椎間板ヘルニアを経験した方は、再発の不安があるのではないでしょうか。日常の何気ない行動や生活習慣が、再発リスクを高める場合があります。本記事では、手術後のリハビリテーションの重要性や、日常生活で気をつけるべき点、コルセットの効果的な使用方法など、椎間板ヘルニアの再発リスクを高める4選と、5つの予防策を詳しく解説します。
再発の不安がある方、すでに再発してしまった方も、再発リスクと予防策の知識を身につけて、不安を解消し快適な生活を目指しましょう。
以下の記事では、椎間板ヘルニアを早く改善するための具体的な生活習慣や、自宅でできる実践的なポイントを紹介しています。
>>椎間板ヘルニアを早く治す方法!回復を促進する生活習慣
目次
椎間板ヘルニアが再発する原因4選
椎間板ヘルニアは、椎間板の中の髄核(ずいかく)というゼリー状の組織が、外側の組織を破って飛び出す疾患です。飛び出した組織が神経を圧迫することで痛みやしびれを引き起こします。椎間板ヘルニアが再発する原因は以下のとおりです。
- 椎間板の損傷による炎症の発生
- 手術後の椎間板変性の進行
- 喫煙や肥満による回復の遅延
- 長時間座位や不良姿勢の影響
椎間板の損傷による炎症の発生
椎間板の損傷による炎症は、体の防御反応の一つであり、患部に熱感や腫れ、痛みをもたらします。一度でも椎間板ヘルニアになると、些細な刺激や負担でも炎症を起こしやすくなるため注意が必要です。以下の行為は、椎間板の炎症を引き起こす原因になります。
- 重い物を持ち上げる
- 急に体をひねる
- 長時間同じ姿勢を続ける
重い物を持ち上げる動作は、急に腰に負荷がかかるため、椎間板の炎症を引き起こす原因です。急に体をひねる動作も、損傷した椎間板に負担をかけ、炎症を誘発する可能性があります。デスクワークや車の運転などで長時間同じ姿勢を続けることも、椎間板への負担を増やし、炎症を引き起こす原因となります。
手術後の椎間板変性の進行
手術によってヘルニアの原因である飛び出した髄核を取り除いても、椎間板の変性は進行し続ける場合があります。手術自体が椎間板に負担をかけることや加齢に伴う椎間板の老化現象が、椎間板の変性が進行する主な原因です。
手術は神経の圧迫を取り除き痛みを軽減するための有効な手段ですが、椎間板の根本的な治療ではありません。文献によると、手術後5年以内の再手術率は約10.2%と報告があります。再発するのが10人に1人というのは、決して低い数字ではありません。手術を受けたからといって安心せず、再発予防の意識を高く持つことが大切です。
以下の記事では、椎間板ヘルニアの手術後に気をつけたい生活上の注意点や、回復をスムーズに進めるための具体的なコツについて詳しく解説しています。術後の不安がある方は、ぜひご確認ください。
>>椎間板ヘルニアの手術後の生活で注意するべきことと回復のコツ
喫煙や肥満による回復の遅延
喫煙は、血管を収縮させ血流を悪化させるため注意が必要です。血流が悪化すると、椎間板に栄養が届きにくくなるため、炎症を引き起こしやすくなります。ニコチンは椎間板の組織を直接傷つける作用もあるため、さらに再発のリスクを高めます。
肥満も、腰椎への負担を増大させ、椎間板へのストレスを高めるため、再発の原因です。肥満は体内で慢性的な炎症を引き起こしやすくする体質を作るため、椎間板ヘルニアの再発リスクを高めます。
長時間座位や不良姿勢の影響
デスクワークやスマートフォンの操作での長時間座位では、立っている時よりも椎間板にかかる圧力が高くなります。背骨は本来S字カーブで圧力を分散しています。座ると骨盤が後ろに倒れ、腰椎の前弯が反りやすくなります。すると、圧力が垂直に椎間板へかかり、湾曲で得られていたバネ効果が失われて圧力が上昇します。
支えのない着座での前屈や上半身をねじる姿勢などの不良姿勢は、椎間板への負担をさらに増大させます。結果、長時間座位は椎間板への負担を増加させ、再発リスクを高めます。
椎間板ヘルニアの再発を防ぐ5つの予防策
再発を防ぐ5つの予防策は以下のとおりです。
- 正しい姿勢の維持とストレッチ
- 腰への負担が少ない運動
- 体幹筋強化のための筋トレ
- 禁煙による血流改善
- 適切な体重管理
正しい姿勢の維持とストレッチ
正しい姿勢を維持することは、椎間板への負担を軽減するため、再発の予防が期待できます。立っているときは、耳・肩・腰・膝・くるぶしが一直線になるように意識し、お腹に軽く力を入れましょう。座っているときは、椅子に深く腰掛け、背もたれを利用することで、腰への負担を最小限に抑えることができます。
同じ姿勢を長時間続けることは、筋肉の緊張を高め、血流を阻害し、椎間板への負担を増やします。デスクワークや車の運転など、長時間同じ姿勢を続ける場合は、1時間に一度立ち上がり、軽いストレッチを行いましょう。
ストレッチは、腰や背中の筋肉の柔軟性を高め、血流を促進する効果が期待できます。具体的に、両膝を抱えるストレッチや、腰を左右にひねるストレッチを痛みの出ない範囲で行いましょう。無理のない範囲で毎日少しずつ継続することが大切です。
自宅でできるストレッチを取り入れることで、通院が難しい方でも痛みの軽減が期待できます。以下の記事では、椎間板ヘルニアの症状緩和に役立つストレッチを具体的に紹介しています。
>>椎間板ヘルニアの改善が期待できるストレッチ!自宅でできる痛み軽減法
腰への負担が少ない運動(散歩、水泳など)
適度な運動は、体幹の筋肉を強化し、椎間板を支える力を高めるため、再発予防に役立つ可能性があります。おすすめの運動は、ウォーキングや水泳です。ウォーキングは、正しい姿勢を意識しながら、30分程度を目安に行いましょう。
水泳は、水の浮力によって腰への負担が軽減されるため、腰痛持ちの方でも安心して行えます。プールでの歩行運動も腰の負担が少ない運動の一つです。週に3回以上、無理のない範囲で継続することで、体幹の筋肉が強化され、再発予防効果が高まります。
体幹筋強化のための筋トレ
体幹の筋肉は、体の軸となる重要な筋肉群です。プランクや背筋運動など、さまざまな体幹トレーニングがあります。自身の体力レベルに合ったトレーニングを選択し、正しいフォームで行うことが重要です。
最初は無理のない回数や時間から始め、徐々に強度を上げていきましょう。理学療法士の指導を受けることも有効です。継続的なトレーニングは、体幹の安定性を高め、再発リスクの軽減につながります。
禁煙による血流改善
喫煙は、血管を収縮させ、血流を悪化させるため、損傷した椎間板への酸素や栄養の供給を阻害する原因です。結果、椎間板の修復が遅延し、再発のリスクが高まります。
禁煙によって血流が改善されると、椎間板への栄養供給も安定し、組織の修復や維持が期待できます。禁煙は、椎間板ヘルニアの再発予防だけでなく、生活習慣病の予防にもつながります。自分自身だけでの禁煙が難しい場合は、禁煙外来を受診し、専門家のサポートを受けることも検討しましょう。
適切な体重管理
体重の増加は、腰椎への負担を増大させ、椎間板へのストレスを高めるため、再発の大きな要因です。特に、腹部に脂肪がつくことで、姿勢が悪化しやすくなり、腰椎の自然な湾曲が崩れてしまうこともあります。バランスの崩れた椎間板へのストレスがさらに高まり、ヘルニアの再発リスクが高まるため注意が必要です。
適切な体重管理は、腰への負担を軽減し、椎間板ヘルニアの再発リスクを低減するだけでなく、生活の質の向上にもつながります。バランスの良い食事と適度な運動を心がけ、健康的な生活習慣を維持することで、体重管理を行いましょう。栄養指導や運動指導を受けることも有効です。
椎間板ヘルニア再発時の治療とケア
椎間板ヘルニアの手術は、飛び出した椎間板を取り除き、神経の圧迫を解消することを目的としています。症状が一時的に改善することが多いですが、再発の可能性もあるため注意が必要です。以下に示す椎間板ヘルニア再発時の治療とケアを意識しましょう。
- 手術後のリハビリテーションの継続
- 重い物を持ち上げない、急な動きを避ける
- コルセットによる腰椎の安定化
- 専門医への相談と適切な治療
手術後のリハビリテーションの継続
手術後は、痛みが軽減してきたら、徐々にリハビリテーションを開始します。リハビリテーションの目的は、損傷した組織の修復を促進し、腰椎や周辺の筋肉を強化することです。ストレッチをはじめ、筋力トレーニングや正しい姿勢の指導など、個々の症状や体力レベルに合わせたプログラムが組まれます。
リハビリテーションを継続すると、手術後の組織の瘢痕化(はんこんか:手術部位の組織が硬くなること)の予防が期待できます。結果、動きの制限や痛みを予防・改善し、日常生活での活動性を高める可能性があります。医師や理学療法士の指導を守り、無理のない範囲でリハビリテーションを続けましょう。
重いものを持ち上げない・急な動きを避ける
椎間板ヘルニアの再発予防には、腰への負担を軽減することが重要です。腰への負担をかける動作は以下のとおりです。
- 重い物を持ち上げる動作
- 急な動き
- 中腰での作業
- 前かがみでのデスクワーク
重いものを持ち上げたり、急な動きをしたりすることは、腰に大きな負担をかけ、再発のリスクを高めます。常に正しい姿勢を意識し、腰をひねるような動作は避けましょう。中腰での作業や、前かがみでの長時間のデスクワークも、腰への負担となるため、注意が必要です。
椅子に座る際は、背もたれを利用し、深く腰掛けるように心がけましょう。立っているときは、お腹に軽く力を入れることで、腰への負担を軽減できます。重いものを持ち上げる際は、膝を曲げ、腰ではなく脚の力を使ってください。
コルセットによる腰椎の安定化
コルセットは、腰椎を安定させるため、腰の負担の軽減が期待できる補助具です。コルセットを装着することで、正しい姿勢の維持にも役立ちます。長時間の装着は、筋肉の衰えにつながる可能性があるため、医師に相談しながら、適切な使用時間を決めることが大切です。
専門医への相談と適切な治療
椎間板ヘルニアが再発した場合、自己判断で治療を行うことは避け、必ず専門医に相談し、適切な治療を受けるようにしてください。専門医は、症状や画像検査の結果にもとづいて、最適な治療法を提案します。保存療法(薬物療法、理学療法など)で改善が見られない場合は、手術療法が検討されることもあります。
椎間板ヘルニアの再発は、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。再発による痛みやしびれを軽減し、快適な日常生活を送るためには、専門医への相談と適切な治療が不可欠です。
近年では、二平面超音波ガイド下経皮的腰椎椎間孔穿刺(PLIFI)を用いた治療法など、新しい治療法も開発されています。PLIFIは従来の透視ガイド法と比較して、初回成功率が高く、レントゲン撮影回数や穿刺(せんし)時間も少ないという研究結果も報告されています。
医師や理学療法士の指示に従い、無理なく症状の改善を目指しましょう。以下の記事では、椎間板ヘルニアの手術にかかる費用の目安や保険の適用条件について詳しく解説しています。治療にかかる経済的な不安がある方は、参考にしてみてください。
>>椎間板ヘルニアの手術の費用相場と保険適用の条件を詳しく解説
まとめ
再発を防ぐには、正しい姿勢の維持、適度な運動、体幹筋強化トレーニング、禁煙、適切な体重管理が重要です。日常生活の中で、予防策を意識的に実践することで、再発のリスクを減らし、快適な生活を送ることができます。
再発してしまった場合は、自己判断せず、速やかに専門医に相談し、適切な治療を受けることが大切です。リハビリテーションを継続し、コルセットの使用も検討しながら、医師と相談の上、自分に合った治療法を見つけていきましょう。
以下の記事では、椎間板ヘルニアになりやすい人の傾向や、予防に効果的な対策について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアになりやすい人の特徴と予防に効果的な対策法
参考文献
Arja Häkkinen, Ilkka Kiviranta, Marko H. Neva, Hannu Kautiainen, Jari Ylinen. Reoperations after first lumbar disc herniation surgery; a special interest on residives during a 5-year follow-up. BMC Musculoskeletal Disorders, 2007, 8, 1, p.2.
Yi Mao, Peng Huang, Yuhong Tao, Chao Zhang, Mingbo Zhang. Biplane Ultrasound Versus Fluoroscopy for Guidance of Percutaneous Lumbar Intervertebral Foramen Insertion: A Randomized Controlled Clinical Trial. Spine, 2025, 50(10), p.686–693
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