椎間板(ついかんばん)ヘルニアは、歩けなくなってしまうほどの激しい腰痛を伴い、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。腰痛は、多くの人が生涯に一度は経験するとされており、代表的な原因の一つが椎間板ヘルニアです。
この記事では、椎間板ヘルニアで激痛が出て歩けないときの緊急時の対処法について解説します。痛みを和らげる方法や救急車を呼ぶべきサイン、医療機関を受診すべき症状、再発防止策まで幅広く取り上げます。痛みから解放され、快適な日常生活を送るためのヒントをお伝えします。
当院では、椎間板ヘルニアをはじめとした整形外科疾患に加え、自己脂肪由来幹細胞を活用した再生医療にも積極的に取り組んでおります。手術を避けたい方や、長年痛みに悩まされている方にとって新たな選択肢となるよう、最先端の治療をご提案しています。
詳細な診療内容や再生医療に関する情報については、以下よりご確認いただけます。激痛が伴う症状がある方はご相談ください。
>>リペアセルクリニックの公式サイトはこちら
目次
椎間板ヘルニアで激痛が出たときの対処法
椎間板ヘルニアで激痛が出たときの対処法として、以下の内容をご紹介します。
- 痛みを和らげる安静の姿勢
- 患部に冷湿布、温湿布を使って対処
- 横になれないほど痛いときの応急処置
- 市販薬(鎮痛剤、湿布、塗り薬)の効果と注意点
- 緊急性の高い症状:病院へ行くべきサイン
- 救急車を呼ぶべきケース(足の麻痺、排尿障害など)
- 専門医による診断、治療(保存療法、ブロック注射など)
- 手術
痛みを和らげる安静の姿勢
椎間板ヘルニアで激痛が出たときは、楽な姿勢で安静にすることが重要です。理想的には、横になるのがおすすめです。痛みが強く、横になるのが難しい場合は、無理をせず、自分にとって少しでも楽な姿勢を見つけることが大切です。
椅子に座って軽く前かがみになる姿勢や、壁にもたれて立つ姿勢も、腰への負担を軽減し、痛みを和らげる効果が期待できます。自分にとって楽な姿勢を保つことで、椎間板への負担を最小限に抑えることができる可能性があります。
以下の記事では、急な痛みに対する対処法から、即効性が期待できるケア方法まで詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアの痛みを和らげる方法と即効性が期待できる対策
患部に冷湿布・温湿布を使って対処
痛みが激しいときは、患部に冷湿布を当てて炎症を抑えましょう。冷湿布を使用する際は、15〜20分程度を目安に短時間で使用し、冷やしすぎに注意してください。皮膚の感覚が鈍くなっている場合は、注意が必要です。
痛みが落ち着いてきたら、温湿布に切り替えましょう。温湿布は血行を促進し、筋肉の緊張を和らげる効果が期待できます。温湿布を使う際も、低温やけどを防ぐため、長時間同じ場所に当て続けないように注意が必要です。
横になれないほど痛いときの応急処置
横になれないほど強い痛みがある場合は、無理に横になろうとせず、楽な姿勢を保つことが重要です。以下の姿勢を試してみてください。
- 椅子に座り、軽く体を前に倒す
- 壁にもたれて立つ
- クッションや枕を利用して体を支える
楽な姿勢を取ることで、痛みのある部位への負担を軽減する効果が期待できます。姿勢を変えながら、自分に合った最も楽な体勢を見つけることが大切です。深呼吸を行うことで精神的な緊張が和らぎ、痛みの感覚が軽減される可能性があります。ゆっくりと鼻から息を吸い、口からゆっくりと吐き出す呼吸法を試してみてください。
市販薬(鎮痛剤・湿布・塗り薬)の効果と注意点
市販の鎮痛剤は、痛みを一時的に和らげる効果が期待できます。ドラッグストアなどで手軽に入手することが可能です。市販薬は、すぐに痛みを抑えたいときに役立ちますが、根本的な治療にはなりません。あくまで一時的に痛みを抑えるための対症療法であり、椎間板ヘルニアを治すものではありません。
市販薬を使用する際は、用法・用量を必ず守り、長期間の服用は避けてください。持病がある場合や他の薬を服用している場合は、医師や薬剤師に相談してから使用しましょう。自己判断で服用すると、予期せぬ副作用が現れる可能性があります。
緊急性の高い症状:病院へ行くべきサイン
強い痛みやしびれ、筋力低下に加え、排尿障害(尿が出にくい、頻尿)や排便障害(便意の異常、失禁)が現れた場合は、神経圧迫の可能性を示す重要なサインである可能性があります。速やかに医療機関を受診してください。緊急性の高い症状は、以下のとおりです。
- 手足の動かしづらさ(箸の操作が困難、歩行障害など)
- 持続的な痛み(首や腰を動かすと痛みが増す)
- 排泄異常(尿閉、便失禁、頻尿)
神経圧迫は、脊髄(せきずい)や神経根(しんけいこん)で発生し、放置すると麻痺の進行や感覚消失を引き起こす可能性があります。排泄障害は、脊髄下部の重度圧迫を示唆し、72時間以内の処置が必要となる場合もありますので、早めの受診をおすすめします。
救急車を呼ぶべきケース(足の麻痺・排尿障害など)
以下の症状が突然現れた場合は、迷わず救急車を呼びましょう。
- 足の麻痺やしびれが出た場合
- 排尿・排便の障害がある場合
- 意識のもうろうとしている場合
脊髄圧迫を示す症状は、重要なサインです。その他、注意が必要な症状は以下のとおりです。
- 首から肩、上腕への突然の激痛
- 四肢の脱力
- 感覚の喪失
脊髄が圧迫されている可能性がある場合、緊急手術が必要なケースもあります。脊髄圧迫は、数分〜数日で症状が進行する場合があり、早期の医療介入が麻痺や感覚障害などの重度の後遺症を防ぐ可能性を高めることにつながります。
専門医による診断・治療法(保存療法・ブロック注射など)
病院では、医師が問診や神経学的検査、画像検査などを行い、正確な診断をします。神経学的検査では、感覚や筋力、反射などを調べ、神経の圧迫の程度を評価します。画像検査では、MRI検査が椎間板の状態を詳細に把握するために有効です。
治療法は、保存療法が中心です。保存療法には、以下の3つが挙げられます。
- 薬物療法
- 理学療法
- 運動療法
痛みが強い場合には、ブロック注射を行うことがあります。ブロック注射は、痛みの原因となっている神経に直接薬剤を注射することで、痛みを緩和する効果が期待できます。
手術
腰椎椎間板ヘルニアの多くは、保存療法で改善が期待できます。効果が得られない場合や神経麻痺などの重篤な症状がある場合は、手術が必要となることがあります。
内視鏡手術には、MED(MicroEndoscopic Discectomy)と、PED(Percutaneous Endoscopic Lumbar Discectomy)があり、ヘルニアの位置や大きさによって使い分けられます。従来の方法と比べて傷が小さく、術後の痛みが少なく、回復が早いという利点があります。
状態によっては適応とならない場合があるため、医師と十分に相談し、最適な手術方法を選択することが重要です。
以下の記事では、保存療法と手術療法それぞれの特徴や、症状の段階に応じた適切な治療法の選び方を詳しく解説しています。手術に踏み切るタイミングや判断基準で迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
>>椎間板ヘルニアの治療法を解説!手術と保存療法の選び方
椎間板ヘルニアの症状
椎間板ヘルニアの症状について、以下の内容を解説します。
- 椎間板ヘルニアの初期症状
- 椎間板ヘルニアが進行した際の症状
- 椎間板ヘルニアの好発年齢
椎間板ヘルニアの初期症状
椎間板ヘルニアの初期症状は、以下のとおりです。
- 腰や足に鈍い痛みや違和感がある
- 長時間同じ姿勢でいると腰が痛くなる
- 朝起きたときに腰が硬く感じる
- くしゃみや咳をした際に、腰に響くような痛みを感じる
椎間板ヘルニアの初期症状は、他の病気でも見られるため、椎間板ヘルニアだけが原因とは限りません。初期の椎間板ヘルニアでは、安静にしていると痛みが治まる可能性がありますが、一時的なものであり、根本的な解決にはなりません。
放置すると症状が悪化し、日常生活に支障をきたす可能性があります。症状が続く場合は、医療機関を受診して適切な検査を受けることをおすすめします。
以下の記事では、初期段階で見逃しやすいサインや早期発見のためのチェックポイントを詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアの初期症状と見逃せないサイン!早期発見のポイント
椎間板ヘルニアが進行した際の症状
椎間板ヘルニアが進行すると初期症状に加えて、以下の症状が現れることがあります。
- 激しい痛み:腰やお尻、足に激痛が走り、安静時や夜間も治まらない
- しびれ:足先のしびれや感覚の鈍化(温度感覚の変化など)
- 麻痺:足に力が入らず歩行困難(つまずきやすい、階段移動が難しい)
- 排尿・排便障害:排泄困難や失禁
- 間欠性跛行(かんけつせいはこう):歩行中に痛み、しびれで歩けなくなるが、休憩後は回復する症状
椎間板ヘルニアが進行すると、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。排尿・排便障害は、脊髄の神経が圧迫されているサインである可能性があり、緊急の治療が必要になる場合があります。
椎間板ヘルニアの好発年齢
椎間板ヘルニアは、20〜40代の働き盛りの世代に多く発症します。デスクワークや重労働など、腰に負担がかかる作業に従事している人は注意が必要です。加齢とともに椎間板が変性しやすくなるため、高齢者でも発症する可能性があります。
椎間板ヘルニアの発症には、遺伝的な要因や生活習慣が影響する可能性があります。若いからといって油断せず、日頃から腰に負担をかけないよう注意し、早期発見・早期治療を心がけることが大切です。
椎間板ヘルニアの予防方法
椎間板ヘルニアの予防法について、以下の内容をご紹介します。
- 日常生活での予防法
- 職場環境での予防法
- 睡眠時の予防法
日常生活での予防法
日常生活では、正しい姿勢を維持することを意識しましょう。立っているときは、背筋を伸ばし、お腹に軽く力を入れるように意識します。背骨を自然なS字カーブに保ち、椎間板への負担を軽減する効果が期待できます。猫背や反り腰は、椎間板に過剰な負担をかけ、ヘルニアの再発リスクを高める可能性があります。
座るときは、深く椅子に腰掛け、背もたれに寄りかかるようにしましょう。背骨のS字カーブを維持するために重要です。デスクワークなどで長時間座り続ける場合は、定期的に立ち上がり、軽いストレッチや散歩をするなど、休憩を取り入れることをおすすめします。
重い物を持ち上げるときは、腰を曲げずに、膝を曲げて持ち上げるように心がけましょう。腰を曲げて持ち上げると、椎間板に瞬間的に大きな圧力がかかり、ヘルニアの再発を誘発する可能性があります。
適度な運動も重要です。腰に負担をかけにくい運動を続けることで、腰回りの筋肉を鍛え、椎間板を支える筋力の維持・向上が期待できます。ウォーキングや水泳、水中ウォーキングなどがおすすめです。
激しい運動や急に重い物を持ち上げることは、椎間板に大きな負担をかけ、再発リスクを高めるため避けましょう。日常生活における正しい姿勢と適切な運動は、椎間板への負担を軽減し、再発を防ぐための重要な要素です。正しい姿勢と習慣を身につけ、健康な腰を維持しましょう。
職場環境での予防法
長時間同じ姿勢での作業は、腰への負担を増大させ、椎間板ヘルニアの再発リスクを高める要因となる可能性があります。デスクワークが多い方は、1時間に1回は席を立ち、軽いストレッチや軽い体操、短い散歩などを取り入れましょう。
こまめな休憩は、筋肉の緊張をほぐし、血行を促進する効果が期待できます。デスクと椅子の高さを調整し、モニターの位置を目の高さに合わせると、長時間でも正しい姿勢を保ちやすくなります。
重労働に従事している方は、腰への負担に注意が必要です。重い物を持ち上げる際は、腰を曲げずに、膝を曲げて持ち上げるようにしましょう。作業中はコルセットを着用すると、腰への負担軽減が期待できます。休憩をこまめに取り、筋肉の疲労を蓄積させないように心がけましょう。
睡眠時の予防法
睡眠中は、長時間同じ姿勢を保つため、マットレスの選び方と寝姿勢が重要です。柔らかすぎるマットレスは腰を支えきれず、硬すぎるマットレスは体圧が一点に集中しやすくなります。適度な硬さで、腰が沈み込まず、自然なS字カーブを維持できるマットレスを選ぶことが重要です。
寝姿勢も大切です。仰向けで寝る場合は、膝の下にクッションやタオルケットなどを置いて膝を軽く曲げると、腰への負担軽減が期待できます。横向きで寝る場合は、抱き枕などを抱え込むと、体のバランスが保ちやすくなりおすすめです。
うつ伏せは腰を反らせるため、椎間板への負担が大きくなりやすいため、できるだけ避けましょう。
椎間板ヘルニア再発のサイン・対策
以前と同じ腰痛、下肢の痛みやしびれなどが、椎間板ヘルニアの再発のサインです。間欠性跛行(かんけつせいはこう)といって、しばらく歩くと足にしびれや痛みが出て歩けなくなり、少し休むとまた歩けるようになるといった症状が現れることがあります。
椎間板ヘルニアの再発のサインを感じたら、安静にし、痛みが強い場合は患部を冷やしましょう。市販の鎮痛剤も、一時的な痛みの緩和に役立つ場合があります。症状が改善しない場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。
自己判断で治療を続けると、症状が悪化する可能性があります。早期に適切な治療を受けることで、再発による症状の悪化を防ぎ、日常生活への影響を最小限に抑えられる可能性が高まります。再発を繰り返さないためにも、日常生活での予防策を継続的に実践していくことが大切です。
まとめ
椎間板ヘルニアで激痛が出て歩けないときは、まずは冷湿布を試し、痛みが落ち着いたら温湿布に切り替えてください。横になれないほどの激痛の場合は、無理せず楽な姿勢を保ち、深呼吸で心を落ち着かせましょう。
市販の鎮痛剤は、一時的な痛みの緩和に役立ちますが、根本的な治療にはなりません。痛みが強い、しびれや力が入らない、排尿・排便に障害がある場合は、すぐに病院を受診することをおすすめします。
足の麻痺や意識障害など、一刻を争う場合は迷わず救急車を呼びましょう。専門医による適切な診断と治療が回復への近道です。日頃から正しい姿勢や適度な運動を心がけ、椎間板ヘルニアを予防することが大切です。
以下の記事では、症状の回復を早めるために実践できる生活習慣の改善法について詳しく紹介しています。毎日の心がけが症状の悪化を防ぎ、再発予防にもつながりますので、ぜひご覧ください。
>>椎間板ヘルニアを早く治す方法!回復を促進する生活習慣
参考文献
D Scott Kreiner, Steven W Hwang, John E Easa, Daniel K Resnick, Jamie L Baisden, Shay Bess, Charles H Cho, Michael J DePalma, Paul Dougherty 2nd, Robert Fernand, Gary Ghiselli, Amgad S Hanna, Tim Lamer, Anthony J Lisi, Daniel J Mazanec, Richard J Meagher, Robert C Nucci, Rakesh D Patel, Jonathan N Sembrano, Anil K Sharma, Jeffrey T Summers, Christopher K Taleghani, William L Tontz Jr, John F Toton; North American Spine Society. An evidence-based clinical guideline for the diagnosis and treatment of lumbar disc herniation with radiculopathy. Spine J, 2014, 14(1), p.180-191.
Andrew S Zhang, Andrew Xu, Kashif Ansari, Kyle Hardacker, George Anderson, Daniel Alsoof, Alan H Daniels. Lumbar Disc Herniation: Diagnosis and Management. Am J Med, 2023, 136(7), p.645-651.
戻る