椎間板ヘルニアの急性期はいつまで?適切な過ごし方や治療法

椎間板ヘルニアの急性期はいつまで?適切な過ごし方や治療法
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椎間板ヘルニアの急性期では、突発的で強い痛みを生じることが知られています。急性期は、発症から約1~2週間続き、痛みや炎症が最も激しい時期にあたります。急性期の適切なケアは、回復において重要な要素の一つとされています。

本記事では、椎間板ヘルニアの急性期における症状や適切な過ごし方、効果的な治療法について解説します。椎間板ヘルニアは、腰痛の原因の一つとして、多くの人が悩まされている病気です。椎間板ヘルニアの急性期を正しく理解し、適切な対応を心がけ、症状軽減につなげましょう。

以下の記事では、椎間板ヘルニアの痛みを和らげるための具体的な姿勢や、自宅でできるストレッチ法を紹介しています。
>>椎間板ヘルニアの痛みを和らげる姿勢と効果が期待できるストレッチ法を紹介

急性期とは?椎間板ヘルニア発症後1~2週間の痛みが最も強い時期

椎間板ヘルニアの急性期は、発症から約1~2週間続く、痛みや炎症が最も強い時期です。飛び出した椎間板が神経を刺激し、炎症が引き起こされることにより発生します。急性期は、腰や足に鋭い痛みやしびれが走り、咳やくしゃみといった些細な動作でも激痛が生じることがあります。

安静にしていても痛みが治まらず、寝返りが困難になる場合もあります。症状のピークは、発症後数日〜1週間程度で、個人差があります。治療の基本は、炎症を抑え、神経への負担を軽減することです。激しい運動や長時間の座位、重い物を持つことは可能な限り避け、安静を保つことが推奨されます。

横になる際は、膝を軽く曲げた姿勢をとることで腰への負担を軽減できます。

椎間板ヘルニア急性期の症状と期間

椎間板ヘルニア急性期の症状と特徴について、以下の4つを解説します。

  • 急性期の症状
  • 痛みやしびれのピークと急性期の期間
  • 急性期後の経過と慢性期の違い
  • 急性期にやってはいけないこと

急性期の症状

急性期には、以下の症状が現れることがあります。

  • 激しい腰の痛み:日常生活に大きな支障をきたす状態
  • 脚の痛みやしびれ:坐骨神経痛と呼ばれる状態
  • 感覚の異常:神経の圧迫により感覚情報が正しく伝達されない状態
  • 筋力低下:神経の圧迫により筋肉を動かす指令がうまく伝わらない状態

症状は、損傷した椎間板から放出される炎症性物質が神経を刺激することで引き起こされます。炎症は、免疫反応の一部であり、患部を修復しようとする体の自然な反応です。過剰な炎症は神経を刺激し、痛みやしびれなどの症状を引き起こします。

痛みやしびれのピークと急性期の期間

椎間板ヘルニアの急性期は、一般的に発症から1~2週間程度続きます。症状のピークは、発症後数日~1週間で訪れることが多いです。ピーク後は、徐々に症状が落ち着く傾向にあります。症状の改善には個人差があり、数週間以上続く方もいます。

急性期の期間は、炎症の程度や神経の圧迫の程度、個々の回復力によって異なります。3か月ほどで、飛び出したヘルニアが自然に吸収される場合もあります。椎間板の傷が残っている場合は、痛みやしびれの症状が継続することがあります。

急性期後の経過と慢性期の違い

急性期を過ぎると、亜急性期、慢性期へと移行します。亜急性期は、炎症が落ち着き始め、痛みも軽減する時期です。日常生活動作も少しずつ楽になっていきます。慢性期は、痛みがほとんど消失するか、軽い痛みが続く状態です。激しい痛みはありませんが、再発のリスクがあるため注意が必要です。

急性期と慢性期の違いは、炎症の有無と痛みの強さです。急性期は炎症が強く、痛みが激しい時期です。慢性期は炎症が治まり、痛みが軽減しているか、消失している時期です。慢性期に移行しても、再発のリスクは常に存在します。

急性期にやってはいけないこと

急性期には、以下の注意点が挙げられます。症状を悪化させる可能性があるので、避けましょう。

  • 無理な動き:腰に負担をかけ椎間板への圧力を高める動作
  • 長時間の同じ姿勢:腰への負担を増大させる動作
  • 自己流のマッサージ:炎症を悪化させる動作
  • 過度な安静:寝たきりになるのは逆効果

マッサージは、専門家による適切な指導のもとで行うようにしましょう。適切な運動は、血行促進により回復過程をサポートすることが期待できます。医師の指示に従い、適切な運動を行いましょう。

最近では若い世代でも椎間板ヘルニアを発症するケースが増えています。長時間のスマホやパソコン使用、運動不足など、思いがけない習慣が原因になることもあります。以下の記事では、若年層に椎間板ヘルニアが多い原因や初期症状について解説しています。
>>若い人の椎間板ヘルニアに多い原因とは?見逃されがちな初期サインと対策

椎間板ヘルニア急性期の適切な過ごし方

椎間板ヘルニア急性期の適切な過ごし方について、以下の2つを解説します。

  • 家庭でできる応急処置と姿勢の工夫
  • 日常生活での注意点

家庭でできる応急処置と姿勢の工夫

急性期で重要なのは「安静」です。「安静」とは、ただ寝ているだけではなく、炎症を抑え、神経への負担を軽減するための安静です。痛みが強いときは無理に動かず、楽な姿勢で横になることが推奨されます。横になる際は、膝を軽く曲げ、膝の下にクッションなどを敷くことで腰への負担を軽減できます。

膝を曲げることで腰椎の湾曲を緩やかにし、椎間板にかかる圧力を減少させるためです。コルセットは患部の安定化や痛みの軽減を目的として使用される医療用具です。長期間の使用は、体幹の筋力低下を招く可能性があるため、医師の指示に従いましょう。

痛みが軽減した際は、無理のない範囲で軽いストレッチを始め、筋肉を伸ばし血行を促進しましょう。ストレッチの種類や時間、頻度については、主治医や理学療法士に相談することをおすすめします。

日常生活での注意点

日常生活においても、椎間板への負担を軽減する工夫が必要です。重い物を持ち上げることは控えましょう。やむを得ない場合は、膝を曲げて腰を落とし、背中をまっすぐ保つ方法が一般的に推奨されています。腰ではなく、脚の筋肉を使うことが重要です。

中腰や長時間同じ姿勢を続けることも、椎間板に負担をかけやすいため、注意が必要です。デスクワークや車の運転時は、1時間に1回程度は軽い運動や姿勢変更を行いましょう。入浴は、ぬるめのお湯で10分程度にしましょう。熱いお湯に長時間つかると、血行が良くなり、炎症が悪化してしまう可能性があります。

排尿は我慢せず、こまめに行い、腹圧を上げないよう注意が必要です。仕事や家事は無理せず行い、痛みがあるときは早めに休息をとり、ゆっくりと回復を目指しましょう。

以下の記事では、椎間板ヘルニアの手術後に気をつけたい生活上の注意点や、回復をスムーズに進めるための具体的なコツについて詳しく解説しています。術後の不安がある方は、ぜひご確認ください。
>>椎間板ヘルニアの手術後の生活で注意するべきことと回復のコツ

椎間板ヘルニア急性期の治療法

椎間板ヘルニア急性期の主な治療法について、以下の3つを解説します。

  • 薬物療法(痛み止め、筋弛緩薬など)
  • 理学療法(牽引、温熱療法など)
  • 手術が必要なケース

薬物療法(痛み止め、筋弛緩薬など)

薬物療法は、急性期のつらい痛みを和らげるための重要な手段です。主に使用される薬は、次のとおりです。

  • 鎮痛剤:痛みの軽減を目的として医師により処方される薬剤
  • 筋弛緩薬:筋肉の緊張状態の改善を目的として使用される薬剤
  • 神経障害性疼痛治療薬:神経性の痛みやしびれに対して医師により処方される薬剤

患者さんの症状や状態に合わせて、適切な種類と量が処方されます。服用中の薬がある場合は、医師に伝え、相談しましょう。市販の痛み止めなどを自己判断で服用するのは避け、医師の指示に従って服用することが大切です。

理学療法(牽引、温熱療法など)

理学療法は、体の機能回復と痛みの軽減を目的とした治療法です。急性期は、炎症が強い時期のため、激しい運動は禁物です。安静を保ちながら、以下の理学療法が用いられることがあります。

  • 牽引療法:椎間板にかかる圧力の軽減を目的とした治療法
  • 温熱療法:患部を温めることで血行促進や筋肉の緊張緩和を目的とした治療法
  • 電気刺激療法:神経や筋肉への電気刺激により症状緩和を目指す治療法

急性期を過ぎ、痛みが軽減した後は、運動療法を開始します。ストレッチや筋力トレーニングで体の柔軟性を高め、筋力を強化することは再発予防につながります。急性期は、無理な運動を行うと症状が悪化する可能性があります。医師や理学療法士の指示に従って行いましょう。

手術が必要なケース

以下の場合は、手術が必要となることがあります。

  • 保存療法を3か月以上続けても症状が改善しない場合
  • 排尿や排便障害がある場合
  • 神経麻痺が進行している場合

椎間板ヘルニアのほとんどは保存療法で改善します。改善が見られない場合は、手術を検討する必要があります。排尿や排便に困難が生じる膀胱直腸障害は、神経の圧迫により引き起こされる深刻な症状です。緊急手術が必要になることもあります。

神経麻痺が進行している場合は、手術によって神経への圧迫を取り除く必要があります。麻痺が進行すると、後遺症が残る可能性が高くなるため、早期の手術が重要です。近年、低侵襲手術である双孔式内視鏡下脊椎手術が注目されています。特徴は、小さな切開で済み、回復期間の短縮が期待できることです。

研究では、臨床データも報告されており、治療選択肢の一つとして検討される場合があります。手術が必要な場合は、医師とよく相談し、最適な治療法を選択しましょう。

椎間板ヘルニア急性期の病院選びのポイント

椎間板ヘルニア急性期の病院選びのポイントについて、以下の2つを解説します。

  • 専門医の探し方
  • セカンドオピニオンの活用

専門医の探し方

脊椎外科を専門とする医師のいる病院を選ぶことが理想的です。脊椎外科医は、脊椎に関する専門的な知識と技術を持ち、より精度の高い診断と治療を提供してくれます。

脊椎外科医を探す際には、日本整形外科学会や日本脊椎脊髄病学会のWebサイトを活用するのが効率的です。Webサイトでは、専門医の氏名、所属病院、専門分野などを検索できます。

脊椎外科医は、疾患に対して保存的療法から手術療法まで、幅広い治療を提供することができます。内視鏡手術を得意とする医師、低侵襲手術を得意とする医師など、専門分野はさまざまです。専門医を探す際には、医師の専門分野にも注目しましょう。ご自身の症状や希望に合った医師を選びましょう。

セカンドオピニオンの活用

セカンドオピニオンは、現在受けている治療について、他の医師の意見を聞くことです。診断や治療方針の確認、新たな治療法の提案など、より納得のいく医療を受けるために役立ちます。手術の必要性や現在の治療に不安がある場合は、セカンドオピニオンを受けることを検討する価値があります。

セカンドオピニオンを受ける際には、かかりつけ医に相談し、紹介状や検査結果を用意してもらうと良いです。スムーズに受診できるだけでなく、治療経過や検査結果を共有できるため、適切な治療が迅速に開始できます。

セカンドオピニオンは、複数の医師の意見を聞くことで、より多くの情報を得て、ご自身にとって適切な治療法を選択できます。

まとめ

椎間板ヘルニアの急性期は、発症後1~2週間の痛みや炎症が最も強い時期です。安静が第一に重要で、楽な姿勢を保ち、コルセットを使用することも有効です。痛み止めや筋弛緩薬などの薬物療法、牽引や温熱療法などの理学療法を行い、症状の緩和を目指します。

急性期を過ぎると亜急性期、慢性期と移行し、徐々に回復に向かいますが、無理は禁物です。重い物を持ち上げたり、長時間同じ姿勢を続けたりしないようにしましょう。日常生活でも腰への負担を軽減する工夫を心がけ、医師の指示に従い、適切な運動を取り入れましょう。

症状が改善しない、排尿・排便障害、神経麻痺が進行する場合は手術が必要になります。信頼できる医療機関で専門医の診察を受けるようにしましょう。セカンドオピニオンの活用は、治療方針への理解を深め、より適切な選択をするうえで有効です。

以下の記事では、椎間板ヘルニアを早く改善するための具体的な生活習慣や、自宅でできる実践的なポイントを紹介しています。
>>椎間板ヘルニアを早く治す方法!回復を促進する生活習慣

参考文献

Don Y Park, Alexander Upfill-Brown, Nora Curtin, Christopher D Hamad, Akash Shah, Brian Kwon, Yong H Kim, Dong Hwa Heo, Cheol Woong Park, William L Sheppard.Clinical outcomes and complications after biportal endoscopic spine surgery: a comprehensive systematic review and meta-analysis of 3673 cases.Eur Spine J,2023,32,8,p.2637-2646

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