の維持に役立ちます。

ストレッチ

ストレッチは筋肉の柔軟性を保ち、血行を促進します。以下のストレッチは効果が期待できます。

  • 首のストレッチ:ゆっくりと左右に傾けたり、回したりして首の筋肉を緩める
  • 肩のストレッチ:肩や腕を大きく回し、肩甲骨を意識して動かす

首や肩周りの筋肉を意識的にほぐすことで、血行が促進され、筋肉の疲労回復にもつながります。無理のない範囲で、気持ちよく感じる強さで行うのがポイントです。

睡眠時の枕の選び方

睡眠中は、長時間同じ姿勢を保つため、枕選びは重要です。自分に合った枕を選ぶことで、首への負担を軽減し、頚椎椎間板ヘルニアの予防と再発防止につながります。合わない枕を使用していると、首や肩の筋肉に負担がかかり、痛みやこりの原因になるだけでなく、ヘルニアのリスクを高める可能性もあります。以下のような枕を選びましょう。

  • 高すぎず低すぎない枕:仰向けで寝たとき、首の自然なカーブを維持できる高さが理想的
  • 頚椎をサポートする枕:頚椎の自然なカーブを維持する形状の枕が理想的

高すぎる枕は首を不自然に曲げ、低すぎる枕は首を支えきれません。頚椎を適切にサポートすることで、首への負担を軽減し、快適な睡眠姿勢を保つことができます。通気性が良く、清潔に保てる素材の枕を選びましょう。汗や湿気を吸収しにくい素材は、カビやダニの発生原因となる可能性があります。

日常生活での注意点(重いものを持つ、激しい運動など)

日常の何気ない動作でも、首に負担がかかることがあります。日常生活で以下の行動をする際に備えて、ポイントを把握しておきましょう。

  • 重いものを持ち上げる:荷物を体に近づけ、腰を落とし重心を低くする
  • 急な動作を避ける:急に振り向いたり、首を急に曲げたりする動作は避ける
  • 長時間の同じ姿勢:こまめに休憩を取り、ストレッチを行う
  • 適切な運動:激しい運動を避け、ウォーキングや水泳など、適度な運動を行う

頚椎椎間板ヘルニアは、日々の生活習慣によって発症や再発のリスクが左右されます。日頃から体に負担をかけない過ごし方を心がけましょう。

加えて、回復を早めるためには、どのような生活習慣が効果的なのかを知っておくことも重要です。以下の記事では、椎間板ヘルニアを早く治すための具体的な習慣について解説しています。
>>椎間板ヘルニアを早く治す方法!回復を促進する生活習慣

まとめ

頚椎椎間板ヘルニアで仕事を休む期間は、症状の程度や治療法、仕事内容によって異なります。保存療法で1~8週間、手術療法で4~8週間、またはそれ以上かかることもあります。デスクワークより力仕事のほうが休職期間は長くなる傾向があります。

職場復帰のタイミングは、症状の改善状況と医師の判断をもとに、無理のない形で計画しましょう。復帰後も再発予防のために、正しい姿勢の維持や休憩、体に負担をかけない動作などを続けることが大切です。重いものを持つ作業や激しい運動は術後3か月程度は控えましょう。

自分の体と向き合いながら、長く健康的に働ける環境づくりを心がけましょう。そもそも椎間板ヘルニアとはどのような病気なのか、全体像を知っておくと今後の予防や対応にも役立ちます。以下の記事では、原因や症状、対策について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアとは?原因や症状・対策を解説

参考文献

Robert G Watkins 4th, Robert G Watkins 3rd. Cervical Disc Herniations, Radiculopathy, and Myelopathy. Clin Sports Med, 2021, 40, 3, p.513-539

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