椎間板ヘルニアの治療法を解説!手術と保存療法の選び方

椎間板ヘルニアの治療法を解説!手術と保存療法の選び方
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腰の痛みや脚のしびれで悩んでいませんか?厚生労働省の調査によると、腰痛持ちは国民の約3割にものぼると言われています。椎間板ヘルニアは、日常生活に大きな支障をきたす疾患です。

椎間板ヘルニアは、症状や状態に応じた適切な治療法を選択することが重要です。治療が遅れると、慢性的な痛みやしびれが続く可能性があります。症状によっては歩行に支障をきたす場合もあります。

この記事では、椎間板ヘルニアの保存療法と手術療法の選び方、それぞれの具体的な方法、再発予防のためのケアについて解説します。適切な治療法を見つけるために、ぜひご活用ください。

椎間板ヘルニアの治療法の選び方

椎間板ヘルニアの治療法の違いや選び方について、以下の3つを解説します。

  • 保存療法と手術療法の違い
  • 手術が必要になるケース
  • 保存療法で改善するケース

保存療法と手術療法の違い

椎間板ヘルニアの治療法は、以下の2つに分けられます。

  • 保存療法:手術を行わずに薬やリハビリテーション、日常生活の工夫などで痛みやしびれを和らげる治療法
  • 手術療法:手術によって飛び出した椎間板を切除したり、神経の圧迫を取り除いたりする治療法

保存療法と手術療法のメリットやデメリット、適応についてまとめた表は以下のとおりです。

治療法メリットデメリット適応
保存療法・身体への負担が少ない
・費用が比較的安い
・自宅でできることが多い
・効果が出るまでに時間がかかる
・重症例には効果がない場合がある
・軽症~中等症
・手術のリスクが高い方
手術療法・症状の改善が早い
・神経の圧迫を直接取り除ける
・身体への負担が大きい
・費用が高い
・入院が必要な場合がある
・保存療法で効果がない場合
・重症
・神経麻痺

手術が必要になるケース

多くの椎間板ヘルニアは保存療法で症状が緩和される傾向がありますが、手術が必要となるケースもあります。具体的には、以下の場合です。

  • 長期間続く痛み・しびれ:保存療法を3〜6か月続けても、強い痛みやしびれで日常生活ができない場合は手術を検討する
  • 神経麻痺の症状:足に力が入らない、排泄障害がある場合は、神経が強く圧迫されているため早期手術が必要になる
  • 馬尾症候群:両足のしびれ・麻痺や排泄障害が起きている場合は、複数神経の圧迫で後遺症リスクが高いため手術が検討される

保存療法で改善するケース

椎間板ヘルニアの多くは、保存療法で改善します。以下のケースでは、保存療法を検討しましょう。

保存療法の適応説明
軽症~中等症数か月以内に自然に良くなることが多く、様子を見ながら治療を進める
手術リスクが高い場合高齢者や他の病気がある人など、手術自体のリスクが高い場合は、まず手術以外の方法で治療する
手術に不安がある場合手術に不安や恐怖がある場合は、まず保存療法で様子を見て、それでも良くならなければ手術を考える

椎間板ヘルニアの保存療法の種類と特徴

3種類の椎間板ヘルニアの保存療法と特徴を、以下の項目に沿って解説します。

  • 薬物療法の効果と注意点
  • リハビリで改善できる症状と限界
  • 神経ブロック注射が適応されるケース

薬物療法の効果と注意点

薬物療法は、痛みや炎症を抑えることを目的として行います。薬物療法は、炎症を抑え神経への刺激を軽減することで、症状の改善を図ります。代表的な薬剤は、以下のとおりです。

  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):炎症や痛みを抑える薬で市販薬にも含まれる。胃腸障害などの副作用があるため医師の指示に従って服用する。
  • 鎮痛薬:痛みを和らげる薬。NSAIDsが効かない場合や使用できない場合に処方される。
  • 筋弛緩薬:筋肉の緊張を和らげて痛みを軽減する薬。眠気やふらつきの副作用があるため運転は控え、異変を感じたら医師に相談する。
  • 神経障害性疼痛治療薬:神経の損傷や圧迫によるしびれや神経痛を和らげる薬。便秘や口の渇きなどの副作用があり、医師と相談しながら選択する。

薬の効果や副作用には個人差があります。自己判断で服用を中止せず、医師の指示に従って服用することが大切です。

リハビリで改善できる症状と限界

リハビリの目的は、痛みを軽減するだけでなく、再発予防、日常生活動作の改善、生活の質の向上も含まれます。リハビリには、以下の方法があります。

  • ストレッチ
  • 筋力トレーニング
  • マッサージ
  • 温熱療法
  • 電気治療

リハビリで改善が期待できる症状は、以下のとおりです。

  • 腰痛
  • 脚の痛み
  • しびれ
  • 筋力低下
  • 関節の動きの制限

ヘルニアが大きく神経を強く圧迫している場合や、症状が重い場合は、リハビリだけでは十分な効果が期待できないことがあります。リハビリの効果には個人差があり、すべての人に同じ効果が得られるとは限りません。

リハビリは、医師や理学療法士の指導のもと、適切な運動を行うようにしましょう。自己流で行うと、かえって症状を悪化させる可能性があります。

以下の記事では、椎間板ヘルニアの症状を悪化させないために注意すべき行動や、日常生活で避けるべきポイントについて詳しく解説しています。予防と回復のために、ぜひご確認ください。
>>椎間板ヘルニアでやってはいけないこと!悪化を防ぐ注意点

神経ブロック注射が適応されるケース

神経ブロック注射とは、痛みを感じている神経の近くに直接薬剤を注射することで、痛みを一時的に遮断する治療法です。神経の炎症を抑える目的で薬剤を注入し、比較的早期に痛みを緩和できる場合があります。神経ブロック注射が適応されるケースは、以下のとおりです。

いつ神経ブロック注射が必要か説明
通常の治療が効かないとき薬物療法やリハビリなどの保存療法を試しても痛みが続く場合
手術ができないとき高齢や持病があり手術リスクが高い場合、または手術を希望しない場合
痛みで日常生活ができないとき強い痛みで仕事や家事など日常活動ができず、早急な痛み緩和が必要な場合
痛みの原因を探るときどこが痛みの原因か特定できない場合、注射で痛みの場所を確認する目的

神経ブロック注射は、痛みを一時的に抑える効果がありますが、根本的な治療ではありません。痛みの原因となっているヘルニア自体は改善しないため、他の保存療法と組み合わせて行うことが一般的です。効果の持続期間には個人差があり、繰り返し注射が必要になる場合もあります

椎間板ヘルニアの手術療法の種類と特徴

保存療法で効果が得られない場合や症状が重い場合には、以下の手術療法を検討します。3つの手術療法と特徴について以下の項目に沿って解説します。

  • 内視鏡手術が適応される症例
  • レーザー手術の効果とリスク
  • 人工椎間板置換術のメリットと注意点

内視鏡手術が適応される症例

内視鏡手術は、1cm程度の小さな皮膚切開から内視鏡を挿入し、モニター画面を見ながらヘルニアを取り除く手術です。メリットは、以下のとおりです。

  • 従来の手術に比べて傷口が小さい
  • 術後の痛みが少ない
  • 出血が少ない
  • 入院期間が短縮できる
  • 筋肉のダメージが少ない
  • 術後の回復も比較的早い

内視鏡手術が適応されるケースは、以下のとおりです。

  • ヘルニアが軽度〜中等度
  • 神経の圧迫がそれほど強くない場合
  • 日常生活に大きな支障が出ていない場合
  • 高齢者や持病のある方など、身体への負担が大きい手術が難しい場合

レーザー手術の効果とリスク

レーザー手術は、レーザー光線を用いて椎間板の一部を蒸発させ、ヘルニアの体積を小さくすることで神経への圧迫を軽減する手術法です。メリットは、以下のとおりです。

  • 皮膚切開が小さい
  • 身体への負担が少ない
  • 入院期間が短縮できる
  • 比較的早期の社会復帰を目指せる

レーザー手術は、ヘルニアを完全に取り除く手術ではないため、再発のリスクが高まる可能性があります。レーザーの熱によって周囲の組織が損傷するリスクもゼロではありません。手術を受ける際には、医師からリスクについても十分な説明を受けるようにしましょう。

人工椎間板置換のメリットと注意点

人工椎間板置換術は、損傷した椎間板を人工の椎間板に置き換える手術です。他の手術に比べて大がかりな手術となる場合があります。

椎間板本来の機能を維持できる大きなメリットがあります。若い患者さんは、将来的な背骨の変形や不安定性を予防する効果も期待できます。人工椎間板置換術の注意点は、以下のとおりです。

  • 感染
  • 破損
  • 摩耗
  • 手術費用が高額
  • 術後のリハビリが必要

どの手術方法が最適かは、ヘルニアの状態や患者さんの年齢、全身状態、日常生活への影響などを総合的に判断して決定します。それぞれのメリット・デメリットを理解し、医師と相談し、適切な治療法を選択することが大切です。

椎間板ヘルニアの予防と術後のケア方法

椎間板ヘルニアの手術を受けた後、再発を予防するために、日常生活での適切なケアが欠かせません。手術はあくまでヘルニアによって圧迫された神経を解放するための手段の一つです。

再発を防ぎ、健康な状態を維持していくためには、患者さん自身の継続的な努力が必要となります。椎間板ヘルニアの予防と術後のケア方法について、以下の項目に沿って解説します。

  • 再発を防ぐための生活習慣
  • 手術後のリハビリ計画
  • 術後の仕事復帰・日常生活で気をつけること

再発を防ぐための生活習慣

椎間板ヘルニアの再発予防のために注意する点は、以下のとおりです。

対策方法効果・理由
姿勢改善・立位では背筋を伸ばし、あご引いてお腹に軽く力入れる
・座位では深く腰掛け、背もたれ使用して、足は床にしっかりつける
椎間板への負担を均等に分散し、特定部位への過剰なストレスを防ぐ
適度な運動ウォーキング、水泳、水中ウォーキングなど腰に負担の少ない有酸素運動腰回りの筋肉強化、椎間板サポート力向上、全身の血行促進と新陳代謝改善
ストレッチ特にハムストリングス(太もも裏)のストレッチ、入浴後など体が温まった状態で実施腰回りの柔軟性向上、ハムストリングスの柔軟性が腰の負担軽減に重要
負荷軽減・重いものは膝を曲げて足の力で持ち上げる
・リュックを使用する
・荷物を両手に均等に分ける
腰への負担を減らし、腰椎への過度なストレスを防止

以下の記事では、椎間板ヘルニアの改善に役立つ具体的なストレッチ方法を、自宅でできる内容に絞って詳しく紹介しています。無理のない範囲で取り組める内容なので、日々のケアに取り入れてみてください。
>>椎間板ヘルニアの改善が期待できるストレッチ!自宅でできる痛み軽減法

手術後のリハビリ計画

手術後のリハビリは、術後の回復を促進し、再発を予防するために重要です。リハビリの内容と注意点については、以下の表のとおりです。

時期リハビリ内容の例注意点
術後早期(1~2週間)・安静
・深呼吸
・足首の運動
痛みを感じない範囲で、無理のない範囲で行う
術後中期(2~4週間)・ベッド上での運動
・歩行練習・軽いストレッチ
徐々に活動量を増やし、痛みが再発しないように注意する
術後後期(4週間~)・筋力トレーニング
・ストレッチ
・日常生活動作の練習
(階段の上り下り、椅子からの立ち上がりなど)
無理な運動は避け、医師や理学療法士の指示に従って行う

医師や理学療法士による診察・評価を受けたうえで、個々の症状や状態に合わせたプログラムを作成し、指導のもとで行うことが重要です

術後の仕事復帰・日常生活で気をつけること

仕事への復帰時期は、仕事内容や手術の方法、回復状況によって異なります。一般的には、デスクワークであれば術後、数週間〜数か月、肉体労働であれば数か月以上かかることがあります。復帰後は、無理をせず徐々に仕事量を増やしましょう。重い物を持ち上げたり、長時間同じ姿勢を続けたりする作業がある場合は、職場に相談し、作業内容を調整してもらうなどの配慮が必要です。

日常生活では、重い物を持ち上げたり、急に身体をひねったりする動作は避けましょう。長時間の座位や立位も腰に負担をかけるため、こまめな休憩を挟むようにしてください。入浴は、手術の傷が完全に治癒してから行いましょう。睡眠は、質の良い睡眠を十分に取ることで、身体の回復を促します。

まとめ

椎間板ヘルニアの治療法には保存療法と、手術療法の2つがあります。保存療法では、薬物療法や理学療法、神経ブロック療法などがあり、症状やライフスタイルに合わせて組み合わせます。手術療法には、内視鏡やレーザー、人工椎間板置換術などがあり、ヘルニアの状態や患者さんの状態に合わせて選択されます。

術後のケアや再発予防には、正しい姿勢や適度な運動、腰への負担軽減など、日常生活での心がけが重要です。医師と相談し、ご自身に合った治療法を選び、快適な生活を取り戻しましょう。

以下の記事では、椎間板ヘルニアによるつらい痛みを少しでも早く和らげるための具体的な対処法や、即効性が期待できるケア方法について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアの痛みを和らげる方法と即効性が期待できる対策

参考文献

Basic Research and Transformation Society, Professional Committee of Spine and Spinal Cord, Chinese Association of Rehabilitation Medicine. Guideline for diagnosis, treatment and rehabilitation of lumbar disc herniation. Zhonghua Wai Ke Za Zhi, 2022, 60(5), p.401-408

D Scott Kreiner, Steven W Hwang, John E Easa, Daniel K Resnick, Jamie L Baisden, Shay Bess, Charles H Cho, Michael J DePalma, Paul Dougherty 2nd, Robert Fernand, Gary Ghiselli, Amgad S Hanna, Tim Lamer, Anthony J Lisi, Daniel J Mazanec, Richard J Meagher, Robert C Nucci, Rakesh D Patel, Jonathan N Sembrano, Anil K Sharma, Jeffrey T Summers, Christopher K Taleghani, William L Tontz Jr, John F Toton; North American Spine Society. An evidence-based clinical guideline for the diagnosis and treatment of lumbar disc herniation with radiculopathy. Spine J, 2014, 14(1), p.180-191

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