椎間板ヘルニアは何科を受診すべき?専門医の選び方と受診目安について

椎間板ヘルニアは何科を受診すべき?専門医の選び方と受診目安について
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腰の痛みはただの腰痛ではなく、椎間板ヘルニアの可能性があります。「ただの腰痛」と安易に考えて椎間板ヘルニアを放置すると、日常生活に大きな支障をきたす可能性があるため注意が必要です。椎間板ヘルニアを改善するには、適切な病院への受診が欠かせません。

腰が痛いときは、整形外科や脳神経外科などを受診します。この記事では、適切な診療科の選び方や専門医を選ぶポイント、椎間板ヘルニアの受診目安を解説します。早期発見・早期治療のために、正しい知識を身につけましょう。

椎間板ヘルニアは初期段階での気づきが重要です。軽い違和感やしびれを見逃してしまうと、悪化するリスクが高まります。以下の記事では、椎間板ヘルニアの初期症状や見逃しやすいサイン、早期発見のためのポイントについて詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアの初期症状と見逃せないサイン!早期発見のポイント

椎間板ヘルニアで受診すべき診療科

椎間板ヘルニアで受診すべき診療科を、以下の項目に沿って解説します。

  • 整形外科でできること
  • 脳神経外科の特徴
  • 脊椎外科の専門性
  • ペインクリニックの役割
  • 各診療科の選び方

整形外科でできること

整形外科は、骨や関節、筋肉などの運動器の疾患を幅広く扱う診療科です。椎間板ヘルニアにおいては、主に保存療法と呼ばれる、手術をしない治療を行います。保存療法の種類は以下のとおりです。

  • 薬物療法
  • 理学療法
  • 装具療法

薬物療法では、痛みや炎症を抑える薬を服用します。痛み止めには、ロキソニンなどの消炎鎮痛剤や、神経の痛みを抑えるプレガバリンなどが用いられます。

理学療法は、ストレッチや筋力トレーニングなどを行い、身体の機能改善を目指す方法です。理学療法士による指導のもと、正しい姿勢や身体の動かし方を学ぶことで、再発予防にもつながります。

装具療法は、コルセットなどを用いて患部を固定し、安静を保つ方法です。コルセットは、腰への負担を軽減し、痛みを和らげる効果が期待できます。

コルセットとあわせて意識したいのが、痛みを軽減するための姿勢の工夫やストレッチ法です。無理なく取り入れられる方法を知っておくことで、日常生活の負担を減らすことができます。
>>椎間板ヘルニアの痛みを和らげる姿勢と効果が期待できるストレッチ法を紹介

脳神経外科の特徴

脳神経外科は、脳や脊髄、神経などに関わる疾患を専門的に扱う診療科です。椎間板ヘルニアの場合、脊髄神経が圧迫されることで、強い痛みやしびれ、麻痺などの症状が現れることがあります。神経症状が強い場合や、保存療法で効果が見られない場合、手術が必要です。

脳神経外科では、顕微鏡手術や内視鏡手術などの高度な技術を用いて、椎間板ヘルニアの手術を行います。顕微鏡手術は、手術部位を拡大して確認しながら行うため、より精密な操作が可能です。内視鏡手術は、小さな切開で行うため、身体への負担が少なく、術後の回復も早いというメリットがあります。

脊椎外科の専門性

脊椎外科は、背骨全体の疾患を専門的に扱う診療科です。整形外科や脳神経外科でも脊椎の疾患を扱いますが、脊椎外科はより専門性の高い知識と技術を有しているのが特徴です。複雑な椎間板ヘルニアや、他の脊椎疾患を合併している場合などは、脊椎外科での治療が適している場合があります。

脊椎外科医は、豊富な経験と専門知識にもとづき、患者さん一人ひとりに最適な治療法の提案が可能です。近年では、低侵襲手術と呼ばれる、身体への負担が少ない手術方法も開発されており、患者さんのQOL(生活の質)向上に貢献しています。

ペインクリニックの役割

ペインクリニックは、痛みを専門的に治療する診療科です。椎間板ヘルニアによる痛みは、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。痛みが慢性化すると、仕事や家事、趣味など、あらゆる活動に制限がかかり、精神的な負担も大きくなるため注意が必要です。

ペインクリニックでは、神経ブロック注射や薬物療法など、痛みの緩和が期待できる治療を行います。神経ブロック注射は、痛みを感じている神経に直接薬剤を注射することで、痛みの伝達を一時的に抑える遮断する治療法です。保存療法や手術療法で痛みが十分に改善しない場合や、慢性的な痛みに悩まされている場合、ペインクリニックの受診を検討しましょう。

各診療科の選び方

椎間板ヘルニアでどの診療科を受診すべきかは、症状の程度や治療方針によって異なります。腰の痛みがある場合は、最初に整形外科を受診しましょう。整形外科の診断にもとづいて、脳神経外科や脊椎外科を受診します。慢性的な痛みに悩む場合は、ペインクリニックを受診してください。

それぞれの診療科の専門性や特徴を理解し、ご自身の症状や希望に合った医療機関を選ぶことが大切です。セカンドオピニオンを活用することも、治療方針を決めるうえで有効な手段となります。複数の医師の意見を聞き、納得のいく治療法を選択しましょう。

椎間板ヘルニアの専門医の選び方5つのポイント

椎間板ヘルニアの専門医を選ぶ5つのポイントは以下のとおりです。

  • 専門医の資格と経験患者
  • 具体的な治療方針と実績
  • 病院の設備とアクセス
  • 患者の口コミ、評判
  • セカンドオピニオンの推奨

専門医の資格と経験

椎間板ヘルニアの専門医を選ぶ際に、最初に確認したいのは医師の資格と経験です。「脊椎脊髄病医」や「脳神経外科専門医」といった資格は、専門的な知識と技術を有していることの証です。専門的な資格に加え、医師の経歴や専門分野、得意とする治療法なども確認することで、より安心して治療を任せられます。

低侵襲手術に長けた医師、保存療法に注力している医師など、医師によって専門性はさまざまです。ご自身の症状や希望に合った専門医を選びましょう。多くの症例を経験している医師の場合、複雑な症例でも適切な治療を行える可能性が高まります。HPなどで、医師の経歴や専門分野、得意な治療法、症例数などを確認しましょう。

具体的な治療方針と実績

医師の治療方針と実績も、専門医選びにおいて重要なポイントです。椎間板ヘルニアの治療は、保存療法から手術療法まで幅広く存在し、どの治療が適しているかは、症状の重さや患者さんの生活背景によって異なります。

「できるだけ手術を回避したい」という希望がある場合には、保存療法を積極的に取り入れている医師を選ぶことで、納得のいく治療が受けやすいです。早期の改善を目指す場合は、最小侵襲手術(MIS:Minimally Invasive Surgery)や内視鏡手術などに精通した医師を選ぶことで、早期回復が期待できるケースもあります。

治療実績については、単に「手術件数が多い」だけではなく、どのような手術法に対応しているか、合併症の有無や術後の回復状況といった情報も参考になります。術後リハビリや再発防止にどのような取り組みをしているかといった、術後ケアの体制も見逃せないポイントです。

病院の設備とアクセス

病院の設備も重要な要素です。椎間板ヘルニアの診断にはMRI検査が不可欠ですが、MRI装置の性能は病院によって異なります。高性能なMRI装置は、より精度の高い画像を提供し、正確な診断につながります。

手術が必要な場合は、手術室の設備や入院施設なども確認しましょう。最新設備が整っている病院であれば、より安全で効果的な治療が期待できます。

通院のしやすさも重要です。自宅や職場から近い病院、公共交通機関でのアクセスが良い病院を選ぶことで、通院の負担を軽減できます。治療は一度で終わることは少なく、複数回にわたる通院が必要となるケースが多いため、無理なく通院できる病院を選ぶことがおすすめです。

患者の口コミ、評判

他の患者さんの口コミや評判は、病院選びの参考になります。インターネット上の口コミサイトや医療情報サイトなどで、病院の雰囲気や医師の対応、治療の効果などを調べましょう。良い口コミだけでなく、悪い口コミも確認することで、病院の全体像を把握できます。

口コミはあくまでも主観的な意見であるため、参考程度にとどめ、最終的な判断はご自身で行うことが重要です。複数の口コミを比較検討し、客観的な情報を得るように努めましょう。

セカンドオピニオンの推奨

セカンドオピニオンとは、現在受けている治療について、他の医師の意見を聞くことです。セカンドオピニオンを受けることで、新たな視点が見つかったり、治療の選択肢が広がったりする可能性があります。椎間板ヘルニアの治療法は多岐にわたるため、症状に合った治療法を選ぶことが重要です。

複数の医師の意見を聞くことで、適切な治療を選択できる可能性が高まります。セカンドオピニオンは、治療方針に迷ったときや、より良い治療法を探したいとき、納得のいく治療を受けたいときに有効な手段となります。

椎間板ヘルニアの受診目安

椎間板ヘルニアの受診目安は以下のとおりです。

  • 症状が1週間以上続く場合
  • 下肢のしびれや麻痺
  • 排尿障害や排便障害

症状が1週間以上続く場合

腰痛や下肢の痛み、しびれなどの症状が1週間以上続く場合は、早めに病院を受診しましょう。数週間程度で自然に治癒するという研究もありますが、不安な場合は早めの受診がおすすめです。痛みが強くなったり、しびれが広がってきたりする場合は、早急な受診が必要です。

受診が遅れると、症状が悪化し、治療に時間がかかる可能性もあります。漫然と様子を見続けるよりも、専門家の意見を聞くことで、安心して適切な対応ができる点もメリットです。

医療機関では、問診や診察、必要に応じて画像検査(レントゲン、MRIなど)を行い、正確な診断を行います。MRI検査は、椎間板の状態を詳細に確認できるため、ヘルニアの診断に多く用いられています。

以下の記事では、椎間板ヘルニアの診断に使われる検査方法の違いや特徴について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアはレントゲンで見える?検査法の違いと特徴を解説

下肢のしびれや麻痺

下肢のしびれや麻痺がある場合は、早急に医療機関を受診しましょう。椎間板ヘルニアによって神経が圧迫されると、腰痛だけでなく、下肢のしびれや麻痺といった神経症状が現れることがあります。しびれや麻痺は、神経の圧迫が進行しているサインです。

しびれは、軽いチクチクとした感覚から、焼けるような痛み、あるいは強い痛みを伴うものまで、さまざまです。麻痺は、足に力が入りにくくなったり、歩行が困難になったりするなど、日常生活に大きな影響を及ぼします。下肢の筋力低下が認められる場合は、特に緊急性の高い状態です。

放置すると、後遺症が残る可能性もあるため、一刻も早い受診が必要です。医療機関では、神経学的検査を行い、筋力や感覚の程度を評価します。検査結果にもとづいて、適切な治療方針が決定されます。

ヘルニアを気にしている方の中には「椎間板ヘルニアは一生治らないのでは?」と不安に思う方も多いかもしれません。実際には多くの治療法が進化しており、回復の可能性も十分にあります。以下のページに記載している最新の治療情報を知っておくことで、前向きな選択ができるようになります。
>>椎間板ヘルニアは一生治らない?最新治療と回復の可能性

排尿障害や排便障害

椎間板ヘルニアが進行すると、まれに排尿や排便に障害が現れることがあります。具体的な症状は以下のとおりです。

  • 尿が出にくい
  • 尿意を感じにくい
  • 尿失禁
  • 便が出にくい
  • 便秘

排尿障害や排便障害は、ヘルニアによって脊髄神経が圧迫され、膀胱や直腸の機能に影響を及ぼしていることが原因です。排尿・排便障害は、椎間板ヘルニアの中でも重症のケースであり、緊急性の高い状態です。症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診するか、救急車を呼ぶなど、一刻も早い対応が必要です。

まとめ

椎間板ヘルニアの治療は、整形外科や脳神経外科、脊椎外科、ペインクリニックなど、さまざまな診療科が関わります。症状や希望に合った診療科・専門医を選ぶことが、早期回復に欠かせません。腰の痛みを感じた場合は、最初に整形外科を受診し、必要に応じて他の診療科へ紹介してもらうとスムーズです。

専門医を選ぶ際は、資格や経験、治療方針、病院の設備、口コミなどを参考にしましょう。セカンドオピニオンも有効な手段です。腰痛やしびれが1週間以上続く場合、下肢のしびれや麻痺、排尿・排便障害がある場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。早期発見、早期治療が、快適な日常生活を取り戻す鍵です。

少しでも不安を感じたら、ためらわず専門医に相談してください。

以下の記事では、椎間板ヘルニアの症状を悪化させないために、日常生活で注意すべき動作や習慣について詳しく解説しています。知らずにやってしまいがちなNG行動をチェックして、悪化を防ぎましょう。
>>椎間板ヘルニアでやってはいけないこと!悪化を防ぐ注意点

参考文献

Alexander M. Dydyk, Ruben Ngnitewe Massa, Fassil B. Mesfin. Disc Herniation. StatPearls, 2025.

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