椎間板ヘルニアとは?椎間板の神経を圧迫する原因や症状・対策を解説

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腰や背中の痛みで悩んでいませんか? もしかすると、椎間板ヘルニアの可能性があります。椎間板ヘルニアは、背骨のクッションである椎間板が飛び出し、神経を圧迫することで起こる病気です。 椎間板の中心部(髄核)が、周りを囲んでいる線維輪(コラーゲンを多く含んだ組織)を押し出して飛び出すイメージです。

長時間の同じ姿勢や、加齢による椎間板の劣化などが原因として挙げられます。 電気が走る鋭い痛みやしびれ、場合によっては筋力低下を伴う坐骨神経痛などの症状が現れます。この記事では、以下のポイントを解説します。

  • 椎間板ヘルニアの原因
  • 椎間板ヘルニアの症状
  • 椎間板ヘルニアの診断方法
  • 椎間板ヘルニアの治療法
  • 椎間板ヘルニアを予防するための注意点

腰痛でお悩みの方、椎間板ヘルニアが気になる方は、ぜひ読み進めてみてください。 腰痛の原因を深く理解し、より快適な生活を目指すための参考になります。

椎間板ヘルニアの原因

椎間板ヘルニアの主な原因として、以下の3つを解説します。

  • 加齢による椎間板の変性
  • 日常生活における負担
  • 遺伝的要因

不安や疑問を解消し、治療に前向きに取り組むためにも、椎間板ヘルニアについてよく知る必要があります。

加齢による椎間板の変性

加齢とともに、体はさまざまな変化が起こります。椎間板も例外ではなく、加齢とともに水分が減少し、弾力性が低下する傾向があります。若い頃は、椎間板は水分をたっぷり含んでおり、弾力性があります。しかし、20代後半頃から徐々に水分が失われ始め、40代になると弾力性が低下する傾向です。60代になると、椎間板の変性がさらに進み、椎間板ヘルニアを発症するリスクが高まりやすくなります。

弾力性を失った椎間板は、衝撃を吸収する能力が弱まり、ちょっとした負担でも傷つきやすくなります。

日常生活における負担

日常生活での何気ない動作や習慣が、椎間板に大きな負担をかけている場合があります。椎間板に過剰な圧力をかけ線維輪を損傷する原因と、日常生活で心がけるべき習慣を紹介します。

負担をかける原因負担を軽減する習慣
・重い物を持ち上げる
・猫背で長時間座り続ける
・前かがみの姿勢で作業する
・正しい姿勢を意識
・重い物を持ち上げるときは膝を曲げて腰を落とす
・適度な運動で背筋を鍛える

中腰での作業や、急に重い物を持ち上げる動作は、椎間板に瞬間的に大きな力が加わるため、ヘルニアのリスクをさらに高めます。長時間のデスクワークやスマートフォンの使用も、姿勢の悪化につながり、椎間板への負担を増大させる要因となります。

椎間板ヘルニアは発生率が増加し年齢も幅広くなっています。日常生活における負担を軽減できるように意識しましょう。

以下の記事では、椎間板ヘルニアを悪化させないために避けるべき行動や、痛みを軽減するための正しい姿勢・動作のポイントについて詳しく解説しています。症状が進行する前に、生活習慣を見直すヒントを得られます。
>>椎間板ヘルニアでやってはいけないこと!悪化を防ぐ注意点

遺伝的要因

遺伝的要因は、親から子へと受け継がれる特徴をいいます。椎間板の強さや弱さも遺伝する場合があります。家族で椎間板ヘルニアを経験した人がいると、他の家族も椎間板が弱い可能性があるため、負荷がかかるとヘルニアになりやすいリスクがあります。

ただし、遺伝だけがすべてを決めるわけではありません。遺伝的に弱い椎間板でも、正しい姿勢を保ち、無理な動きを避ければ、ヘルニアを予防できる可能性が高くなります。

椎間板ヘルニアの症状

椎間板ヘルニアになると、腰や足にさまざまな症状が現れます。神経が圧迫される場所や程度によって、症状の現れ方は人それぞれです。代表的な症状3つについて解説します。

  • 痛み
  • しびれ
  • 筋力低下

痛み

椎間板ヘルニアの痛みは、腰や臀部(お尻)、脚にかけて現れる人が多いです。腰から足にかけて伸びている坐骨神経が圧迫されると、鋭い痛みやしびれを伴う坐骨神経痛が起こる場合があります。

痛みの程度は軽い違和感から、立ったり座ったりするのもつらいほどの激痛まで、さまざまです。痛みの種類や特徴をまとめた表は以下のとおりです。

痛みの種類特徴具体的な症状の例
腰痛腰に鈍い痛みや違和感がある・椅子に座っていると腰が重だるく感じる
・朝起きたときに腰がこわばる
・腰を反らすと痛みが増す
坐骨神経痛腰から足先にかけて、鋭い痛みやしびれが走る・電気が走る痛み
・針で刺される痛み
・焼ける痛み
臀部痛お尻に痛みやしびれがある・お尻がジンジンしびれる
・お尻に違和感や圧迫感がある
下肢痛脚に痛みやしびれがある・脚全体が重だるい
・ふくらはぎがつる
・足の指先がピリピリする

しびれ

椎間板ヘルニアによるしびれは、神経が圧迫されるために起こります。しびれの範囲は、圧迫されている神経の種類によって異なります。しびれの範囲と圧迫されている神経をまとめた表は以下のとおりです。

しびれの範囲圧迫されている神経具体的な症状の例
お尻から足先坐骨神経・お尻から足にかけて全体的にしびれる
・足の裏がジンジンする
・足の指先の感覚が鈍くなる
太ももの前側大腿神経・太ももの前側がピリピリする
・太ももの皮膚の感覚が鈍い
ふくらはぎの外側総腓骨神経・ふくらはぎの外側がしびれる
・足の甲の感覚が鈍い
足の裏脛骨神経・足の裏がしびれる
・かかとや足の内側の感覚が鈍い

筋力低下

筋力低下は椎間板ヘルニアが進行し、神経の圧迫によって筋力が低下した状態です。筋力低下は、初期の段階では自覚症状がない人が多く、患者さん自身も気づいていないケースもあります。重症化すると、つま先立ちや踵歩きが難しくなったり、歩行が困難になったりする可能性があります。

筋力低下は、しびれや痛みがある部分に起こりやすいです。坐骨神経が圧迫されると、足の筋肉が弱くなり、足を引きずるように歩く人もいます。特定の筋肉が弱くなると姿勢が悪くなったり、転びやすくなったりする場合もあります。

足の親指を上に反らせる筋肉が弱くなると、親指が地面に引っかかり、つまずきやすくなります。筋力低下は日常生活に大きな影響を与える可能性があるため、早期発見・早期治療が重要です。

以下の記事では、筋力低下を含む椎間板ヘルニアの初期症状について詳しく解説し、早期に気づくためのチェックポイントや、見逃しがちなサインについても紹介しています。早期発見・早期治療に役立てましょう。
>>椎間板ヘルニアの初期症状と見逃せないサイン!早期発見のポイント

椎間板ヘルニアの診断方法

腰痛の原因はさまざまで、見た目では判断できないケースがほとんどです。椎間板ヘルニアの診断について、以下のポイントを解説します。

  • 検査方法
  • 評価基準

自己判断せずに、医療機関を受診し、適切な検査を受けて診断を受けましょう。

検査方法

椎間板ヘルニアの診断は、いくつかの検査方法を組み合わせて行います。それぞれの検査方法の目的と何がわかるのか、具体的に解説していきます。

問診では、患者さんの症状について詳しくお話を伺います。確認するポイントは以下のとおりです。

  • いつから痛みやしびれを感じ始めたのか
  • どんなときに症状が悪化するのか
  • 痛みの程度はどのくらいか
  • どこに痛みやしびれがあるのか

気になる症状があれば、医師にお伝えください。日常生活での様子や過去のケガ、持病なども診断の参考となる場合があります。

問診の後は、診察を行います。確認する項目は以下のとおりです。

  • 立っている姿勢
  • 歩行の様子
  • 体の動き
  • 神経が圧迫されている部分
  • 筋肉の緊張

体を特定の方向に動かしたときの痛みの出方や、しびれの範囲なども重要な情報となる場合があります。診察である程度の診断はできますが、確定診断には画像検査が不可欠です。代表的な画像検査は3つあります。

  • レントゲン:骨の状態を確認する(椎間板ヘルニア自体は映りません)
  • MRI:椎間板の状態を詳しく調べ、神経への圧迫の程度などを確認する
  • CT:骨や椎間板の状態を詳しく調べる

各画像検査は、目的と特徴が異なるため必要な検査を受けましょう。

評価基準

椎間板ヘルニアの診断は、問診や診察、画像検査の結果を総合的に判断して行います。次の内容を重点的に診察し、椎間板ヘルニアを診断します。

  • 問診で腰や足に痛みやしびれがある
  • 診察で神経の圧迫を示唆する所見がある
  • MRI検査などで椎間板の突出を確認する

腰椎椎間板ヘルニアの発生率は増加傾向で、発症年齢も幅広いため、正確な診断と適切な治療が重要になります。医師は、痛みの程度や、しびれの範囲、日常生活への影響などを考慮し、患者さん一人ひとりに最適な治療方針を決定します。

症状が軽い場合は、保存療法(手術をしない治療法)を行います。薬物療法や理学療法、日常生活での注意点などを指導します。症状が重い場合や、保存療法で効果がない場合は、手術療法を検討します。

以下の記事では、腰椎椎間板ヘルニアの症状を軽度・中等度・重度に分けて詳しく解説し、それぞれのレベルに応じた対処法や注意点について紹介しています。症状に合った正しい対応を知るための参考にしてください。
>>腰椎椎間板ヘルニア症状のレベル別特徴と対処法

椎間板ヘルニアの治療法

椎間板ヘルニアの治療法は大きく分けて以下の2つです。

  • 保存療法
  • 手術療法

多くの場合、まずは体に負担が少ない保存療法を試みます。保存療法で効果が不十分な場合や、症状が重い場合に手術療法を検討します。

それぞれの治療法の特徴やメリット・デメリットを理解し、医師と相談しながら、最適な治療法を選択します。

保存療法

保存療法は、手術をせずに次の方法で症状の改善を目指します。

  • 薬物療法
  • 理学療法
  • 安静
  • 生活指導

椎間板ヘルニアの初期治療として、まずは保存療法を導入するのが一般的です。保存療法は体にかかる負担が少ないというメリットがあり、多くの患者さんで症状の緩和が期待できます。

保存療法で行う、具体的な治療内容を一つずつ解説します。

薬物療法は、痛みや炎症を抑える薬を服用します。薬によって痛みや炎症を抑える効果が期待できます。使用する薬の種類や量は、患者さんの症状に合わせて調整します。一般的に使用される薬には、次の種類があります。

  • 痛み止め
  • 消炎鎮痛剤
  • 神経の炎症を抑える薬
  • 薬や筋肉の緊張を和らげる筋弛緩剤

理学療法は理学療法士によるリハビリテーションを行います。体の機能回復をサポートし、痛みやしびれの軽減を目指します。具体的な方法としては次の内容があります。

  • ストレッチ
  • マッサージ
  • 電気治療
  • 温熱療法
  • 牽引療法

安静は、椎間板への負担を軽減するために、激しい運動や長時間のデスクワークなどは避け、十分な休息が重要です。安静にすると炎症が治まり、痛みが軽減しやすくなります。コルセットを装着すると、腰を安定させ痛みを和らげる効果が期待できます。

生活指導は次の点について指導を受けます。

  • 姿勢や動作の改善
  • 体重管理
  • 栄養指導

猫背姿勢は腰に大きな負担がかかるため、正しい姿勢を取ることが大切です。肥満も腰への負担を増大させるため、栄養バランスの良い食事を摂り、適正体重を維持しましょう。

保存療法は体に負担が少ない反面、効果が現れるまでに時間がかかりやすいです。症状が重く神経の麻痺が出ているケースは、保存療法だけでは十分な効果が得られない可能性があります。

以下の記事では、保存療法の一環として取り入れられるストレッチ方法について、自宅で無理なく実践できるメニューを中心に詳しく解説しています。正しい方法で継続することで、痛みの軽減や再発予防にもつながります。
>>椎間板ヘルニアの改善が期待できるストレッチ!自宅でできる痛み軽減法

手術療法

以下のような場合は手術療法が検討されます。

  • 保存療法で効果がない
  • 症状が重い
  • 日常生活に支障をきたす

手術療法は、椎間板ヘルニアの原因となっている飛び出した椎間板の一部または全部を取り除く手術を行います。

手術と聞くと不安に感じる方もいますが、近年では医療技術の進歩により、体への負担が少ない手術法も開発されています。内視鏡を用いた手術は、小さな傷で手術ができるため、術後の回復が早く、痛みも少なくなる傾向があります。

椎間板ヘルニア脊髄症に対する全周視下手術に関する研究では、次の内容が報告されています。

  • 手術の平均手術時間が 96.34 ± 33.58 分と比較的短い
  • 平均入院期間は 3.56 ± 1.6 日と比較的短い
  • 術後の機能的な改善が認められた
  • 大きな合併症は起こらなかった

手術療法は、保存療法に比べて即効性が高いメリットがありますが、体に負担がかかるデメリットもあります。手術には合併症のリスクもあるため、医師とよく相談し、メリットとデメリットを理解したうえで、手術を受けるかどうかを慎重に判断する必要があります。

椎間板ヘルニアを予防するための注意点

椎間板ヘルニアは、再発しやすい病気です。一度発症したら、再発を予防するための生活習慣を身につけることが大切です。椎間板ヘルニアになりやすい人は、日常生活の中で腰への負担を軽減する工夫を意識する必要があります。具体的には、次の点に注意します。

予防するための注意点内容
正しい姿勢を保つ猫背は腰に大きな負担をかけます。立っているときや座っているときに背筋を伸ばし、正しい姿勢を意識しましょう。
適度な運動をするウォーキングや水泳など、適度な運動は、腰周りの筋肉を鍛え、椎間板への負担を軽減する効果が期待できます。ただし、腰に負担がかかりすぎる激しい運動は避けましょう。
体重管理肥満は腰の負担を増やす要因の一つです。適正体重を維持するために、バランスの良い食事と適度な運動を心がけましょう。
禁煙喫煙は椎間板の変性を促進させます。
栄養バランスの良い食事を摂るカルシウムやビタミンDなど、骨や椎間板の健康に良い栄養素を積極的に摂りましょう。

注意点を守り、日常生活の中で腰への負担を軽減することで、椎間板ヘルニアの予防や再発防止につながります。

まとめ

椎間板ヘルニアは、椎間板が飛び出すことで、神経を圧迫して起こる病気です。加齢や日常生活の負担、遺伝などが原因として考えられています。

症状は腰痛や坐骨神経痛、しびれ、筋力低下などさまざまです。レントゲン、MRI、CTなどの検査で総合的に診断します。

治療は、症状の重さによって保存療法(薬物療法や理学療法、安静など)と手術療法があります。多くの場合は保存療法から始め、改善が見られない場合に手術を検討します。再発予防のポイントは以下のとおりです。

  • 正しい姿勢
  • 適度な運動
  • 体重管理
  • 禁煙
  • バランスの良い食事

腰や足に痛みやしびれがある方は、早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けて、快適な生活を取り戻しましょう。

以下の記事では、椎間板ヘルニアの回復を早めるための具体的な生活習慣やセルフケアのポイントを詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアを早く治す方法!回復を促進する生活習慣

参考文献

Chao-Jui Chang, Yuan-Fu Liu, Yu-Meng Hsiao, Wei-Lun Chang, Che-Chia Hsu, Keng-Chang Liu, Yi-Hung Huang, Ming-Long Yeh, Cheng-Li Lin. Full Endoscopic Spine Surgery for Cervical Spondylotic Myelopathy: A Systematic Review. World Neurosurg, 2023, 175, p.142-150.

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