最近、腰や脚に違和感を覚えていませんか?若い女性の間で椎間板ヘルニアが増えています。椎間板ヘルニアは、背骨のクッション材である椎間板が変形・突出することで神経を圧迫し、激しい痛みやしびれを引き起こす疾患です。放っておくと日常生活にも支障をきたす可能性があります。
この記事では、若い女性に多い椎間板ヘルニアの5つの原因と、効果的な対処法、再発を防ぐための予防策を解説します。今の生活習慣の見直しに役立つ情報をお届けします。腰や脚に違和感がある方は参考にしてください。
目次
若い女性に増えている椎間板ヘルニアの原因5選
若い女性に椎間板ヘルニアが増えている5つの原因は以下のとおりです。
- デスクワークによる姿勢の悪化
- スマートフォンの長時間使用
- 運動不足による筋力低下
- 間違ったダイエット
- 女性ホルモンの影響
デスクワークによる姿勢の悪化
猫背などの姿勢の悪化は、腰の負担を大きくするため、椎間板ヘルニアの原因です。人間の背骨は、S字カーブを描くことで、体重を分散して衝撃を吸収します。しかし、猫背の状態では、S字カーブが崩れ、特定の椎間板に負担が集中します。一点に負担が集中し続けると、椎間板が変形しやすくなり、ヘルニアへと進行するため注意が必要です。
正しい姿勢を保つためには、以下のポイントを意識しましょう。
- 椅子に深く座る
- 背もたれを使う
- 足の裏全体を床につける
- モニターは目線の高さかやや下に設置する
- キーボードとマウスは体に近い位置に置く
1時間ごとに立ち上がって軽いストレッチをするのも効果的です。こまめな休憩と正しい姿勢を意識することで、椎間板への負担を軽減し、ヘルニアの予防につなげましょう。
さらに、痛みが出ている場合には、負担を減らすための姿勢やストレッチを知っておくと安心です。以下の記事では、椎間板ヘルニアの痛みを和らげるための具体的な姿勢や、自宅でできるストレッチ法を紹介しています。
>>椎間板ヘルニアの痛みを和らげる姿勢と効果が期待できるストレッチ法を紹介
スマートフォンの長時間使用
スマートフォンを長時間使う際は、下を向いたままになりがちです。下を向く姿勢も、デスクワークと同様に、椎間板に大きな負担をかけ、ヘルニアの原因になります。成人の頭の重さは、平均で約4〜6kgです。まっすぐ前を向いているときは、頭を背骨全体で支えられますが、下を向くと、首や腰に大きな負担がかかります。
下を向く角度が大きくなるほど、首や腰にかかる負担は増加し、椎間板への負担も大きくなります。スマートフォンを長時間使用する際は、こまめに休憩を入れる、できるだけ目線の高さでスマートフォンを持つなどの工夫をしましょう。
運動不足による筋力低下
運動不足で腹筋や背筋などの体幹が弱くなると、腰椎を支える力が弱まり、椎間板への負担が増加します。特に女性は男性に比べて筋力が弱いため、意識的に筋力トレーニングを行うことが大切です。
体幹は、体の軸となる筋肉群で、姿勢を維持したり、体を動かしたりする際に重要な役割を果たします。体幹が弱いと姿勢が崩れやすく、腰椎への負担が増大し、椎間板ヘルニアのリスクが高まるため注意が必要です。
体幹を鍛えることで、腰への負担を軽減し、椎間板ヘルニアの予防が期待できます。ウォーキングや水泳、ヨガ、無理なく続けられる運動を見つけ、習慣づけていきましょう。
ただし、椎間板ヘルニアの症状は人によって異なり、進行度によって対処法も変わってきます。現在の症状がどのレベルに当たるのかを理解し、適切な対策を取ることが、悪化を防ぐ第一歩です。以下の記事では、症状レベル別の特徴と対処法について詳しく解説しています。
>>腰椎椎間板ヘルニア症状のレベル別特徴と対処法
間違ったダイエット
極端な食事制限などの間違ったダイエットは、椎間板や筋肉、骨の健康を損ない、ヘルニアのリスクを高める一因です。椎間板は、主に水分とコラーゲンなどのタンパク質で構成されています。栄養不足になると、成分の合成が阻害され、椎間板の弾力性が低下し、変形しやすくなってしまいます。
バランスの良い食事を摂ることは、椎間板ヘルニアの予防だけでなく、健康な体を維持するためにも重要です。カルシウムやビタミンD、タンパク質は、骨や筋肉の健康維持に不可欠な栄養素です。栄養素をバランス良く摂取することで、椎間板ヘルニアのリスクを軽減できます。
女性ホルモンの影響
女性ホルモン、特にエストロゲンは、骨密度を維持する役割を担っており、椎間板の健康に大きな影響を与えています。エストロゲンは、骨を壊す働きを持つ細胞の活動を抑制することで、骨密度を維持するホルモンです。
女性は閉経を迎えるとエストロゲンの分泌量が急激に減少するため、骨密度が低下しやすくなり、骨粗鬆症のリスクが高まります。骨粗鬆症になると、骨がもろくなり、骨折しやすくなるだけでなく、椎間板ヘルニアのリスクも高まります。
妊娠中は、リラキシンというホルモンの影響で靭帯が緩みやすくなります。出産をスムーズにするための体の自然な変化ですが、同時に腰椎の安定性も低下させるため、椎間板ヘルニアのリスクを高める可能性があります。妊娠中は、無理な運動や重いものを持つことは避けましょう。産後は骨盤ベルトなどで腰をサポートすることも有効です。
椎間板ヘルニアへの効果が期待できる対処法
椎間板ヘルニアへの効果が期待できる対処法は以下のとおりです。
- 薬物療法(鎮痛剤、筋弛緩剤など)
- 理学療法(ストレッチ、運動療法など)
- 神経ブロック注射
- 手術療法(保存療法で効果がない場合)
薬物療法(鎮痛剤、筋弛緩剤など)
薬物療法は、炎症や痛みを抑え、症状を緩和するための治療法です。特に、痛みが強い急性期に多く用いられます。代表的な薬は以下のとおりです。
- 鎮痛剤:痛みを和らげる薬
- 筋弛緩剤:筋肉の緊張を和らげる薬
- 神経障害性疼痛治療薬:神経の圧迫による痛みやしびれを和らげる薬
医師が患者さんの症状に合わせて適切な薬を処方します。自己判断で服用を中止したり、服用量を変えたりすることは危険です。少しでも気になることがあれば、医師への相談をおすすめします。薬物療法は対症療法であり、ヘルニアそのものを治す治療ではないことに注意が必要です。
とはいえ「椎間板ヘルニアは治らない」と悲観する必要はありません。現在では、さまざまな治療法が進化しており、症状の改善や回復を目指すことは十分可能です。以下の記事では、最新の治療法や回復の可能性について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアは一生治らない?最新治療と回復の可能性
理学療法(ストレッチ、運動療法など)
理学療法は、体を動かすことで痛みを軽減し、機能回復を目指す治療法です。ストレッチや運動療法、マッサージなど、さまざまな方法があります。ストレッチは、筋肉の柔軟性を高め、血行を促進することで、痛みを和らげます。入浴後など、体が温まっているときに行うとより効果的です。
運動療法は、腹筋や背筋などの体幹を鍛えることで、腰への負担を軽減し、再発を予防します。正しいフォームで行うことが重要なので、理学療法士の指導を受けながら行ってください。マッサージは筋肉の緊張を和らげる効果が期待できます。
理学療法は、専門家である理学療法士の指導のもとで行うことが大切です。痛みが強いときは無理せず、自分のペースで進めていきましょう。2022年に発表されたリハビリテーション医学のガイドラインでも、理学療法の有効性が示されています。
神経ブロック注射
神経ブロック注射は、痛みの原因となっている神経に直接薬を注射する治療法です。局所麻酔薬やステロイドなどが用いられます。局所麻酔薬は痛みを感じにくくする薬で、即効性があるため痛みが強いときに効果を発揮します。ステロイドは炎症を抑える薬です。神経の炎症が原因の痛みに特に効果が期待できます。
神経ブロック注射は、痛みの原因となっている神経にピンポイントで薬を届けることができるため、高い効果が期待できます。効果の持続期間には個人差があり、効果が切れると再び痛みが戻ることもあります。神経ブロック注射は一時的な痛みの緩和を目的とした治療であり、ヘルニアそのものを治す治療ではありません。
手術療法(保存療法で効果がない場合)
保存療法(薬物療法、理学療法など)で十分な効果が得られない場合、手術療法が検討されます。神経障害が進行している場合や、日常生活に著しい支障が出ている場合は、手術が必要なケースも多いです。手術には、ヘルニアの部分を取り除く方法など、いくつかの種類があります。医師とよく相談し、自分に合った手術法を選ぶことが重要です。
椎間板ヘルニアの予防と再発防止策
椎間板ヘルニアは、再発しやすい病気です。ヘルニアの予防と再発防止策を5つ解説します。
- 正しい姿勢を保つ
- 適度な運動を習慣化する
- バランスの良い食事を摂る
- 体重管理を心がける
- 禁煙する
正しい姿勢を保つ
正しい姿勢を保つことは、椎間板ヘルニアの予防と再発防止の第一歩です。正しい姿勢を意識するのは、立っているときや座っているとき、物を持つときなど、あらゆる場面で重要です。立っているときは、耳・肩・腰・くるぶしが一直線になるように意識しましょう。鏡を見ながらチェックするとわかりやすいです。
座っているときは、椅子に深く座り、背もたれを活用しましょう。物を持つときは、必ず膝を曲げ、腰を落としてから持ち上げてください。長時間同じ姿勢にならないよう、こまめに休憩を挟むことも大切です。
適度な運動を習慣化する
適度な運動は、腰回りの筋肉を鍛え、椎間板への負担を軽減するだけでなく、血行促進や体の柔軟性向上にも効果が期待できます。ウォーキングや水泳、ヨガ、ピラティスなどは、腰への負担が少なく、無理なく続けられるためおすすめです。
運動を始める前には、必ず準備運動をして、無理のない範囲で行いましょう。運動中に痛みが出た場合は、すぐに運動を中止し、医師や理学療法士に相談してください。
バランスの良い食事を摂る
バランスの良い食事を摂ることは、コラーゲンなどの合成を促し、椎間板の弾力性を維持するために不可欠です。骨や筋肉の健康維持に欠かせないカルシウム、タンパク質、ビタミンDは積極的に摂るように心がけましょう。それぞれの栄養素に含まれる食品の例は以下のとおりです。
- カルシウム:牛乳やヨーグルト、チーズ、小魚、大豆製品など
- タンパク質:肉や魚、卵、大豆製品など
- ビタミンD:魚、きのこ類など
偏った食事や過度なダイエットは、栄養不足を招き、椎間板の健康を損なう可能性がありますので、バランスの良い食事を心がけましょう。
体重管理を心がける
体重が増加すると、腰への負担も増して、椎間板へ悪影響を及ぼします。適正体重を維持することは、椎間板ヘルニアの予防と再発防止に直結します。食事の量や内容を見直し、適度な運動を習慣化することで、体重管理を行いましょう。毎日体重を測ることで、体重の増加に気づきやすくなり、体重管理がしやすくなります。
禁煙する
喫煙は、血管を収縮させ、血流を悪化させるため、椎間板への栄養供給を阻害し、椎間板の変性を促進させる原因になります。禁煙は全身の健康を保つために欠かせません。禁煙は難しいですが、周りの人に相談したり、禁煙外来を受診したりするなど、自分に合った方法で禁煙に取り組んでください。
まずは喫煙の本数を減らすなど、できることから始めましょう。
まとめ
椎間板ヘルニアは、若い女性でも増えており、日常生活の何気ない行動が原因のケースが多いです。長時間のパソコン作業やスマートフォンの使用、運動不足、間違ったダイエット、女性ホルモンの影響などは椎間板ヘルニアの原因になります。
椎間板ヘルニアの治療には、薬物療法や理学療法、神経ブロック注射、手術が用いられます。自分に合った治療を医師と相談することが重要です。椎間板ヘルニアの予防には、正しい姿勢や適度な運動など、日々の習慣の見直しも欠かせません。
椎間板ヘルニアは、放置すると日常生活に支障をきたす可能性もあります。少しでも気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
近年は若年層でも椎間板ヘルニアの発症が増えており、背景には生活習慣の変化が関係しています。以下の記事では、若い人に多い原因や初期に見落とされやすいサインや対策を紹介しています。
>>若い人の椎間板ヘルニアに多い原因とは?見逃されがちな初期サインと対策
参考文献
Basic Research and Transformation Society, Professional Committee of Spine and Spinal Cord, Chinese Association of Rehabilitation Medicine. Guideline for diagnosis, treatment and rehabilitation of lumbar disc herniation. Zhonghua Wai Ke Za Zhi, 2022, 60(5), p.401-408.
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