椎間板ヘルニアの種類と特徴|タイプ別の症状と治療法を解説

椎間板ヘルニアの種類と特徴|タイプ別の症状と治療法を解説
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腰痛や足のしびれは椎間板ヘルニアのサインである可能性があります。放置すると日常生活に支障をきたす場合があるため注意が必要です。椎間板ヘルニアにはいくつかの種類があり、症状や治療法が異なります。

この記事では、4つのタイプ別に症状の特徴を解説し、最適な治療法を見つけるヒントを提供します。椎間板ヘルニアの予防につながるポイントも紹介するので参考にしてください。状態が悪化するリスクを理解し、適切な対処法を知ることで、不安を軽減し、健康な毎日を送るための一歩を踏み出しましょう。

以下の記事では、椎間板ヘルニアの痛みを和らげるための具体的な姿勢や、自宅でできるストレッチ法を紹介しています。
>>椎間板ヘルニアの痛みを和らげる姿勢と効果が期待できるストレッチ法を紹介

椎間板ヘルニアの4つの種類と症状の特徴

椎間板ヘルニアの種類ごとの症状の特徴を、以下の項目に沿って解説します。

  • 膨隆型
  • 突出型
  • 脱出型
  • 遊離型

膨隆型:初期のヘルニアで、腰の重だるさが主な症状

膨隆型ヘルニアは、椎間板ヘルニアの初期段階と言えます。椎間板全体が均一に膨らんでいますが、まだ線維輪と呼ばれる外側の膜は破れていません。膨隆型の段階では、症状は比較的軽く、腰の重だるさや違和感程度であることが多いです。自覚症状が全くない方もいます。

膨隆型ヘルニアでは、姿勢の見直しや適切なストレッチ、軽い運動などにより、症状の緩和が期待できる場合があります。しかし、膨隆型の段階で適切なケアをしないと、ヘルニアはさらに進行してしまう可能性があります。

突出型:神経根への圧迫が始まり、坐骨神経痛などの症状が現れる

突出型ヘルニアは、膨隆型よりも進行し、髄核が線維輪の裂け目の中に押し込まれ、線維輪を少しだけ破って後方へ膨らんでいる状態です。突出部分が神経を圧迫し始めるため、腰痛だけでなく、おしりや太もも、ふくらはぎにかけての痛みやしびれといった坐骨神経痛の症状が現れることがあります

坐骨神経痛は、電気が走るような痛みやしびれ、針で刺されるような痛み、焼けるような痛みなど、さまざまな形で現れます。日常生活では、椅子に座っているのがつらくなったり、長時間立っているのが難しくなったりするため注意が必要です。痛みのため前かがみの姿勢になり、痛みのある側を庇って歩くようになる方もいます。

脱出型:激しい痛みやしびれ、筋力低下などの症状が現れる

脱出型ヘルニアは、突出型よりもさらに進行した状態です。風船が破れて、中の空気が一部飛び出してしまったイメージで、線維輪が破れて髄核の一部が椎間板の外に飛び出しています。

飛び出した髄核が神経を強く圧迫するため、激しい痛みやしびれ、脚の筋力低下などの症状が現れることがあります。脱出型ヘルニアの代表的な症状は、ヘルニアを患っている側の足首を持ち上げる力が弱まり、つま先立ちやかかと立ちが難しくなることです。

日常生活では、歩行が困難になったり、脚に力が入らなくなってつまずいたりします。排尿・排便に障害が出現する方もいます。神経症状の出現は、日常生活に大きな支障をきたすため、早期に医療機関を受診することが望ましいです

遊離型:髄核が剥がれ、激痛や麻痺などの重篤な症状が現れる

遊離型ヘルニアは、最も重症な状態で、髄核が完全に椎間板から剥がれて、脊柱管内を漂っている状態です。剥がれた髄核が神経を圧迫することで、激痛や麻痺、排尿・排便障害などの重篤な症状が現れることがあります。日常生活では、寝返りを打つのも困難になるほどの激痛に襲われることもあります。

遊離型ヘルニアのように髄核が遊離した状態では、一般的に保存療法による改善が難しい場合があります。症状や神経学的所見によっては、手術療法が検討されることもあります。

椎間板ヘルニアは、4つの種類の他にも、発生部位や突出方向によってさまざまな分類があります。国際的には、保存的アプローチを6〜12週間行うことが標準とされています。症状の程度や種類によって治療方針は異なるため、整形外科を受診し、医師の診断を受けましょう。

以下の記事では、歩行困難を伴うような激しい痛みに対する緊急時の対処法や、受診のタイミングなどを詳しく解説しています。症状が急変したときの備えとしても、ぜひ一度ご確認ください。
>>椎間板ヘルニアで激痛が出て歩けないときの緊急対処法

椎間板ヘルニアの治療法

椎間板ヘルニアの治療法は以下のとおりです。

  • 薬物療法
  • 理学療法
  • 装具療法
  • 内視鏡下手術
  • 椎弓切除術

薬物療法

薬物療法は、痛みやしびれといった症状を和らげることを目的としています。椎間板ヘルニアに伴う炎症反応の抑制や、過敏になった神経の鎮静化を通じて、患者さんの不快な症状を軽減できる可能性があります。具体的には、次の薬が使用されます。

  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):炎症や痛みを抑える薬
  • ステロイド薬:強い抗炎症作用を持つ薬
  • 神経障害性疼痛治療薬:神経の損傷によって生じる症状を軽減する薬
  • 筋弛緩薬:筋肉の緊張を和らげる薬

上記の薬は、患者さんの症状や状態に合わせて、単独で、あるいは組み合わせて用いられることがあります。薬の効果や副作用には個人差がありますので、医師の指示に従って服用することが重要です。

理学療法

理学療法は、身体の機能を改善し、痛みを軽減するための治療法です。専門の理学療法士が、患者さんの状態に合わせて適切な運動や物理療法を行います。

  • 温熱療法:施術部位に温熱を加えることにより筋肉の緊張を和らげる効果
  • 牽引療法:椎間板にかかる圧力を軽減することで痛みを和らげる効果
  • 運動療法:ストレッチなどを通じて身体の柔軟性や安定性を高める効果

装具療法

装具療法は、コルセットなどの装具を装着することで腰椎を安定させ、痛みの軽減を目指す方法です。コルセットは、腰への負担を軽減し、正しい姿勢を保つのを助ける効果が期待できます。

装具療法は、急性期の激しい痛みがある時期や、長時間の座位や立位が必要な場合に特に用いられます。長期間の装具の使用は、筋力の低下につながる可能性があります。医師の指示に従って使用期間や装着時間を守ることが大切です。

内視鏡下手術

内視鏡下手術は、小さな切開部から内視鏡を挿入し、ヘルニアを取り除く手術法です。手術部位が小さいため身体への負担が少なく抑えられ、術後の回復も比較的早いというメリットがあります。入院期間も短縮(多くの場合3〜5日程度)され、日常生活への早期復帰(2〜4週間程度)が期待されます。

ただし、ヘルニアの位置や大きさによっては内視鏡下手術の適応外となる場合があり、術者の技術と経験に依存する面もあります。保険適用の治療法であり、専門医による適切な症例選択が重要です。

椎弓切除術

椎弓切除術は、神経を圧迫している骨の一部を取り除き、神経の通り道を広げる手術法です。ヘルニアが大きく、神経への圧迫が強い場合に選択されることが多いです。椎弓切除術により、神経への圧迫を軽減し、痛みやしびれなどの症状の改善が期待されます。

近年では、顕微鏡を用いた手術や、脊椎内視鏡を用いた手術など、低侵襲な手術法も普及しています。低侵襲な手術法は、従来の手術に比べて手術部位が小さく、術後の回復も早い点がメリットです。

椎間板ヘルニアの治療は、患者さんの症状や状態、ライフスタイルなどを考慮して、最適な方法を選択することが重要です。どの治療法にもメリットとデメリットがあるため、医師とよく相談し、納得したうえで治療を受けましょう。

椎間板ヘルニアの予防につながる4つのポイント

椎間板ヘルニアは、腰や首への負担が積み重なることで発症リスクが高まります。日々の生活習慣を見直し、予防に努めることが大切です。椎間板ヘルニアの予防につながる4つのポイントを、医学的な根拠にもとづいて詳しく解説します。

  • 正しい姿勢
  • 適度な運動
  • 適正体重の維持
  • 定期的な受診

正しい姿勢

背骨は、自然なS字カーブを描いており、S字カーブが身体への負担を分散する役割を担っています。しかし、猫背や前かがみの姿勢を続けると、S字カーブが崩れ、椎間板への負担が集中しやすくなります。デスクワークやスマートフォンの操作などで長時間同じ姿勢を続ける人は、椎間板ヘルニアのリスクが高まる可能性があるため注意が必要です。

正しい姿勢を保つためには、以下の3つのポイントを意識してください。

  • 立つとき
  • 座るとき
  • 物を持ち上げるとき

正しい立ち姿勢では、耳・肩・腰・くるぶしが垂直に一直線上に並ぶことが理想的です。骨盤を適切な位置に保ち、軽くお腹に力を入れることで背骨の自然なS字カーブを維持できます。正しい立ち姿勢をとることで体重が均等に分散され、特定の部位への過度な負担を防ぎ、椎間板ヘルニアのリスクを軽減することが期待できます。

椅子には深く腰掛け、背中全体が背もたれに接するようにします。太ももとふくらはぎが90度の角度を形成するよう座面の高さを調整し、足は組まずに両足を床につけます。正しく座ることで腰椎への圧力が適切に分散され、長時間のデスクワークでも椎間板への負担を最小限に抑える効果が期待できます。

重いものを持ち上げる際は、背中を丸めず膝を曲げて腰を落とし、脚の筋肉を使って持ち上げます。脚の筋肉を使うことにより腰椎や椎間板への急激な圧力を避けることができます。負荷が大きすぎると感じる場合は無理せず援助を求め、椎間板ヘルニアなどの障害を予防することが重要です。

1時間に1回程度は立ち上がって軽くストレッチをする、座る際にクッションなどを用いて腰を支えるなど、工夫して負担を軽減することが重要です。

以下の記事では、腰椎椎間板ヘルニアの症状をレベル別に詳しく解説し、それぞれの段階における適切な対処法について紹介しています。自分の症状がどの段階にあるのか確認したい方は、ぜひ参考にしてください。
>>腰椎椎間板ヘルニア症状のレベル別特徴と対処法

適度な運動

運動不足になると、腹筋や背筋などの体幹を支える筋肉が衰え、椎間板への負担が増加します。適度な運動は、筋肉を鍛え、椎間板を支える力を強化する効果が期待できます。

ウォーキングや水泳、サイクリングなど、腰に負担がかかりにくい有酸素運動は、血行を促進し、筋肉の柔軟性を高める効果も期待できます。ヨガやピラティスなども、体幹を強化し、バランス感覚を養うのに役立ちます。

痛みがある場合は、無理に運動を続けず、医師に相談することが重要です。椎間板ヘルニアの急性期には、激しい運動は症状を悪化させる可能性があります。急性期をすぎた後も、専門家の指導のもと、個々の症状に合わせて運動の種類や強度の調整が必要です。

一般的に、腰に負担がかかりにくいスポーツは約6週間後から、腰への負担が大きいスポーツは約12週間後から開始できるとされています。ヘルニアが慢性化するのを避けるため、スポーツ中に痛みが出た場合はすぐに中止し、医師の診察を受けてください。

適正体重の維持

体重が増加すると、椎間板にかかる負担も大きくなります。適正体重を維持することは、椎間板への負担を軽減し、ヘルニアの発症リスクを下げることにつながります。

バランスの良い食事を心がけ、過剰なカロリー摂取を控えることが大切です。また、適度な運動を継続することで、エネルギー消費量を増やし、体重管理をサポートすることができます。

定期的な受診

椎間板ヘルニアは、初期段階では自覚症状がない場合もあります。定期的な健康診断や整形外科を受診し、早期発見・早期治療に努めることが重要です。腰痛や足のしびれなどの症状がある場合は、放置せずに早めに医療機関を受診しましょう。

早期に発見し適切な治療を開始することで、症状の悪化を防ぎ、日常生活への影響を最小限に抑えることができます

まとめ

椎間板ヘルニアは大きく分けて膨隆型、突出型、脱出型、遊離型の4種類があり、それぞれ症状の重さが異なります。初期段階では自覚症状がない場合もありますが、症状が進行すると激しい痛みやしびれ、麻痺などを引き起こす可能性があります。

ヘルニアは早期発見・早期治療が重要です。腰痛や足のしびれなど、少しでも気になる症状があれば、放置せずに整形外科を受診しましょう。適切な治療と予防策で、健康な毎日を送りましょう。

加えて、日常生活の中でどのような習慣を心がけるかによって、回復スピードにも差が出ることがあります。以下の記事では、椎間板ヘルニアの回復を促すために取り入れたい生活習慣やセルフケアのポイントについて詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアを早く治す方法!回復を促進する生活習慣

参考文献

Liu S, Zhou J. Comparative efficacy and safety of three surgical procedures for the treatment of lumbar disc herniation: a Bayesian-based network analysis. BMC Surg, 2025, 25(1), p.125.

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