椎間板ヘルニアは一生治らない?回復の可能性と再発防止法

椎間板ヘルニアは一生治らない?回復の可能性と再発防止法
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椎間板ヘルニアと診断されると、腰や足の痛み、しびれなど日常生活への影響も大きく心配が残ります。椎間板ヘルニアは、適切な治療と生活習慣の改善で多くの方が回復し日常生活に復帰しています。この記事では、椎間板ヘルニアの自然治癒の可能性や手術が必要なケース、最新治療法、再発予防法について解説します。

近年、椎間板ヘルニアの発症率は増加傾向にあり、若年化も進んでいます。基礎研究および変革学会脊椎脊髄専門委員会のガイドラインによれば、エビデンスにもとづく標準化された治療法(薬物、理学、装具療法)が患者さんの生活の質向上に貢献しています。椎間板ヘルニアの完治や再発防止への道筋を見つけ不安を解消しましょう。

椎間板ヘルニアは自然治癒する可能性がある

椎間板ヘルニアは必ずしも手術が必要なわけではありません。軽度の椎間板ヘルニアであれば、多くの場合保存療法と呼ばれる手術以外の治療法や自然治癒によって症状が改善します。突出していた椎間板の一部が体内に吸収され、炎症が徐々に治まることで神経への圧迫が軽減されるためです。

中等度の方も比較的高い確率で自然治癒が見込めます。神経症状が強い重度の場合、自然治癒の可能性は低くなります。自然治癒を期待する場合でも、痛みが強くなったりしびれが悪化したりするケースもあります。自己判断せずに定期的に医師の診察を受けることが大切です。

なお、自然治癒を目指すうえでも、日常生活の中で避けるべき行動や姿勢には注意が必要です。以下の記事では、椎間板ヘルニアを悪化させないために「やってはいけないこと」について詳しく解説しています。予防と回復のための参考にご活用ください。
>>椎間板ヘルニアでやってはいけないこと!悪化を防ぐ注意点

椎間板ヘルニアの保存療法

椎間板ヘルニアの治療は大きく分けて「保存療法」と「手術療法」の2つに分類されます。患者さんの症状の程度や日常生活への影響、全体的な健康状態を総合的に判断して決定します。保存療法には、大きく分けて以下の4種類があります。

  • 最新の治療法(椎間板内酵素注入療法、レーザー治療など)
  • 薬物療法
  • 理学療法
  • 装具療法

最新の治療法(椎間板内酵素注入療法、レーザー治療など)

椎間板ヘルニアの最新治療法として、椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア®)レーザー治療があります。椎間板内酵素注入療法は、コンドリアーゼを椎間板に注入することで、飛び出した髄核を分解し小さくすることを目指す治療法です。レーザー治療は、レーザーを用いて椎間板内の圧力を下げて神経への負担を軽減する方法です。

椎間板内酵素注入療法やレーザー治療は体への負担が少ない方法ですが、すべての患者さんに適応できるわけではありません。症状やヘルニアの状態によって適切な治療法を選択する必要があります。ヘルニアが大きく飛び出している場合や神経症状が重い場合には手術療法が選択されることもあります。

薬物療法

薬物療法は、主に痛みや炎症を抑えることを目的として行われます。代表的な薬としては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や鎮痛剤、筋弛緩薬などがあります。薬物療法では、薬剤によって痛みや炎症を引き起こす物質の生成を抑えたり筋肉の緊張を和らげたりすることで効果が期待されます。

効果には個人差があり、副作用の可能性もあるため医師の指示に従って服用することが重要です。内服薬だけでなく、坐薬や貼付薬、注射薬などさまざまな種類があり、患者さんの状態に合わせて処方されます。薬物療法は、他の治療法と組み合わせて行われることが多いです。

理学療法

理学療法は、運動療法物理療法などを通して、体の機能回復を目指す治療法です。椎間板ヘルニアの場合、腰や背中の筋肉を鍛えたり柔軟性を高めたりすることで症状の改善や再発予防を図ります。

理学療法には腰痛体操やストレッチ、水中運動などがあります。理学療法士が患者さんの状態に合わせて適切な運動プログラムを作成し指導します。自宅でも継続して行うことで腰周りの筋肉を強化し、ヘルニアの再発を予防する効果が期待できます。

装具療法

装具療法は、コルセットなどの装具を装着することで腰椎を安定させ、痛みを軽減する治療法です。コルセットは、腰への負担を軽減し正しい姿勢を保つのに役立つ場合があります。特に、重いものを持ち上げる際や、長時間の立ち仕事をする際に効果が期待できます。

コルセットの過度な使用は腰周りの筋肉を弱める可能性があるため、医師の指示に従って使用することが重要です。コルセットの種類もさまざまで、症状や生活スタイルに合わせて適切なものを選択する必要があります。

椎間板ヘルニアの手術療法

手術療法は、神経圧迫の原因を直接取り除くことを目的としており、症状の改善が期待できる場合があります。効果には個人差があります。椎間板ヘルニアの手術には、大きく分けて以下の3つの種類があります。

  • 内視鏡手術
  • 椎間板切除術
  • 椎間固定術

内視鏡手術

内視鏡手術は、小さな切開部から内視鏡を挿入しモニターを見ながらヘルニアを取り除く手術です。従来の手術に比べて傷口が小さく体への負担が少ないため、入院期間が短縮され早期の社会復帰が可能となるケースが多いです。

内視鏡手術の技術は進歩し、MED(顕微鏡下椎間板切除術)やPELD(経皮的内視鏡下椎間板摘出術)などの方法があります。どの方法が適しているかはヘルニアの位置や大きさ、神経の圧迫具合などによって判断されます。

椎間板切除術、椎間固定術

椎間板切除術は、神経を圧迫している椎間板の一部または全部を取り除く手術です。椎間固定術は、不安定な脊椎を金属製のインプラントを用いて固定する手術です。保存療法で効果が得られない場合や重度の神経症状がある場合に検討されます。

どの手術を選択するかは患者さんの症状や状態で異なります。医師とよく相談し最適な治療法を選択することが重要です。手術を受けることになったとしても、適切なリハビリテーションを行えば日常生活への復帰を目指せます。

リハビリテーションの内容は患者さんの状態に合わせて個別に設定し、筋力トレーニングやストレッチ、歩行訓練などを行います。

また、手術にかかる費用や保険の適用範囲について不安を感じる方も多いかと思います。以下の記事では、手術の種類ごとの費用相場や保険適用の条件について詳しく解説していますので、検討中の方はぜひご確認ください。
>>椎間板ヘルニアの手術の費用相場と保険適用の条件を詳しく解説

椎間板ヘルニアの再発予防法4選

日常生活の中で意識することで椎間板への負担を軽減し、再発のリスクを低減できます。椎間板ヘルニアの再発予防のポイントは以下の4つです。

  • 姿勢
  • 運動
  • 体重管理
  • 仕事中の体の使い方

姿勢を見直す

椎間板ヘルニアの再発予防には正しい姿勢の維持が重要です。悪い姿勢は椎間板に余分な負担をかけ、ヘルニアの再発リスクを高めるからです。特に、デスクワークやスマートフォンの長時間使用などで猫背になりがちな現代人は注意が必要です。

正しい姿勢とは、耳、肩、股関節、くるぶしが一直線に並ぶ状態です。正しい姿勢を保つことで体重が均等に分散され、椎間板への負担を最小限に抑えられます。基本的には、どの姿勢においても正しい姿勢を意識しましょう。

立っているときは、お腹に軽く力を入れて背筋を伸ばし顎を引いて目線をまっすぐ前方に向けます。座っているときは、深く椅子に腰掛けて背もたれに背中を付けます。足を組まないようにし足の裏全体を床につけます。パソコン作業の際は、モニターの高さを目の位置に合わせキーボードとマウスは体の近くに置くことで猫背を防ぎます。

仰向けで寝る場合は膝の下にクッションを敷き、横向きで寝る場合は膝を軽く曲げて抱き枕を抱えることで腰への負担を軽減できます。自分に合った高さの枕を選び、首や肩への負担も軽減しましょう。正しい姿勢を保つには、意識的な努力が必要ですが、継続することで自然と身につきます。

ストレッチや適度な運動で筋力を維持する

椎間板ヘルニアの再発予防には、腰回りの筋肉を鍛え椎間板を支える力を強化することが重要です。適度な運動は筋肉を鍛えるだけでなく、血行を促進し椎間板への栄養供給を改善する効果も期待できます。ウォーキングや水泳などは、腰に負担をかけずに全身の筋肉を鍛えられるため椎間板ヘルニアの再発予防に適しています。

激しい運動は逆に腰に負担をかける可能性があるので避けるようにしましょう。ストレッチも筋肉の柔軟性を高めるため腰痛予防に効果的です。入浴後など体が温まっているときに行うと筋肉がリラックスしやすいためより効果的です。

腰回しストレッチや太ももの裏側を伸ばすストレッチなど、腰痛予防に効果的なストレッチは数多く存在します。インターネットや書籍で調べたり専門家である理学療法士に相談したりするのもおすすめです。重要なのは無理のない範囲で毎日継続することです。

ストレッチを日常生活に取り入れたい方は、以下の記事で紹介している自宅でできるストレッチ方法も参考にしてみてください。椎間板ヘルニアの症状緩和や予防に役立つ具体的な方法を解説しています。
>>椎間板ヘルニアの改善が期待できるストレッチ!自宅でできる痛み軽減法

体重管理を行う

体重増加は腰への負担を増加させ、椎間板ヘルニアの再発リスクを高める要因の一つです。過剰な体重は椎間板にかかる圧力を増加させ、炎症や痛みの再発を招きやすくなります。適正体重を維持するためにはバランスの良い食事適度な運動が不可欠です。暴飲暴食を避け、野菜や果物を中心とした栄養バランスの良い食事を心がけましょう。ウォーキングやジョギングなど無理なく続けられる運動の習慣化は、全身の健康維持にもつながります。

仕事中の体の使い方を工夫する

仕事中の体の使い方に気をつけることで椎間板ヘルニアの再発を予防できます。特に、重いものを持ち上げる作業が多い方は腰を痛めやすいので注意が必要です。重いものを持ち上げる際は、腰を曲げるのではなく膝を曲げて持ち上げるようにしましょう。腰への負担を軽減し、椎間板への圧力を最小限に抑えられます。

中腰の姿勢を長時間続けるのも、腰に負担がかかるためできるだけ避けましょう。デスクワークでは1時間おきに立ち上がって軽いストレッチを行うなど、こまめに休憩を取ることも大切です。長時間の運転も腰に負担をかけるため、1〜2時間おきに休憩を取り軽いストレッチや散歩をして体を動かすように心がけましょう。

まとめ

椎間板ヘルニアは一生治らないと不安に思う必要はありません。椎間板ヘルニアは、適切な治療と生活習慣の改善で多くの方が回復し、日常生活に戻れる可能性のある病気です。軽度であれば保存療法や自然治癒で改善する可能性も高いです。手術が必要な場合でも適切なリハビリで日常生活に戻れるケースがほとんどです。

大切なのは早期発見・早期治療です。少しでも違和感があれば、ためらわず専門医に相談しましょう。正しい姿勢や適度な運動など日々の生活習慣にも気を配り、再発予防に努めることが健康な生活への第一歩です。

手術を受けた後の生活にも注意が必要です。以下の記事では、術後に気をつけるべき生活習慣や回復を促すためのコツについて詳しく解説していますので、術後の過ごし方に不安がある方はぜひ参考にしてください。
>>椎間板ヘルニアの手術後の生活で注意するべきことと回復のコツ

参考文献

Basic Research and Transformation Society,Professional Committee of Spine and Spinal Cord,Chinese Association of Rehabilitation Medicine.Guideline for diagnosis, treatment and rehabilitation of lumbar disc herniation.Chinese Journal of Rehabilitation Medicine,2022,60,5,p.401-408

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