椎間板ヘルニアの手術後、日常生活への復帰や再発防止について不安を抱えていませんか?手術は痛みの原因を取り除く第一歩です。手術後の生活やリハビリ、日常生活の意識がヘルニアの回復の鍵になります。
この記事では、手術後の生活で注意すべき点やリハビリの方法、再発を防ぐための生活習慣を解説します。腰の健康を守るには、手術後の適切なケアが欠かせません。記事の内容を参考に、快適な生活を送る一歩を踏み出しましょう。
目次
椎間板ヘルニア手術後の日常生活での注意点
椎間板ヘルニア手術後の日常生活での注意点を、以下の項目に沿って解説します。
- 姿勢や動作で気をつけるポイント
- 傷のケアと感染予防
姿勢・動作で気をつけるポイント
手術後は日常生活での姿勢や動作に注意が必要です。腰への負担を軽減するために、以下のポイントを特に意識しましょう。
- 前かがみの姿勢を避ける
- 中腰の姿勢を避ける
- 重いものを持ち上げない
- 同じ姿勢を長時間続けない
正しい姿勢を保つことは、腰への負担を軽減し、再発予防にもつながります。鏡を見ながら姿勢をチェックしたり、家族に指摘してもらったりしましょう。
なお、日常生活で無意識に行ってしまいがちな行動の中には、椎間板ヘルニアを悪化させるリスクがあるものもあります。以下の記事では、「やってはいけないこと」を具体的に紹介し、悪化を防ぐための注意点を解説しています。
>>椎間板ヘルニアでやってはいけないこと!悪化を防ぐ注意点
傷のケアと感染予防
手術後は傷口を清潔に保ち、感染症を防ぐことが大切です。傷口は、細菌感染のリスクが高いため、適切なケアが欠かせません。医師の指示に従って、傷口の消毒やガーゼ交換を行いましょう。
シャワーは医師の許可が出れば浴びることができますが、入浴は傷口が完全に治るまで避けてください。お風呂のお湯に雑菌が繁殖しやすく、傷口から感染するリスクがあるためです。傷口に痛みや腫れ、発熱などの症状が現れた場合は、すぐに病院に連絡してください。
椎間板ヘルニア手術後の回復のコツ
椎間板ヘルニア手術後の回復のコツについて、以下の項目を紹介します。
- リハビリの開始時期
- 家庭でできる簡単なストレッチや筋トレ
- 再発を防ぐ生活習慣の工夫
リハビリの開始時期
リハビリは多くの場合、手術の翌日、あるいは数日後から始まります。リハビリは、術後の回復を早めるだけでなく、再発予防にも重要です。リハビリを適切に行うことで、硬くなった筋肉や関節の柔軟性を回復させ、腰の機能を正常な状態に戻すことが期待できます。
初期のリハビリでは、コルセットを装着した状態での歩行練習や、傷口のケア、深呼吸、寝返りの練習など、比較的負担の少ないものから始めます。ゆっくりと慎重に、できる範囲から進めていくことが大切です。
術後1~2週間後からは、徐々に運動強度を高めます。腹筋や背筋などの体幹を鍛えるトレーニングや、股関節周りのストレッチなどが中心です。体幹トレーニングなどは、腰への負担を軽減し、安定性を高める効果が期待できます。
リハビリの効果を高めるためには、2022年に発表された研究結果にもあるように、認知行動療法を組み合わせた多様なリハビリを取り入れることが有効です。認知行動療法とは、考え方や行動パターンを変えることで、痛みや恐怖心などの感情をコントロールする心理療法の一つです。
リハビリのプログラムは、一人ひとりの症状や回復状況に合わせて調整されます。理学療法士などの専門家の指導のもと、適切な内容と強度で行うことが重要です。焦らず取り組むことが、より良い回復へとつながります。
家庭でできる簡単なストレッチ・筋トレ
病院でのリハビリだけでなく、家庭でもできる簡単なストレッチや筋トレも回復を早める効果が期待できます。おすすめの簡単なストレッチ・筋トレは以下のとおりです。
- 膝を抱えるストレッチ:仰向けに寝て、両膝を胸に引き寄せる
- お尻を持ち上げる運動:仰向けで膝を立て、お尻を床から持ち上げる
- 背筋を伸ばすストレッチ:両手を頭の上で組み、ゆっくりと左右に体を倒す
ストレッチや筋トレは、無理のない範囲で行いましょう。痛みが出た場合はすぐに中止してください。新しい運動を始める前には、主治医や理学療法士に相談することをおすすめします。
椎間板ヘルニアの症状として、腰だけでなく足にしびれや痛みが出ることも少なくありません。こうした症状に対処するには、正しい知識と対策が必要です。以下の記事では、椎間板ヘルニアによる足の痛みを和らげる具体的な方法や、効果的なストレッチを詳しく紹介しています。
>>椎間板ヘルニアの足の痛みを和らげる方法と適切なストレッチ法を解説
再発を防ぐ生活習慣の工夫
椎間板ヘルニアは再発しやすい病気です。手術後も、再発予防のために生活習慣を工夫することが大切です。具体的には、適度な運動、バランスの良い食事、禁煙などが挙げられます。
適度な運動は、血行を促進し、再発のリスクを軽減します。ウォーキングや水泳など、腰に負担の少ない運動を定期的に行いましょう。バランスの良い食事は、適正体重を維持するために重要です。肥満は腰への負担を増大させ、椎間板ヘルニアの再発を招きやすいため、注意が必要です。
喫煙は血行を悪くし、椎間板の変性を促進させるため、禁煙が欠かせません。ニコチンは血管を収縮させ、椎間板への栄養供給を阻害するため、禁煙は再発予防に大きく貢献します。生活習慣を改善することで、再発リスクを低減し、健康な状態を維持できる可能性があります。
術後の回復経過と症状の変化
手術方法は多岐にわたり、それぞれに特徴があるため、回復の過程や症状の変化も一人ひとり異なります。術後の回復経過と症状の変化を、以下の項目に沿って紹介します。
- 入院期間
- 基本的な経過
- 痛みやしびれの変化
入院期間
入院期間は、手術方法や個々の回復状況、合併症の有無などによって大きく異なります。内視鏡手術などの場合、1泊2日~数日程度で退院できるケースが増えています。小さな傷口から手術を行うため、従来の大きな切開を伴う手術に比べて、体への負担が少ないためです。従来の切開手術では、1週間程度の入院が必要になる場合もあります。
手術直後は、手術による組織への刺激が原因で、傷口の痛みや患部の腫れ、違和感がみられる場合があります。手術の種類によっては、手術後数時間後からコルセットを装着して歩行できる場合もありますが、無理をしてはいけません。コルセットは、腰を支え、安定させるための補助的な役割を果たします。
基本的な経過
術後すぐは、傷の痛みや患部の腫れを感じる場合があります。安静を保ち、医師の指示に従いましょう。術後1〜2週間は、安静を保ちながら、徐々に体を動かす練習を始めます。無理に体を動かさず、ゆっくりと慎重に進めることが大切です。腰を曲げたり、ひねったりする動作は避け、コルセットを着用して腰を保護します。
術後1〜2週間の時期になると、痛みやしびれが徐々に軽減します。術後2週間が過ぎると、リハビリを進めながら、日常生活動作の練習を行います。最初は、靴下を履く、椅子から立ち上がるといった簡単な動作から始め、徐々に難易度を上げることが大切です。
退院後は、自宅での療養や通院リハビリを継続し、日常生活への復帰を目指します。焦らず一歩ずつ回復を目指しましょう。
以下の記事では、椎間板ヘルニアに効果的なコルセットの選び方や使用方法について詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
>>椎間板ヘルニアにコルセットは効果的?選び方と使用法を解説
痛みやしびれの変化
手術によって神経の圧迫がなくなると、痛みやしびれは徐々に改善していきます。痛みやしびれを感じなくなるまでの時間は個人差が大きいです。特に、長期間にわたって神経が圧迫されていた場合は、神経の回復にも時間がかかるため、痛みやしびれがしばらく残ることもあります。
手術直後は、一時的に痛みやしびれが増強することがあります。手術による組織の炎症などが原因と考えられており、通常は数日以内に落ち着いてきます。痛みやしびれの程度や持続期間は個人差が大きく、手術方法や術前の症状によっても異なります。痛みが強い場合は、我慢せずに医師に相談してください。
合併症と仕事復帰への対応
手術の合併症や仕事復帰への対応について、以下の項目を解説します。
- 手術後に起こりうる合併症
- 仕事復帰の時期と段階的な進め方
手術後に起こりうる合併症
どんな手術にも、合併症のリスクはつきものです。椎間板ヘルニアの手術も例外ではありません。安全性は高い手術ですが、万が一に備えて、どのような合併症が起こりうるのかを知っておくことが大切です。代表的な合併症は以下のとおりです。
- 神経損傷
- 感染症
- 硬膜外血腫
合併症は発生頻度は低いものの、深刻な症状につながる可能性もあります。手術前に医師から合併症について詳しく説明を受け、不安や疑問を解消しておくことが大切です。
仕事復帰の時期と段階的な進め方
仕事復帰の時期は、手術方法や仕事内容、そして個々の回復状況で異なります。デスクワーク中心の方であれば、術後2週間〜1か月程度で復帰できる場合も多いです。力仕事が多い方や長時間同じ姿勢での作業が必要な方は、2~3か月、場合によってはより長い期間が必要な場合もあります。
復帰にあたっては、いきなりフルタイムで働くのではなく、段階的に仕事量を増やしていくことが大切です。仕事内容についても、無理のない範囲で調整することが望ましいです。重いものを持ち上げる作業や、中腰での作業、長時間の座位や立位などは、術後の腰に負担をかける可能性があります。
職場の上司や同僚に手術後の状況を説明し、理解と協力を得ることも、スムーズな仕事復帰のために不可欠です。周りの人に理解してもらうことで、安心して仕事に取り組めます。必要に応じて、主治医に意見書を書いてもらうなど、職場との連携を図りながら、無理なく仕事に復帰できる環境を整えましょう。
腰椎固定術後のリハビリに関する研究では、リハビリは職場復帰率の上昇にも貢献する傾向があると報告されています。適切なリハビリを行うことで、より早く職場復帰できる可能性があります。
まとめ
椎間板ヘルニアの手術後の生活は、日常生活への復帰を目指し、再発を防ぐための大切な期間です。手術の種類によって入院期間や回復のスピードは異なります。医師とよく相談し、自身に合った手術方法を選びましょう。
術後は、傷口のケアや感染予防だけでなく、日常生活での姿勢や動作にも気を配ることが大切です。前かがみや中腰の姿勢、重いものを持ち上げる動作は避け、同じ姿勢を長時間続けないようにしましょう。家庭でできる簡単なストレッチや筋トレも、回復を早める効果が期待できます。
リハビリは、術後の回復を早め、再発を予防するために重要です。医師や理学療法士の指導のもと、適切なリハビリを行いましょう。仕事への復帰は、手術方法や仕事内容、個々の回復状況によって異なり、段階的に仕事量を増やすことが大切です。焦らず自分のペースで、ゆっくりと回復させていきましょう。
椎間板ヘルニアを予防するには、日常生活での習慣や身体的特徴にも注目することが大切です。以下の記事では、椎間板ヘルニアになりやすい人の傾向や、予防に効果的な対策について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアになりやすい人の特徴と予防に効果的な対策法
参考文献
Liedewij Bogaert, Tinne Thys, Bart Depreitere, Wim Dankaerts, Charlotte Amerijckx, Peter Van Wambeke, Karel Jacobs, Helena Boonen, Simon Brumagne, Lieven Moke, Sebastiaan Schelfaut, Ann Spriet, Koen Peers, Thijs Willem Swinnen, Lotte Janssens. Rehabilitation to improve outcomes of lumbar fusion surgery: a systematic review with meta-analysis. European Spine Journal, 2022, 31(6), p.1525-1545.
eddy Oosterhuis, Leonardo O P Costa, Christopher G Maher, Henrica C W de Vet, Maurits W van Tulder, Raymond W J G Ostelo. Rehabilitation after lumbar disc surgery. Cochrane Database of Systematic Reviews, 2014, 2014(3), p.CD003007.
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