朝起きたときや気分が落ち込んだときに腰の痛みが悪化する場合は、椎間板ヘルニアと精神的ストレスの関連性を疑ってみてください。ストレスは筋肉の緊張や血行不良を招き、椎間板ヘルニアの痛みを増幅させる原因です。ストレスの影響で痛みが慢性化してしまうと、日常生活にも大きな支障が出るため、早めの対応が必要です。
この記事では、椎間板ヘルニアの基本的な症状や原因に加え、ストレスが及ぼす影響、悪循環を断ち切るための具体的な対策を解説します。痛みのない毎日を目指すため、ぜひ参考にしてください。
以下の記事では、椎間板ヘルニアの原因や代表的な症状、日常でできる対策についてわかりやすく解説しています。
>>椎間板ヘルニアとは?原因や症状・対策を解説
目次
椎間板ヘルニアの症状の基本情報
椎間板ヘルニアの症状の基本情報について、以下の項目を解説します。
- 椎間板ヘルニアによる代表的な症状
- 椎間板ヘルニアの主な原因
- 椎間板ヘルニアになりやすい人の特徴
椎間板ヘルニアによる代表的な症状
椎間板ヘルニアによる代表的な症状は以下のとおりです。
- 腰痛:椎間板ヘルニアで最も多く見られる症状である
- 坐骨神経痛:電気が走るような痛みが腰から臀部にかけて走る
- 脚のしびれや筋力低下:つま先立ちやかかと歩きが困難になる
- 排尿・排便障害:重症化のサインであり、早急な受診が必要
必ずしもすべての人が症状を覚えるわけではありません。症状の現れ方や程度は、ヘルニアの部位や大きさ、個々の体質などによって異なります。少しでも気になる症状があれば、医療機関を受診して適切な治療を受けましょう。
椎間板ヘルニアの主な原因
椎間板ヘルニアの最も多い原因は、加齢による椎間板の変性です。椎間板は水分を多く含む弾力性がある組織です。背骨にかかる衝撃を吸収するクッションの役割を果たしています。
加齢に伴い、椎間板内の水分が失われ、弾力性が低下することで、椎間板がもろくなり、亀裂が生じやすくなります。亀裂から椎間板の中にある髄核というゼリー状の物質が飛び出し、神経を圧迫することで、腰痛や坐骨神経痛などの症状を引き起こします。加齢以外の椎間板ヘルニアの主な原因は以下のとおりです。
- 不良姿勢:猫背などの姿勢は腰に負担をかける
- 重いものを持ち上げる動作:重いものを持ち上げると腰に急に大きな負荷がかかる
- 喫煙:血流を悪化させ、腰椎に栄養が届きにくくなる
- 遺伝的要因:腰椎が弱い体質などが遺伝する場合がある
椎間板ヘルニアになりやすい人の特徴
椎間板ヘルニアは誰にでも起こりうる疾患ですが、特に以下の特徴を持つ人は、発症リスクが高いと言われています。
- 中高年:40~50代で発症する人が多い
- デスクワーク:長時間同じ姿勢をする人はヘルニアになりやすい
- 長距離ドライバー:長時間同じ姿勢をする人はヘルニアになりやすい
- スポーツ選手:腰に負担がかかるスポーツをする人は注意が必要
- 喫煙者:喫煙は血流を阻害するためヘルニアの危険因子
精神的ストレスが椎間板ヘルニアに及ぼす影響
精神的ストレスが椎間板ヘルニアに及ぼす影響を、以下の項目に沿って解説します。
- ストレスによる筋肉の緊張と血行不良
- ストレスによる痛み感受性の増加
- ストレスによる自律神経の乱れ
ストレスによる筋肉の緊張と血行不良
精神的なストレスを感じると、私たちの身体はコルチゾールというホルモンを分泌します。コルチゾールは、身体をストレスから守るために必要なホルモンですが、過剰に分泌されると、筋肉を緊張させる作用があるため注意が必要です。
慢性的なストレスにさらされると、コルチゾールの分泌が持続的に増加し、腰や背中の筋肉が常に緊張した状態になります。筋肉の緊張は、周囲の血管を圧迫するため、血行不良を引き起こす原因です。血行不良は老廃物の排出も滞らせ、痛みを増強させる要因になります。
健康な状態では、血液によって酸素や栄養が供給され、老廃物が排出されることで、組織の修復と新陳代謝が円滑に行われています。ストレスによる血行不良はこのサイクルを阻害するため、椎間板ヘルニアの症状の悪化につながります。
ストレスによる痛み感受性の増加
ストレスは、痛みを増幅させる作用があります。精神的な緊張状態が続くと、脳内の神経伝達が変化し、通常では痛みとして感じない程度の刺激でも、痛みとして認識されるようになります。
少し重いものを持ち上げただけで、強い痛みを感じたり、同じ姿勢で座っても、以前より早く痛みが出現したりするケースがあります。ストレスによって痛みの閾値が下がり、些細な刺激でも痛みとして認識されてしまうためです。
ストレスによる自律神経の乱れ
自律神経は、呼吸や消化、循環など、生命維持に必要な機能をコントロールする神経系です。自律神経には、活動時に優位になる交感神経と、休息時に優位になる副交感神経の2種類があります。通常は2つの神経がバランスを保つことで、身体の機能が正常に働いています。
慢性的なストレスがあると、交感神経が過剰になるため自律神経の乱れを助長し、さまざまな身体の不調を引き起こします。自律神経の乱れは、痛みのコントロール機能にも影響を及ぼすため注意が必要です。自律神経のバランスが崩れると、痛みを抑制する機能が低下し、椎間板ヘルニアの痛みが増悪することがあります。
自律神経の乱れは、痛みの悪化を招く「睡眠不足」の要因です。睡眠不足は、身体の回復力を低下させ、痛みを増強させることが知られています。質の良い睡眠は、心身の健康を維持するために不可欠であり、椎間板ヘルニアの痛みを管理するためにも重要な要素です。
椎間板ヘルニアの痛みを和らげるための対策4選
椎間板ヘルニアの痛みを和らげるための4つの対策は以下のとおりです。
- 薬物療法(鎮痛薬、筋弛緩薬など)
- 理学療法(運動療法、牽引療法など)
- 鍼灸治療やマッサージ
- 生活習慣の改善(姿勢や睡眠、食事など)
薬物療法(鎮痛薬、筋弛緩薬など)
薬物療法は、痛みや炎症を抑えるための基本的な治療法です。以下の薬を用いて、症状の緩和を目指します。
薬の種類 | 働き | 主な副作用 |
鎮痛薬 | 痛みを和らげる | 眠気、吐き気、便秘 |
筋弛緩薬 | 筋肉の緊張を和らげる | 眠気、ふらつき、口の渇き |
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) | 炎症や痛みを抑える | 胃腸障害、腎機能障害 |
薬を服用する際には、医師の指示に従い、自己判断で服用量を変えたり、中断したりしないようにしましょう。副作用が現れた場合は、すぐに医師に相談することが大切です。
理学療法(運動療法、牽引療法など)
理学療法は、身体の機能を改善し、痛みを和らげるための治療法です。椎間板ヘルニアの場合、運動療法や牽引療法、温熱療法などが行われます。運動療法では、ストレッチや筋力トレーニングなどを行い、腰周りの筋肉を強化し、柔軟性を高めることで、椎間板への負担を軽減します。
ストレッチは、硬くなった筋肉を伸ばし、柔軟性を高めることで、痛みを和らげ、動きをスムーズにする効果が期待できます。筋力トレーニングは、腹筋や背筋などの体幹の筋肉を鍛えることで、腰椎を安定させ、椎間板への負担を軽減します。
牽引療法は、椎間板にかかる圧力を軽減し、痛みを和らげます。牽引療法では、機械を用いて腰椎を引っ張ることで、椎間板にかかる圧力を軽減し、神経への圧迫を和らげる効果が期待できます。
温熱療法とは、患部を温めて血流を促す方法です。慢性的な痛みがある場合に多く用いられます。温熱療法では、温熱パッドなどを使用します。理学治療は、理学療法士の指導のもと行われるため、安全かつ効果的にリハビリテーションを行うことができます。
治療中に痛みが出た場合は、すぐに理学療法士に相談し、負荷の調整などを行いましょう。
鍼灸治療やマッサージ
鍼灸治療やマッサージは、東洋医学にもとづいた治療法です。痛みを和らげ、血行促進が期待できます。鍼灸治療では、身体の特定のツボに鍼を刺したり、お灸をすえたりすることで、痛みを軽減し、自己治癒力を高めます。鍼灸治療は、WHO(世界保健機関)も腰痛に対して有効性を認めており、世界中で広く行われている方法です。
中国の研究でも、鍼灸治療が椎間板ヘルニアの改善に寄与する可能性が示唆されています。マッサージは、筋肉の緊張をほぐし、血行を促進することで、痛みを和らげる方法です。直接筋肉に触れることで、筋肉の緊張を和らげ、血行を促進し、痛みを軽減する効果があります。
生活習慣の改善(姿勢や睡眠、食事など)
生活習慣の改善は、椎間板ヘルニアの痛みを和らげるうえで重要です。デスクワークや立ち仕事など、長時間同じ姿勢を続ける場合は、こまめに休憩をはさみ、身体を動かしましょう。猫背のような前かがみの姿勢は、腰椎への負担を増大させるため注意が必要です。
十分な睡眠も重要です。寝る前のスマートフォンを控えるなど、質の高い睡眠をとるための工夫を行いましょう。適切な睡眠時間は個人差がありますが、一般的には7〜8時間程度の睡眠が推奨されています。
バランスの良い食事は、健康な身体を維持するために不可欠です。骨の健康のために、カルシウムやビタミンⅮなどの栄養を意識して摂取しましょう。カルシウムは牛乳やヨーグルトなどの乳製品、小魚、緑黄色野菜などに多く含まれています。ビタミンDは、鮭やさんまなどの魚類、きのこ類、卵などに多く含まれています。
生活習慣の改善は、日々の小さな工夫が欠かせません。できることから少しずつ始めましょう。
以下の記事では、椎間板ヘルニアの症状を悪化させないために、日常生活で注意すべき動作や習慣について詳しく解説しています。知らずにやってしまいがちなNG行動をチェックして、悪化を防ぎましょう。
>>椎間板ヘルニアでやってはいけないこと!悪化を防ぐ注意点
まとめ
ストレスは筋肉の緊張や血行不良、痛み感受性の増加、自律神経の乱れを引き起こし、椎間板ヘルニアの痛みを悪化させる要因になります。朝起きたときの痛み、気分の落ち込みによる痛みの増加などは、ストレスが影響しているサインです。
痛みを和らげるためには、薬物療法や理学療法、鍼灸治療やマッサージ、そして生活習慣の改善が有効です。つらい痛みやストレスを抱え込まず、医師やカウンセラーなどの専門家に相談することも、症状改善への大きな一歩となります。自分に合った方法で、痛みとストレスをうまく管理し、快適な生活を取り戻しましょう。
症状の程度によっては、保存療法(薬物療法や理学療法、鍼灸治療やマッサージ)だけでなく、手術が必要になるケースもあります。以下の記事では、椎間板ヘルニアに対する治療法の種類や、手術と保存療法の選び方について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアの治療法を解説!手術と保存療法の選び方
参考文献
Yu-Xin Li, Jun Xiong, Zheng Zhang, Kai Liao, Xiao-Hong Zhou, Jun Li, Jie Xiang, Ling-Ling Xu. Research Trends of the Research and Development of Acupuncture and Moxibustion Therapy on Lumbar Disc Herniation: A Bibliometric Analysis. Journal of Pain Research, 2023, 16, 1835-1853.
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