腰の痛みで日常生活にも支障が出ている場合、椎間板ヘルニアの可能性があります。椎間板ヘルニアとは、背骨の間にある組織の一部が飛び出している状態です。飛び出た組織が神経を圧迫し、痛みやしびれを引き起こすことで、仕事を休まざるを得ないケースがあります。
椎間板ヘルニアで休職が必要なときの診断書の取得方法や、医師への相談ポイント、休職中の過ごし方まで解説します。安心して治療に専念し、スムーズに職場復帰を果たすための具体的な方法を知りたい方は、ぜひ読み進めてみてください。
休職を考えている方や療養中の方にとって、少しでも支えになれば幸いです。
「どのくらいで治るのか?」「無理のない過ごし方は?」といった自然治癒に関する疑問を持つ方も多いはずです。以下の記事では、椎間板ヘルニアの自然治癒にかかる期間や回復の流れ、セルフケアを行う際の注意点について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアの自然治癒期間は?回復過程とセルフケアの注意点を解説
目次
休職診断書とは診断により休職が必要と証明する公的な文書
休職診断書は、医師が診察し、一定期間仕事を休む必要があると判断した場合に発行する書類です。会社に休職を申し出る際の公式な証明書であり、休みの必要性を客観的に示す文書です。
休職が必要となるケースとして、椎間板ヘルニアによる腰痛や神経痛で、日常生活に支障が出ている場合が挙げられます。単なる腰痛ではなく、神経障害の可能性がある場合、医師は休職をすすめることがあります。診断書に記載される内容は以下のとおりです。
- 病名
- 具体的な症状
- 必要な休職期間
- 治療方針
- 疼痛評価
- 運動麻痺の有無
- 復職可否の判定予定日
診断書の作成費用は医療機関によって異なり、一般的には3,000~10,000円程度が相場です。
椎間板ヘルニアで休職診断書が必要なタイミング
椎間板ヘルニアで休職診断書が必要なタイミングとして、以下の場合が挙げられます。
- 日常業務が困難である
- 鎮痛薬やブロック注射で症状の緩和が期待できない
- 仕事により症状が悪化する可能性がある
日常業務が困難である
椎間板ヘルニアの症状は、軽度の違和感から激しい痛みまで、個人差が大きく現れます。普段通りの生活を送るのも困難なほどの痛みやしびれがある場合は、休職を検討する必要があります。以下に例を示します。
- 座っているだけでも激痛が走る
- 数分立っているだけでもつらい
- コピー用紙程度の軽いものを持つだけで腰に響く
痛みやしびれ以外にも、集中力の低下や疲労感といった症状が現れることもあります。症状により、ミスが増えたり、仕事のパフォーマンスが落ちたりする場合も、休職が必要なサインと言えます。仕事中に強い痛みやしびれ、集中力の低下や疲労感があれば、早めに医師に相談することが大切です。
鎮痛薬やブロック注射で症状の緩和が期待できない
保存療法として、医師の処方にもとづく鎮痛薬の服用や神経ブロック注射などがあります。治療で十分な症状緩和が得られない場合は、休職による集中的な治療を検討する必要があります。医師はMRI検査などの画像診断でヘルニアの状態(神経圧迫や炎症の程度など)を総合的に評価し、休職の必要性を判断します。
状態によっては、手術が必要となるケースもあります。痛みが強いあまり、日常生活に支障が出ている場合は、医師に相談し、休職による治療への専念を検討しましょう。医師の指示に従いながら、適切な治療を受けることが、早期回復への近道です。
仕事により症状が悪化する可能性がある
椎間板ヘルニアは、仕事内容によって症状が悪化する可能性があります。具体的には、以下のとおりです。
- 長時間のデスクワーク:同じ姿勢を続けることで腰への負担が増える
- 重量物を持ち上げる作業:腰に瞬間的な負荷がかかる
- 中腰での反復作業:腰への負担が蓄積する
- 長距離運転:振動が腰に影響する
仕事内容と症状の関連性について医師に相談し、休職の必要性を判断してもらうことが大切です。仕事内容を具体的に説明することで、身体にどんな負荷をかけているかを理解し、適切な診断と治療方針を決定できます。
休職までに必要な手続きの流れ
休職までの手続きの流れは以下の4つのステップです。
- 人事に休職願の様式などを確認する
- 医療機関で診断書を取得する
- 人事に診断書や必要な書類を提出する
- 休職期間が終わる前に医療機関を受診する
人事に休職願の様式などを確認する
会社の担当部署に連絡し、休職に関する規定を確認しましょう。会社の就業規則には、休職に関する規定が必ず記載されています。確認すべき項目を以下に示します。
- 休職願の提出期限
- 必要な書類
- 休職期間の上限
- 休職中の給与や社会保険料の扱い
- 傷病手当金の申請方法
休職願の様式も会社によって異なります。所定の様式がある場合は、入手しましょう。提出期限は必ず確認し、余裕を持って手続きを進めましょう。提出期限をすぎてしまうと、休職が認められない可能性もありますので、注意が必要です。
休職中は原則無給となる場合が多いですが、一部給与が支給されることもあります。社会保険料は、一般的に休職期間中も支払いが継続されます。
医療機関で診断書を取得する
休職するためには診断書が必須なため、医療機関を受診して発行を依頼しましょう。医師は診察して休職が必要かどうかを判断したうえで、発行してくれます。会社から指定の様式がある場合は、事前に医師に伝えてください。
人事に診断書や必要な書類を提出する
医療機関で診断書を受け取ったら、速やかに会社に提出しましょう。診断書以外にも、休職願、傷病手当金申請書など、必要な書類がある場合があります。提出期限も必ず守りましょう。休職願には、休職の理由、休職期間、復職予定日などを記入します。
傷病手当金は、病気やケガで会社を休み、給料が支払われない場合に、健康保険から支給される手当金です。申請には診断書が必要で、休職開始後4日目(待期期間3日間終了後)から申請できます。
休職期間が終わる前に医療機関を受診する
休職期間が終了する前に、再度医療機関を受診しましょう。診察して、復職が可能かどうかを判断してもらいます。復職が可能であれば、復職診断書を作成してもらいます。休職期間の延長が必要な場合は、延長の診断書を作成してもらい、会社に提出しましょう。
医師と相談し、無理のない範囲で仕事に復帰できるように、段階的に業務量を増やしていくなどの対応も検討しましょう。職場復帰後も定期的に通院し、経過観察を続けることが大切です。再発予防のためにも、日常生活での姿勢や運動習慣、体重管理などにも気を配りましょう。
医師に相談するときのポイント
相談内容をうまく伝えるためには、事前の準備が重要です。医師とのコミュニケーションをスムーズにし、的確な診断とアドバイスをもらうためのポイントは以下の3つです。
- 仕事内容を詳しく伝える
- 症状の程度や期間を記録しておく
- 治療内容を確認する
仕事内容を詳しく伝える
医師に相談する際は、仕事内容について詳細に伝えることが重要です。以下の例を参考に具体的に伝えましょう。
- 「1日8時間パソコンに向かって座りっぱなしのデスクワークです」
- 「1日に20kgの荷物を平均50回持ち上げる作業があります」
仕事内容だけでなく、通勤時間も重要な情報です。「通勤時間が片道1時間半で立ちっぱなしです」のように、通勤時間や移動手段についても具体的に伝えましょう。仕事内容を伝えることに抵抗がある場合は、会社の就業規則や業務内容が記載された資料などを持参すると伝えやすいです。
症状の程度や期間を記録しておく
自身の症状の程度や期間を記録しておくことは、医師との円滑なコミュニケーションに不可欠です。具体的に伝えられるように準備しておきましょう。以下の表に例を示します。
どんな症状か | ジンジンとする腰の痛み |
いつから | 2か月前に引っ越し作業をしてから |
どんなときに | 朝起き上がるときに痛みが出る |
どれくらいつづくか | 30分くらい |
症状の変化 | 日に日に痛みが増している |
わかりやすく痛みのレベルを0〜10までの数字で表現する方法もあります。0が全く痛みのない状態で、10が想像できる最大の痛みとした場合、どの程度のレベルになるのかを考えてみましょう。痛みのレベルを伝えることで、医師は痛みの程度をより正確に理解できます。
治療内容を確認する
治療内容を理解したうえで、自分にとって最適な治療法を選択することが大切です。治療中に疑問点や不安なことがあれば、遠慮なく医師に相談しましょう。提案された治療内容について、以下の内容を確認しましょう。
- メリットとデメリット
- 効果や期間
- 費用
- 副作用や合併症のリスク
保存療法には、安静や薬物療法(鎮痛剤、筋弛緩剤など)、ブロック注射、理学療法(リハビリテーション)などがあります。手術療法は、症例によって内視鏡を用いた低侵襲手術など、いくつか選択肢が提案されます。治療法の選択は、症状の程度や画像所見、患者さんの状態にもとづいて相談のうえで決定されます。
休職する場合の過ごし方のポイント
休職する場合の過ごし方のポイントとして、以下の内容を解説します。
- 痛みが強いときは安静にする
- 適度な運動を取り入れる
- 禁煙を行う
- 適正体重を維持する
- 職場と定期的に連絡する
心身ともに健康を取り戻し、一日も早く職場復帰できるよう、ぜひ参考にしてください。
痛みが強いときは安静にする
椎間板ヘルニアの症状で最もつらいのは、痛みです。痛みが強いときは、決して無理をせず、安静を第一に考えてください。安静にすることで、炎症の程度が和らぎ、痛みが軽減する可能性があります。具体的には以下のとおりです。
- 横になって休む:抱き枕などを抱えて身体を安定させる
- 椅子に座って過ごす:膝の下にクッションなどを置き膝を軽く曲げる
仕事や家事などの活動を制限し、身体を休めることに集中することが大切です。焦らず、じっくりと治療に専念することで、早期の回復を目指しましょう。
適度な運動を取り入れる
痛みが軽減してきたら、少しずつ身体を動かすようにしましょう。ウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲で身体を動かすことが大切です。ウォーキングは、最初は10分程度から始め、徐々に時間を延ばしていきましょう。最終的には、1日30分程度を目安に行うことを目指します。
ストレッチは、入浴後など、身体が温まっているときに行うのが効果的です。長期間の安静は、筋力低下を招き、回復を遅らせる可能性があります。研究によると、体幹筋の強化トレーニングを継続的に行うことは、腰の負担軽減に役立ち、再発予防に寄与する可能性があります。研究の詳細はこちらの論文をご覧ください。
以下の記事では、椎間板ヘルニアに配慮した筋トレメニューや、実践時の注意点について詳しく紹介しています。無理のない範囲で筋トレも取り入れたい方は、ぜひご参考ください。
>>椎間板ヘルニアに効果が期待できる筋トレメニューと実践時の注意点
禁煙を行う
喫煙は、血流を悪くし、症状の悪化や回復の遅延につながる可能性があります。休職中は、禁煙に取り組む良い機会です。ご自身で禁煙が難しい場合は、禁煙外来を受診することをおすすめします。医師のサポートを受けながら、禁煙に取り組むことができます。
適正体重を維持する
適正体重を維持することは、症状の再発予防につながります。体重が増加すると、腰への負担が大きくなります。バランスの良い食事を心がけ、適度な運動を取り入れることで、体重管理を行いましょう。肥満はさまざまな生活習慣病のリスクを高めるため、健康のためにも適正体重を維持することは重要です。
職場と定期的に連絡する
休職中は、職場と定期的に連絡を取り合い、状況を報告することが大切です。職場復帰の時期や仕事内容の調整などについても、事前に相談しておくことで、スムーズに職場復帰することができます。職場との良好な関係を維持することは、精神的な負担を軽減し、治療にも良い影響を与えます。
まとめ
椎間板ヘルニアによるつらい痛みやしびれで日常生活にも支障が出ている場合は、無理せず休職を視野に入れましょう。医師への相談では、仕事内容や症状を具体的に伝えることが大切です。休職中は安静を第一に、回復に合わせて適度な運動も取り入れましょう。職場とのこまめな連絡も、スムーズな復職につながります。
焦らず治療に専念し、心身ともに健康を取り戻して、職場復帰を目指しましょう。
以下の記事では、椎間板ヘルニアの症状を悪化させないために、日常生活で注意すべき動作や習慣について詳しく解説しています。知らずにやってしまいがちなNG行動をチェックして、悪化を防ぎましょう。
>>椎間板ヘルニアでやってはいけないこと!悪化を防ぐ注意点
参考文献
Yoo Jin Choo, Min Cheol Chang. The effect of exercise on stabilizing and strengthening core muscles for patients with symptomatic herniated lumbar disc: A systematic review and meta-analysis. Asian J Surg, 2024, 47, 3, p.1703-1704
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