椎間板ヘルニアの予防に効果が期待できる筋トレと日常生活の工夫

椎間板ヘルニアの予防に効果が期待できる筋トレと日常生活の工夫
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つらい腰痛や下半身のしびれは、椎間板ヘルニアの可能性があります。椎間板ヘルニアは、年齢や生活習慣を問わず、誰もが発症する可能性のある疾患です。近年、デスクワークの増加や運動不足により、発症リスクが高まっていると言われています。

この記事では、椎間板ヘルニアの予防を目指した筋トレ方法と、日常生活での具体的な工夫について解説します。自分の生活習慣を見直し、ヘルニアのリスクを減らすためのヒントを見つけましょう。

あわせて、すでに椎間板ヘルニアを発症している場合に「避けるべき行動」を知っておくことも、症状悪化を防ぐうえで重要です。以下の記事では、椎間板ヘルニアの方が日常生活でやってはいけないことや、注意すべき習慣について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアでやってはいけないこと!悪化を防ぐ注意点

椎間板ヘルニアを予防するための3つの筋トレ方法

椎間板ヘルニアを予防するための3つの筋トレ方法と、筋トレ時の注意点について、以下の内容を解説します。

  • プランク:体幹の安定性を高める
  • ヒップリフト:お尻の筋肉を鍛えて腰をサポートする
  • ドローイン:腹横筋を鍛えて腹圧を高める
  • 筋トレ時の注意点:腰を反りすぎない、無理な姿勢で行わない

プランク:体幹の安定性を高める

プランクは、お腹や背中を含む体幹の筋肉全体に働きかける運動です。体幹の筋肉は、身体を支える土台の役割を果たしています。体幹の強化を図ることで、姿勢の安定性向上や腰への負担軽減が期待できます。プランクの正しい方法は以下のとおりです。

  1. ヨガマットなどを敷き、うつ伏せになる
  2. 肘を肩の真下に置き、前腕を床につける
  3. つま先を立て、身体を頭からかかとまで一直線に保つ
  4. 一直線の姿勢を20秒間キープする

慣れてきたら、キープする時間を徐々に長くしていき、最終的には1〜2分を目標にしましょう。

ヒップリフト:お尻の筋肉を鍛えて腰をサポートする

ヒップリフトはお尻の筋肉(大殿筋)を鍛える筋トレです。大殿筋は、姿勢を維持し、腰を安定させるために重要な筋肉です。大殿筋が衰えると、骨盤が不安定になり、腰への負担が増加します。ヒップリフトで大殿筋を鍛えることで、腰への負担を軽減し、椎間板ヘルニアの予防につながる可能性があります。ヒップリフトの正しい方法は以下のとおりです。

  1. ヨガマットなどを敷き、仰向けになり、膝を立てる
  2. 足の裏を床につけ、肩幅に開く
  3. お尻の筋肉を意識しながら、お尻をゆっくりと持ち上げ、膝から肩までが一直線になるようにする
  4. 一直線の姿勢を2秒間キープする
  5. ゆっくりとお尻を下ろす

上記の流れで10〜15回を1セットとして、2〜3セット行いましょう。

ドローイン:腹横筋を鍛えて腹圧を高める

ドローインは、お腹の奥にある腹横筋という筋肉を鍛える筋トレです。腹横筋は、天然のコルセットのようにお腹を包み込み、内臓を支え、姿勢を安定させる役割があります。腹横筋を鍛えることで、腹圧を高め、腰椎への負担を軽減し安定させる効果が期待できます。ドローインの正しい方法は以下のとおりです。

  1. ヨガマットなどを敷き、仰向けになり、膝を立てる
  2. 息をゆっくりと吐きながら、お腹を薄くするようにへこませる
  3. へこませた状態を5秒間キープする
  4. 息を吸いながら、お腹を元の状態に戻す

10〜15回を1セットとして、2〜3セット行いましょう。

筋トレ時の注意点:腰を反りすぎない、無理な姿勢で行わない

筋トレを行う際は、以下の点にご注意ください。

  • 自分の体力や体調に合わせて、運動量を調整する
  • 慣れてきたら、徐々に負荷を上げていく
  • 正しいフォームで行う

腰を反りすぎたり、無理な姿勢で行ったりすると、腰を痛めてしまう可能性があります。正しいフォームで行うために、動画サイトなどを参考にしたり、トレーナーに指導を受けたりするのもおすすめです。痛みがある場合は中止し、医療機関を受診しましょう。

筋トレは継続することが大切です。毎日少しずつでも続けることで、腰回りの筋肉が鍛えられ、椎間板ヘルニアの予防に役立つ可能性があります。筋トレと並行して、日常生活でも腰への負担を軽減するための工夫を心がけましょう。

以下の記事では、椎間板ヘルニアの痛みを和らげるための具体的な姿勢や、自宅でできるストレッチ法を紹介しています。
>>椎間板ヘルニアの痛みを和らげる姿勢と効果が期待できるストレッチ法を紹介

椎間板ヘルニア予防のための日常生活の工夫6選

椎間板ヘルニア予防のための日常生活の工夫について、以下の6つを解説します。

  • 正しい姿勢を保つ:立っているとき、座っているときの姿勢
  • 荷物の持ち方・前かがみ動作の工夫
  • 適度な運動:ウォーキング、水泳など
  • 睡眠:質の高い睡眠を確保
  • 体重管理:適正体重を維持
  • 禁煙:ニコチンの影響

正しい姿勢を保つ:立っているとき、座っているときの姿勢

正しい姿勢を保つことは、椎間板への負担を軽減できるため、ヘルニア予防に重要です。立っているときは、背筋を伸ばし、お腹に軽く力を入れて体幹を意識しましょう。耳や肩、腰、くるぶしが一直線になるような姿勢が理想的です。猫背は椎間板への負担を増大させるため、顎を引いて視線をまっすぐに向ける意識が大切です。

座っているときは、椅子に深く腰掛け、背もたれを利用して腰を支えましょう。浅く座ると、腰椎の自然な湾曲が崩れ、椎間板への負担が増加してしまいます。骨盤を起こした姿勢で座り、長時間同じ姿勢を続けないことが大切です。

デスクワークなどで長時間同じ姿勢にならないよう、1時間に1回程度は立ち上がって軽いストレッチや歩行を行いましょう。筋肉の緊張をほぐし、血行促進を目指します。

荷物の持ち方・前かがみ動作の工夫

重い荷物を持ち上げる際は、腰に大きな負担がかかり、椎間板ヘルニアのリスクを高めます。膝を曲げ、腰を落として、荷物を持ち上げましょう。背中を丸めると腰椎への負担が集中するため、背中をまっすぐに保つことが重要です。腹筋群に軽く力を入れて体幹を安定させることで、腰への負担を軽減できます。

前かがみの動作も、椎間板に負担がかかりやすい姿勢です。前かがみになる際は、腰ではなく、膝を曲げるように心がけましょう。床に落ちている物を拾うときなどは、拾う物に身体を近づけてから持ち上げるようにすると、腰への負担を抑えることができます。

適度な運動:ウォーキング、水泳など

適度な運動は、腰回りの筋肉を強化し、椎間板への負担を軽減する効果が期待できます。ウォーキングや水泳など、腰への負担が少ない有酸素運動は効果が期待できます。ウォーキングは、毎日30分程度を目安に行うことで、筋力アップや血行促進、全身の健康維持にもつながります。

水泳は、水の浮力によって腰への負担が軽減されるため、腰痛持ちの方にもおすすめです。水中では、陸上での約10分の1の重力しかかからないため、関節への負担を少なく運動できます。水中ウォーキングや水中エアロビクスなども効果的です。激しいクロールなどは腰をひねる動作を含むため、医師と相談のうえで行いましょう。

頸椎前方椎間板切除術および頸椎前方除圧固定術(ACDF)を受けた患者さんを対象とした手術後のリハビリテーションについての研究があります。気管牽引運動が、嚥下障害や声の変化といった術後の合併症予防に有効である可能性が示されています。

頸椎の椎間板ヘルニアの治療を受ける場合には、術後のリハビリテーションについても医師に相談することをおすすめします。あわせて、日常生活で気をつけるべきポイントや、最新の治療法について事前に知っておくと安心です。

以下の記事では、頸椎椎間板ヘルニアの代表的な症状、治療の選択肢、生活上の注意点などをわかりやすく解説しています。
>>頸椎椎間板ヘルニアの症状と最新治療法!日常生活の注意点

睡眠:質の高い睡眠を確保

質の高い睡眠は、身体の修復機能を高め、椎間板への負担を軽減するうえで不可欠です。睡眠不足は、疲労を蓄積させ、筋肉の緊張を高め、椎間板への負担を増大させる可能性があります。毎日同じ時間に寝起きし、体内時計を整えることで、睡眠の質を高めることができます。

寝る前のカフェインやアルコールの摂取は避け、寝室を暗く静かに保つことも重要です。自分に合った適切な睡眠時間を確保し、規則正しい生活リズムを維持しましょう。7〜8時間の睡眠時間を目安にすることが推奨されています。

体重管理:適正体重を維持

体重の増加は、腰への負担を増加させ、椎間板ヘルニアのリスクを高める要因となります。適正体重の維持は、腰への負担を軽減し、椎間板ヘルニアの予防につながる可能性があります。バランスの良い食事を心がけ、過剰なカロリー摂取を避けることが重要です。

適度な運動を継続することで、消費カロリーを増やし、体重管理に役立ちます。BMI(Body Mass Index:ボディマス指数)を目安に、適正体重を維持するように心がけましょう。

禁煙:ニコチンの影響

喫煙は、椎間板への血流を阻害し、椎間板の変性を促進する可能性が指摘されています。ニコチンは血管を収縮させる作用があり、椎間板への酸素供給を減少させます。椎間板の栄養不足を引き起こし、椎間板の弾力性を低下させることにつながります。

禁煙することで、椎間板への酸素供給が改善される可能性があり、椎間板の健康維持が期待できます。禁煙外来(ニコチン依存症の治療を行う専門外来)を利用するなど、自分に合った方法で禁煙に取り組んでみましょう。

以下の記事では、椎間板ヘルニアを早く改善するための具体的な生活習慣や、自宅でできる実践的なポイントを紹介しています。
>>椎間板ヘルニアを早く治す方法!回復を促進する生活習慣

椎間板ヘルニアになりやすい人の特徴4選

椎間板ヘルニアになりやすい人の特徴について、以下の4つを解説します。

  • デスクワーク中心
  • 猫背になりやすい
  • 運動不足
  • 肥満体型

デスクワーク中心

長時間座り続けるデスクワークは、椎間板ヘルニアの大きなリスク要因となります。座っている姿勢は、立っている姿勢よりも椎間板への負担が大きいためです。パソコン作業などで前かがみの姿勢になると、腰椎への負担はさらに増大します。

一部の研究では、腸内細菌叢と椎間板の健康状態との関連性について調査が進められています。長時間の座位による運動不足と腸の活動性低下との関係についても研究が進行中です。

血行不良も椎間板への栄養供給を阻害し、椎間板の変性を促進する可能性があります。1時間に1回程度は立ち上がり、軽いストレッチや歩行を行うなど、こまめな休憩を挟むことが重要です。

猫背になりやすい

猫背は、椎間板ヘルニアのリスクを高める姿勢です。猫背になると、頭が前に突き出し、背中が丸くなります。猫背は、腰椎の湾曲を変化させ、椎間板への圧力を不均等に分散させるため、特定の部位に負担が集中しやすくなります。長期間にわたる猫背は、椎間板の変形を促進し、ヘルニアへとつながる可能性を高めてしまいます。

普段から正しい姿勢を意識し、背筋を伸ばし、顎を引くように心がけましょう。

運動不足

運動不足は、椎間板ヘルニアのリスクを高める要因となります。運動不足になると、腹筋や背筋といった体幹を支える筋肉が衰え、腰椎の安定性が低下します。腰椎が不安定になると、椎間板への負担が増大し、ヘルニアのリスクが高まります。

適度な運動は、腹筋や背筋などの体幹を支える筋肉を強化し、腰椎を安定させる効果があります。ウォーキングや水泳など、腰への負担が少ない運動を習慣的に行うことが重要です。

肥満体型

肥満体型も、椎間板ヘルニアのリスクを高める要因の一つです。過剰な体重は、腰椎への負担を増大させ、椎間板への圧力を高めます。適正体重を維持することで、腰椎への負担を軽減し、椎間板ヘルニアのリスクを低減できます。バランスの良い食事と適度な運動を心がけ、健康的な体重管理を行いましょう。

高齢の方が椎間板ヘルニアの外科的治療を受ける場合には、特別な配慮が必要になることがあります。腰椎椎間板切除術を受ける高齢患者さん163名を対象とした研究において、抗血栓療法の周術期管理の重要性が報告されています。

抗凝固薬や抗血小板薬を服用している高齢患者さんは、椎間板ヘルニアの手術を検討する際に、事前に医師と十分に相談し、適切な周術期管理を受けることが重要です。年齢に関係なく、現在服用している薬についても必ず医師に伝えるようにしましょう。

まとめ

椎間板ヘルニアの予防には、筋トレと日常生活の工夫が重要です。以下の筋トレで腰回りの筋肉を鍛え、体幹を安定させましょう。

  • プランク
  • ヒップリフト
  • ドローイン

以下の工夫を日常生活に取り入れましょう。

  • 正しい姿勢を保つ
  • 重い物を持ち上げる際は腰に負担をかけない
  • 適度な運動をする
  • 質の高い睡眠を確保する
  • 適正体重を維持する
  • 禁煙する

椎間板への負担を軽減することでヘルニアの予防が期待できます。小さな積み重ねを心がけることで、日常生活の質の向上が期待できます。

近年では若年層にも椎間板ヘルニアが増えており、長時間のスマホ使用や座りっぱなしの生活が原因となるケースも見られます。以下の記事では、若い人に多い椎間板ヘルニアの原因や、初期症状の見逃しを防ぐポイント、日常でできる対策について詳しく解説しています。
>>若い人の椎間板ヘルニアに多い原因とは?見逃されがちな初期サインと対策

参考文献

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Giuseppe Corazzelli, Sergio Corvino, Francesco Ricciardi, Valentina Pizzuti, Settimio Leonetti, Alessandro D’Elia, Marco Santilli, Fulvio Aloj, Gualtiero Innocenzi. Perioperative management of antithrombotic therapy in elderly patients undergoing lumbar discectomy: a retrospective study on 163 patients. Neurosurg Rev, 2024, 47, 1, p.807

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