腰や足にしびれや痛みを感じる場合、椎間板ヘルニアの可能性が考えられます。椎間板ヘルニアは、日本で40万人以上が悩んでいるといわれる疾患です。日常生活のちょっとした動作が原因で悪化することがありますが、適切な注意を払うことで症状の悪化を防げる可能性があります。この記事では、椎間板ヘルニアについて以下の内容を解説します。
- 椎間板ヘルニアでやってはいけない動作3つ
- 日常生活における注意すべき習慣3つ
- 症状悪化を予防する日常生活のポイント
椎間板ヘルニアでお悩みの方や将来の予防に関心のある方は、ぜひ参考にしてください。正しい知識を身につけて、腰の健康を守りましょう。
当院では、椎間板ヘルニアをはじめとした整形外科疾患に加え、自己脂肪由来幹細胞を活用した再生医療にも積極的に取り組んでおります。手術を避けたい方や、長年痛みに悩まされている方にとって新たな選択肢となるよう、最先端の治療をご提案しています。
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目次
椎間板ヘルニアでやってはいけない動作3つ
椎間板ヘルニアは、背骨の間にあるクッション材である椎間板の一部が飛び出し、神経を圧迫することで腰や足に痛みやしびれを引き起こす病気です。椎間板ヘルニアでやってはいけない動作は以下のとおりです。
- 無理に重い物を持ち上げる
- 長時間同じ姿勢を続ける
- 突然体をひねる
無理に重い物を持ち上げる
重い物を持ち上げるとき、腰には想像以上の負担がかかります。前かがみになって持ち上げるのは、椎間板への圧力を急激に高め、ヘルニアを悪化させる要因となります。
犬の胸腰椎間板突出症の診断と治療に関する研究では、不適切な負荷が症状を悪化させる可能性があると示唆されています。犬は人間とは体の構造が違いますが、椎間板にかかる負担については参考になる点もあります。重い物を持ち上げる際の姿勢に注意することの重要性が考えられます。
重い物を持ち上げるときのポイントは「腰を守る」ことです。正しい動作の順序は以下のとおりです。
- 持ち上げる前に物に近づき、足を肩幅程度に開きます。持ち上げる際にバランスがとりやすくなります。
- 膝を曲げ、腰をまっすぐに保ち、持ち上げる物をできる限り体の中心に寄せます。物体と体の距離が近いほど、腰への負担は軽減されます。
- 持ち上げるときは、お尻や太ももの筋肉を使い、ゆっくりと立ち上がります。腰をひねったり、急に立ち上がったりすると、椎間板に急激な負荷がかかり、損傷しやすくなるため避けましょう。
- 重すぎる物は、無理せず誰かに手伝ってもらうか、台車などを利用しましょう。自分の限界を理解し、無理をしないことが大切です。
長時間同じ姿勢を続ける
長時間同じ姿勢を続けることは、椎間板ヘルニアの大敵です。デスクワークや車の運転など、長時間座りっぱなしの姿勢は、腰への負担を増大させ、ヘルニアを悪化させる可能性があります。長時間椅子に座っていると、椎間板に持続的な圧力がかかり続け、椎間板内の水分が偏り、椎間板の弾力性が低下します。
30分〜1時間ごとに立ち上がり、軽いストレッチや散歩をしたり、姿勢を変えたりするなど、こまめに体を動かす習慣を身につけましょう。座るときは、背もたれに寄りかかりすぎず、骨盤を立てて背筋を伸ばし、正しい姿勢を意識することが大切です。クッションやサポート器具などを活用するのもおすすめです。
突然体をひねる
スポーツや日常生活で、急に体をひねる動作は、椎間板に大きなストレスを与えます。ゴルフのスイングや野球のバッティングのように、勢いよく体をひねる動作は、椎間板に瞬間的に大きな力が加わり、損傷のリスクを高めます。
体をひねる必要がある場合は、ゆっくりと動作を行い、腰をひねりすぎないように注意しましょう。スポーツをする際は、十分な準備運動を行い、急な動きを避けましょう。
日常生活で注意すべき習慣3つ
椎間板ヘルニアは、日常生活の何気ない習慣が原因で悪化してしまうことがあります。放っておくと、痛みが強くなったり、しびれが広がったり、日常生活に支障をきたすこともあります。椎間板ヘルニアを悪化させないために、日常生活で注意すべき習慣は以下のとおりです。
- 運動不足
- 不適切な寝具
- ストレス管理の欠如
運動不足
適度な運動は、椎間板ヘルニアの予防・改善に役立つと考えられています。運動不足になると、腹筋や背筋などの体幹を支える筋肉が衰えてしまいます。背骨を支える力が弱くなり、椎間板への負担が増加し、ヘルニアが悪化しやすくなります。
同じ体重の方でも、筋肉量の多い方と少ない方では、椎間板への負担が大きく異なります。筋肉がしっかりしていれば、椎間板にかかる負担を分散し、衝撃を吸収できます。筋肉が弱いと、椎間板に負担が集中し、損傷しやすくなります。適度な運動には、以下の効果があります。
- 血行促進:筋肉や神経への栄養供給が改善され、痛みやしびれの軽減につながりやすい
- 体幹の安定性向上:姿勢が良くなり、椎間板への負担を分散できる
- 柔軟性向上:関節の可動域が広がり、動きやすくなる
ウォーキングや水泳、水中ウォーキングなどの、背骨に負担の少ない有酸素運動がおすすめです。ウォーキングは、1日30分程度を目標に、自分のペースで続けましょう。水泳は、浮力によって腰への負担が軽減されるため、痛みがある方でも比較的楽に行うことができます。
以下の記事では、椎間板ヘルニアによる痛みを和らげるための具体的な対策や、即効性が期待できるケア方法を詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアの痛みを和らげる方法と即効性が期待できる対策
不適切な寝具
寝具が体に合っていないと、睡眠中に負担がかかり、椎間板ヘルニアを悪化させる可能性があります。柔らかすぎるマットレスは、体が沈み込みすぎて背骨が歪んでしまうことがあります。硬すぎるマットレスは、体圧が一点に集中し、痛みを悪化させる可能性があります。
適切な寝具を選ぶことで、睡眠の質を高め、ヘルニアの悪化を防ぐことが期待できます。自分に合った寝具を選ぶためには、以下の点に注意しましょう。
寝具の種類 | 選ぶポイント |
マットレス | ・適度な硬さで、体が沈み込みすぎないもの ・腰の部分がしっかりと支えられるもの ・自然なS字カーブを維持できるマットレス |
枕 | ・高すぎず低すぎず、首が自然なカーブを描く高さの枕 ・首や肩に負担がかからない枕 |
ベッド | 寝返りがしやすい広さのあるベッド ※寝返りは、体の圧迫を分散し、血行を促進するうえで重要な役割を果たします。 |
仰向けで寝る場合は、膝の下にクッションやタオルケットなどを挟むと、腰の負担を軽減できます。横向きで寝る場合は、抱き枕を使うと、背骨がまっすぐになり、楽に寝ることができます。
ストレス管理の欠如
ストレスは、自律神経のバランスに影響を与え、筋肉の緊張や血行不良を引き起こす要因となります。慢性的なストレスは、交感神経を優位にし、筋肉の緊張を高めることで血流を悪化させ、椎間板への栄養供給を妨げる可能性があります。ヘルニアの修復が遅れるだけでなく、痛みを感じやすくなることも考えられます。
ストレスを軽減するためには、以下の方法が効果的です。
ストレス対策 | 方法 | 効果やポイント |
適度な運動 | ウォーキング、ヨガなどの軽い運動 | ストレスホルモンの分泌抑制、リラックス効果 |
十分な睡眠 | 同じ時間の就寝・起床、寝る前のカフェイン摂取を避ける | 睡眠不足はストレス増大の要因、規則正しい睡眠習慣が重要 |
趣味・リラックス活動 | 読書、音楽鑑賞、ガーデニングなど | 好きなことに没頭することでストレス発散、自分が楽しめる活動を見つける |
呼吸法 | 腹式呼吸を意識したゆっくりとした深い呼吸 | リラックス効果を高める |
カウンセリング | 専門家による相談 | ストレスの原因探索と効果的な対処法を学べる |
症状悪化を予防する日常生活のポイント
正しい姿勢や動作を意識することで、症状の悪化を防ぎ快適な日常生活を送ることが期待できます。椎間板ヘルニアの症状悪化を予防する日常生活のポイントとして、以下が挙げられます。
- 良い姿勢の定義
- 立ち方
- 歩き方
- 座り方
- ストレッチ
良い姿勢の定義
良い姿勢を心がけることで、椎間板への負担を軽減し、ヘルニアの悪化リスクを減らせる可能性があります。「良い姿勢のポイント」は以下のとおりです。
- 耳や肩、腰、くるぶしが一直線上にある
- お腹に軽く力を入れる
- あごを引く
- 胸を張る
腰に負担がかかりやすい猫背などの姿勢は、椎間板に負担をかけやすいため、注意してください。
立ち方
何気なく立っているときでも、椎間板に負担がかかっています。長時間の立ち仕事や間違った立ち方を続けると、負担は大きくなり、症状悪化につながりやすいです。長時間立っている際に腰が痛くなる方は、自分の立ち方を見直してみましょう。椎間板ヘルニアの悪化を防ぐための正しい立ち方は以下のとおりです。
- 足を肩幅に開く
- つま先を少し外側に向ける
- 良い姿勢を保つ
「良い姿勢のポイント」を意識し、耳や肩、腰、くるぶしが一直線上にあるように心がけましょう。
歩き方
歩くことは、健康維持に欠かせない運動ですが、歩き方が悪いと、かえって腰に負担をかけてしまうことがあります。正しい歩き方を身につけることで、腰への負担を軽減し、椎間板ヘルニアの悪化を防ぐことができます。椎間板ヘルニアの悪化を防ぐための正しい歩き方は以下のとおりです。
- 歩幅を大きくする:自然と背筋が伸び、良い姿勢を維持しやすくなる
- かかとから着地する:足への衝撃を吸収し、腰への負担を軽減できる
- 腕を大きく振る:体全体のバランスが良くなり、歩きやすくなる
後ろ足の蹴り出しを意識すると、自然と歩幅が広がります。スニーカーを選ぶ際は、クッション性の高いものを選ぶことをおすすめします。
座り方
現代人は、デスクワークなどで長時間座っていることが多く、知らず知らずのうちに腰に大きな負担をかけています。ソファに浅く座る姿勢や、足を組む癖は腰への負担を増大させ、椎間板ヘルニアを悪化させる可能性があるので注意が必要です。椎間板ヘルニアの悪化を防ぐための正しい座り方は以下のとおりです。
- 椅子に深く腰掛ける
- 足を床につける
- こまめに休憩する
背もたれに背中をつけることで、腰が支えられて負担を軽減できます。足が宙ぶらりんの状態だと、腰に負担がかかりやすいため、注意しましょう。足が床につかない場合、足台を使うなどして調整してください。
長時間同じ姿勢で座り続けると、腰への負担が蓄積されます。1時間に1回程度は立ち上がって軽いストレッチなどを行い、筋肉の緊張をほぐしましょう。
ストレッチ
ストレッチは、筋肉の柔軟性を高め、血行を促進する効果があります。適切なストレッチを行うことで、腰の筋肉の緊張を和らげ、椎間板ヘルニアの症状緩和に役立つ場合があります。椎間板ヘルニアに効果的なストレッチは以下のとおりです。
- 膝を抱えるストレッチ:仰向けに寝て両膝を抱え込み、胸に近づけることで腰の筋肉を伸ばす
- 腰回しストレッチ:両足を肩幅に開いて立ち、腰をゆっくりと回すことで腰周りの筋肉をほぐす
- ハムストリングスのストレッチ:椅子に座って片足を伸ばし、上体を前に倒すことで、太ももの裏側の筋肉を伸ばす
痛みを感じるほどの無理なストレッチは逆効果になる場合があるので、自分の体調に合わせて行うことが重要です。自己流で行うのではなく、医師や理学療法士に相談してから行うようにしましょう。
以下の記事では、椎間板ヘルニアの痛みをやわらげるために効果的とされるストレッチを詳しく解説しています。自宅で無理なく実践できる方法を知りたい方は、ぜひチェックしてみてください。
>>椎間板ヘルニアの改善が期待できるストレッチ!自宅でできる痛み軽減法
まとめ
椎間板ヘルニアは、正しい知識を持ち、適切な対策を講じることで、症状の悪化を防ぐことが期待できます。やってはいけない動作は以下のとおりです。
- 無理に重い物を持ち上げる
- 長時間同じ姿勢を続ける
- 突然体をひねる
運動不足や不適切な寝具、ストレスの蓄積も椎間板への負担を増大させ、症状を悪化させる要因となります。良い姿勢や正しい立ち方、歩き方、座り方、適切なストレッチを心がけましょう。日々の生活習慣を見直すことで、椎間板ヘルニアの症状悪化リスクを軽減できる可能性があります。
個々の症状や状態は異なります。痛みやしびれがある場合は、自己判断せず、医師や専門家の診断・指導を受けることをおすすめします。ご自身の状態に合わせた適切なケアで、健康な毎日を取り戻しましょう。
以下の記事では、椎間板ヘルニアの初期に現れるサインや、見逃さないためのチェックポイントについて詳しく解説しています。早期発見のために、ぜひ確認してみてください。
>>椎間板ヘルニアの初期症状と見逃せないサイン!早期発見のポイント
参考文献
Natasha J Olby, Sarah A Moore, Brigitte Brisson, Joe Fenn, Thomas Flegel, Gregg Kortz, Melissa Lewis, Andrea Tipold. ACVIM consensus statement on diagnosis and management of acute canine thoracolumbar intervertebral disc extrusion. J Vet Intern Med, 2022 Sep;36(5):1570-1596.
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