頚椎椎間板ヘルニアの痛みを和らげる方法と自宅でできるケア

頚椎椎間板ヘルニアの痛みを和らげる方法と自宅でできるケア
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

首や肩の痛み、腕のしびれなどの症状は、頚椎椎間板ヘルニアの可能性があります。頚椎椎間板ヘルニアを適切な治療をせずに放置すると、日常生活に支障をきたす場合があるため注意が必要です。

本記事では、頚椎椎間板ヘルニアの症状や痛みを和らげる方法を解説します。自宅でできるケア方法や最新の治療法も紹介します。首や肩の痛みなどでお悩みの方は参考にしてください。

頚椎椎間板ヘルニアの主な症状

頚椎椎間板ヘルニアの代表的な症状は、以下の4つです。

  • 首や肩の痛み
  • 腕や手のしびれ
  • 放射痛(腕〜手指への放散する痛み)
  • 筋力低下や運動障害

首や肩の痛み

頚椎椎間板ヘルニアで多く見られる症状の一つが、首や肩の痛みです。痛みの種類は、ズキズキとした痛みや重苦しい感じ、こわばりなど、さまざまです。長時間同じ姿勢でいたり、急に首を動かしたりすると、痛みが強くなる傾向があります。痛む場所は、首の後ろや肩甲骨の間、肩の先などです。

首や肩の痛みは、ヘルニアによる神経への刺激や、炎症により発生します。初期は軽い痛みでも、放置すると、慢性的な痛みへと変化したり、他の症状が現れたりする場合があります。少しでも首や肩に違和感を覚えたら、早めに医療機関を受診することが大切です。

腕や手のしびれ

頚椎椎間板ヘルニアでは、首や肩の痛み、腕や手のしびれが出ることもあります。しびれの感じ方も、ピリピリ・ジンジンとした感じ、感覚が鈍くなるなど、さまざまです。しびれは片側の腕や手に現れる場合もあれば両側に現れる場合もあります。

しびれの範囲も、指先だけの場合や、手全体、腕全体にしびれを感じる場合などさまざまです。しびれの強さも、軽度なものから、日常生活に支障が出るほどの重度なものまで幅広く存在します。第6頚椎と第7頚椎の間、第5頚椎と第6頚椎の間が、ヘルニアの起こりやすい部位です。

ヘルニアが起こると、神経根が圧迫されて起こる神経根症という症状が、腕や手に出やすくなります。しびれに加えて痛みや冷え、感覚の異常などを伴うこともあります。

腕や手のしびれは頸部神経根症という疾患の可能性があります。機械的な圧迫が頸部神経根症の最も主要な原因です。損傷した椎間板から放出される炎症性サイトカインも頸部神経根症の症状を引き起こす可能性があると報告されています。

放射痛(腕〜手指への放散する痛み)

腕や手のしびれとともに、腕から手指にかけて広がる痛み、放射痛が現れることもあります。放射痛も神経根の圧迫が原因で起こり、圧迫される神経により痛む場所が変わります。痛みの程度は、軽い痛みから日常生活に支障が出る強い痛みまで、さまざまです。腕や手指の痛みが現れた場合は、早めに医師の診察を受けましょう。

筋力低下や運動障害

神経が強く圧迫されると、筋力低下や運動障害が起こることもあります。さらに症状が進行すると、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。ヘルニアにより神経が圧迫され、筋肉にうまく信号が伝わらないことが原因です。

初期の段階では、軽い筋力低下や動かしにくさを感じる程度ですが、重症化すると、麻痺が生じることもあります。日常生活に支障が出ている場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。

頚椎椎間板ヘルニアの痛みを和らげる治療法

頸椎椎間板ヘルニアの痛みを和らげる一般的な治療法は、以下のとおりです。

  • 薬物療法(鎮痛剤、筋弛緩薬など)
  • 理学療法(ストレッチ、運動療法など)
  • 装具療法(頚椎カラーなど)
  • 手術療法(保存療法が効かない場合)

薬物療法(鎮痛剤、筋弛緩薬など)

薬物療法は、痛みや炎症を抑える基本的な治療法です。患者さんの症状や状態に合わせて、医師が適切な種類や量を処方します。薬物療法には、以下の種類があります。

  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
  • オピオイド系鎮痛薬
  • 筋弛緩薬
  • 疼痛治療剤(神経障害性疼痛)
  • 抗うつ薬

初期の炎症が強い時期には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を用いるケースが多いです。NSAIDsは、痛みや炎症を引き起こす物質の生成を抑える効果が期待できる薬です。NSAIDsには、ロキソニンやボルタレン、モービックなど、さまざまな種類があります。

痛みが強い場合には、強力な鎮痛薬であるオピオイド系鎮痛薬が使用されることもあります。オピオイド系鎮痛薬は、脳内の痛みを感じる中枢に作用し、痛みを軽減する薬です。筋肉の緊張が強い場合には、筋弛緩薬が処方されることがあります。筋弛緩薬は、筋肉の緊張を和らげ、痛みを軽減する効果が期待できる薬です。

神経の損傷による痛みやしびれには、プレガバリン(リリカ)やデュロキセチン(サインバルタ)などの疼痛治療剤(神経障害性疼痛)が使用されます。神経の興奮を抑え、痛みを軽減する効果があります。

慢性的な痛みには、抗うつ薬が有効な場合があります。抗うつ薬は、痛みの信号を脳に伝える神経伝達物質の働きを調整することで、痛みを軽減する効果があります。

薬は期待できる効果や副作用がそれぞれ異なります。自己判断で服用を中止することや、量を変更することは危険です。必ず医師や薬剤師の指示に従ってください。高齢者の場合、薬物の代謝能力が低下していたり、複数の薬を服用していたりするため、副作用のリスクが高まります。より慎重な投薬計画が必要です。

理学療法(ストレッチ、運動療法など)

理学療法は、身体の機能回復や痛みの軽減を目的とした治療法です。ストレッチは、筋肉の柔軟性を高め、血行を促進することで、痛みを和らげる効果が期待できます。大胸筋のストレッチは、姿勢改善にもつながり、頚椎への負担を軽減する効果が期待できます。

運動療法は、頚部の筋肉を強化して首の安定性を高めることで、ヘルニアによる神経の圧迫を軽減して痛みを予防する方法です。チンインエクササイズや僧帽筋下部エクササイズなどが用いられます。

牽引療法は、首に穏やかな力を加えて引き伸ばすことで、神経の圧迫が緩和される可能性がある治療法です。ただし、症状によってはかえって状態を悪化させることもあるため、医師の判断のもとで施術を受けることが重要です。

装具療法(頚椎カラーなど)

装具療法は、頚椎カラーなどの装具を使用して首の動きを制限することで、痛みを和らげ安静を保つ治療法です。頚椎カラーは首の安定化と保護を目的とした医療用具です。急性期や痛みが強い時期に多く用いられます。長期間の使用により筋肉が弱くなる可能性もあるため、医師の指示のもとで使用することが大切です。

手術療法(保存療法が効かない場合)

保存療法で効果が得られない場合や神経症状が悪化する場合は、手術療法が検討されます。頚椎椎間板ヘルニアの手術には、さまざまな方法があります。顕微鏡手術や内視鏡手術など、低侵襲な手術も増えてきています。従来の手術に比べて手術跡が小さく、術後の回復も早いというメリットがあります。

手術には、痛みを根本的に改善できる可能性がある一方、合併症のリスクもあります。医師とよく相談し、手術の必要性やリスクについて十分に理解したうえで、判断することが大切です。特に高齢者の場合、手術のリスクが高まるため、慎重な判断が必要です。

自宅でできるケア方法

自宅でできるケア方法は、以下のとおりです。

  • 正しい姿勢の保持
  • 軽いストレッチとエクササイズ
  • 温熱療法と冷却療法の使い分け
  • 十分な休息と無理のない動作
  • 家庭用牽引器具の使い方と注意点

正しい姿勢の保持

正しい姿勢を保つことは、頚椎椎間板ヘルニアの痛みを和らげるうえで重要です。悪い姿勢は、首や肩への負担を増大させ、症状を悪化させる可能性があります。立っているときは、耳や肩、腰、くるぶしが一直線になるように意識します。猫背にならないよう胸を軽く張り、あごを軽く引きます。

下を向くことが多い方は、あごが前に出た姿勢になりやすく、首の後ろの筋肉が緊張状態になります。あごが前に出た姿勢は、ストレートネックや頚椎椎間板ヘルニアのリスクを高める可能性があります。

座っているときは、深く腰掛け背筋を伸ばします。長時間同じ姿勢を続けないように、こまめに休憩を取り、軽いストレッチを行うのも効果的です。寝ているときは、自分に合った高さの枕を選び、首が自然なカーブを描くように支えましょう

高すぎる枕や低すぎる枕は、首に負担をかけ、痛みを悪化させる可能性があります。適切な高さの枕を選ぶことは、睡眠中の首への負担を軽減し、症状の悪化を防ぐために重要です。

なお、椎間板ヘルニアは頚椎だけでなく腰椎にも発症する可能性があり、発症部位によって症状や対処法は異なります。以下の記事では、腰椎椎間板ヘルニアの症状をレベル別に分けて解説し、それぞれの対処法についても紹介しています。
>>腰椎椎間板ヘルニア症状のレベル別特徴と対処法

軽いストレッチとエクササイズ

軽いストレッチやエクササイズは、首や肩周りの筋肉の緊張を和らげ、血行を促進する効果があります。痛みが強いときは無理せず、できる範囲で行いましょう。首のストレッチは、筋肉の柔軟性を高め、血行を促進する効果があります。痛みのない範囲で、気持ち良いと感じる程度に行いましょう。

肩甲骨を動かすストレッチは、肩周りの筋肉がほぐれ、肩こりの改善にも効果的です。大胸筋のストレッチは、姿勢改善にもつながり、頚椎への負担を軽減する効果が期待できます。猫背気味の方に特におすすめです。

以下の記事では、椎間板ヘルニアの症状改善に役立つ筋トレメニューと、実践時の注意点について詳しく解説しています。安全に運動を取り入れるための参考にしてください。
>>椎間板ヘルニアに効果が期待できる筋トレメニューと実践時の注意点

温熱・冷却療法の使い分け

温熱療法と冷却療法は、痛みの種類や時期によって使い分けることが大切です。痛みが発生した直後や、炎症が強い場合は、冷却療法が効果的です。保冷剤や氷嚢をタオルに包み、患部に15~20分程度当てます。冷却することで、炎症の鎮静化や痛みの緩和が期待できます。

痛みが慢性化している場合や、筋肉の緊張が強い場合は、温熱療法が適しています。温湿布やホットタオルを患部に当て、血行を促進します。温めることによって血行が促進され、筋肉の緊張が和らぎ、痛みの軽減につながります。

十分な休息と無理のない動作

頚椎椎間板ヘルニアの痛みを和らげるためには、十分な休息と無理のない動作を心がけることが大切です。痛みが強いときは、無理せず安静にしましょう。十分な休息をとることで、身体の回復力を高めることができます。

重い物を持ち上げる動作や、急に首を動かす動作は避け、日常生活から動作をゆっくりと行うことを意識することが大切です。急な動作や無理な姿勢は、症状を悪化させる可能性があります。

仕事をされている方にとっては「いつ職場復帰できるのか」が気になるポイントです。以下の記事では、頚椎椎間板ヘルニアによる休職期間の目安や、復職のタイミングについて詳しく解説しています。
>>頚椎椎間板ヘルニアで仕事を休む期間の目安と職場復帰のタイミング

家庭用牽引器具の使い方と注意点

家庭用牽引器具は、医師の指導のもとで使用しましょう。器具の種類によって使用方法が異なるため、必ず取扱説明書をよく読んでから使用してください。痛みが増す場合や違和感を覚える場合は、すぐに使用を中止し、医師に相談しましょう。持病がある方や妊娠中の方は、使用前に医師に相談することが大切です。

牽引の自己判断による使用は、症状次第で悪化させる可能性もあるため、避けましょう。自宅でできるケアを日常生活に取り入れることで、頚椎椎間板ヘルニアの痛みを和らげる効果が期待できます。ただし、自宅でのケアは医療機関での治療を補うものであり、代替するものではありません。

強い痛みやしびれが続く場合は、自己判断せずに、医療機関を受診しましょう。

まとめ

頚椎椎間板ヘルニアの痛みを和らげる方法と自宅でできるケアについて解説しました。首や肩の痛み、腕や手のしびれ、運動障害など、日常生活に支障をきたすさまざまな症状が現れるため、早期の適切な治療が重要です。

治療法には、薬物療法や理学療法、装具療法、手術療法などがあります。症状や状態に合わせて適切な治療法を選択することが大切です。正しい姿勢の保持、軽いストレッチやエクササイズ、温熱・冷却療法、十分な休息と無理のない動作を心がけましょう。症状の改善や再発予防につながる可能性があります。

家庭用牽引器具を使用する場合は、必ず医師の指導のもとで行いましょう。症状が改善しない・悪化する場合は、自己判断せずに医療機関を受診してください。少しでも快適な毎日を送れるように、本記事の情報をぜひ役立ててください。

以下の記事では、頚椎椎間板ヘルニアによる代表的な症状や、神経への影響、症状ごとの改善方法について詳しく解説しています。より詳しい情報を知りたい方は参考にしてみてください。
>>頚椎椎間板ヘルニアの症状とその影響!効果的な改善法

参考文献

Woods BI, Hilibrand AS. “Cervical radiculopathy: epidemiology, etiology, diagnosis, and treatment.” Journal of spinal disorders & techniques 28, no. 5 (2015): E251-9.

Borsheski R, Johnson QL. Pain management in the geriatric population. Mo Med, 2014, 111, 6, p.508-11

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
先頭へ
戻る