椎間板ヘルニアと診断されたらゴルフはやめるべき?再開の目安や注意点を解説

椎間板ヘルニアと診断されたらゴルフはやめるべき?再開の目安や注意点を解説
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椎間板ヘルニアの診断で、ゴルフはもうできないのかと不安に感じていませんか?椎間板ヘルニアと診断されても、医師の指導のもと、適切なケアと正しいフォームを習得することで、ゴルフ継続の可能性が高まります。椎間板ヘルニアは腰痛だけでなく、足先のしびれや痛み、日常生活動作の困難など、症状は人それぞれです。

この記事では、椎間板ヘルニアの症状悪化の兆候やゴルフ再開の目安、ゴルフを続けるための具体的な対策を詳しく解説します。腰への負担が少ないスイングフォームや効果的なストレッチ、筋力トレーニングなど、実践的なアドバイスをお伝えします。椎間板ヘルニアと上手に付き合いながら、ゴルフライフを満喫するための正しい知識を身につけましょう。

なお、ゴルフと同様に身体を動かす運動として「ウォーキング」も注目されています。以下の記事では、椎間板ヘルニアの方がウォーキングを行う際の注意点や、その他のセルフケア方法について詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
>>椎間板ヘルニアはウォーキングしたほうがいい?注意点やその他のセルフケア

ゴルフが椎間板に悪影響を与える理由

ゴルフスイングは、腰をひねる、前傾姿勢を保つなど、腰に負担がかかりやすい動きが多く含まれています。特に、バックスイングからダウンスイングにかけての急激な体の回転は、腰椎に大きなストレスを与えます。インパクト時の衝撃も椎間板に負担をかけます。

長年ゴルフを続けていると、椎間板の老化が進行しやすくなります。椎間板の水分が減少して弾力性が失われ、衝撃を吸収する能力が低下していくためです。ある研究では、長年ゴルフを続けている人は、椎間板の変性が進行し、椎間板ヘルニアのリスクが高まる可能性が示唆されています。

間違ったスイングフォームやウォーミングアップ不足も、椎間板ヘルニアの悪化につながる可能性があります。体幹を安定させ、腰の回転をスムーズに行うスイングフォームを身につけることが重要です。適切なフォームでスイングを行い、腰への負担を最小限に抑えることが、椎間板ヘルニアの予防と症状悪化の防止につながります。

椎間板ヘルニアでゴルフをやめるべきタイミング

椎間板ヘルニアでゴルフをやめるべきタイミングは、以下のとおりです。

  • 症状が悪化している
  • 前傾姿勢やスイングで鋭い痛みが走る
  • 足に力が入らない
  • 痛みが3か月以上続いている
  • 排尿、排便異常がある

症状が悪化している

腰痛や下肢のしびれが明らかに強くなったと感じたら、椎間板ヘルニアに炎症が起こり、神経根への圧迫が進行しているサインです。無理をしてスイングを続けると、突出した髄核(ずいかく)がさらに神経を刺激し、痛みが慢性化するリスクが高まります。

痛みが10段階で2〜3程度上がった、あるいは安静時にもズキズキするようになった場合はすぐにプレーを中止してください。48時間以内に整形外科でMRIなどを受けて炎症の程度を評価しましょう。鎮痛剤で一時的に痛みを抑えるより、安静と氷冷で炎症を落ち着かせることが大切です。

朝起きた瞬間から痛みが強い場合や、くしゃみ・咳でも響くようになったら、椎間板内の圧が高まっている状態を示します。無理をすると手術を余儀なくされる場合もあるため、医師の許可が下りるまでは練習やウェイトは一切控えましょう。

前傾姿勢やスイングで鋭い痛みが走る

以下の場面で、腰部から下肢にかけて鋭い痛みが走る場合、椎間板内の圧力が高まっている可能性があります。

  • アドレスで前傾姿勢をとった瞬間
  • トップからインパクトにかけて腰がねじれるタイミング

鋭い痛みは神経損傷の警告信号と考えられ、繰り返すほど神経の浮腫(むくみ)炎症が進み感覚麻痺が出る可能性があります。ドライバーショットなど痛みが出るフォームを続けることは危険です。無意識に痛みを避ける動作が、新たな故障を招く恐れがあります。

足に力が入らない

足に力が入らず、踏み込みや体重移動が不安定になる場合は、坐骨神経や腓骨神経への圧迫が進行している恐れがあります。足首の背屈が弱くなるフットドロップ(足首を上に持ち上げる力)や、ティーアップ時につまずく症状は要注意です。症状がある状態でゴルフを続けると、転倒や関節損傷の危険が高まります。

一般に筋力低下が出現すると自然回復までに数か月を要し、場合によっては手術での減圧が必要となります。ラウンド中にクラブヘッドが重く感じたりバックスイングで軸足がぐらつく感覚があったりする場合は、すぐにプレーを中止してください。

膝の曲げ伸ばしや足の指を動かすなどの簡易的な筋力テストを行って、左右差を確認しましょう。

痛みが3か月以上続いている

3か月を超えても痛みが減らず、鎮痛薬や湿布が手放せない状態が続く場合、椎間板の変性が進行している可能性があります。痛みが慢性化するサインとして、朝より夕方のほうが痛む、運動後に痛みがぶり返す、心理的ストレスなどが挙げられます。

痛みがある状態でゴルフを続けると、身体の動きに悪い癖がついてしまい、姿勢が崩れて、股関節や膝にも負担が広がります。痛みが3か月以上続く場合は、ペインクリニックで神経ブロックを試したり、日常生活の動作を見直したりしましょう。

痛みが治まってきたら、スイングの動きを改善する練習体幹を鍛える運動を取り入れることで、ゴルフを再開できる可能性が高くなります。慢性的な痛みが続くときに、長時間コルセットを使いすぎると筋力が落ちてしまうため、装着時間を調整することが大切です。

排尿、排便異常がある

腰椎椎間板ヘルニアが馬尾(ばび)神経を圧迫すると、腰痛よりも先に排尿・排便の異常が現れることがあります。以下の症状が現れたら注意が必要です。

  • 急に尿意が弱くなる
  • 便が出にくいのに漏れやすい
  • 会陰部の感覚が鈍い

排尿・排便トラブルは、馬尾症候群と呼ばれています。馬尾症候群が疑われる場合、速やかな医療機関の受診が重要であり、医師の判断により緊急手術等の検討が必要な場合があります。症状を放置すると、膀胱直腸機能の回復が見込めなくなり、一生自己導尿や失禁用パッドが手放せなくなる可能性があります。

少しでも異常を感じたら、すぐに医療機関を受診し、精密検査を受けることが重要です。

ゴルフを再開する目安

ゴルフを再開する目安は以下のとおりです。

  • 痛みやしびれがなくなった
  • 筋力低下がなくなった
  • 可動域が元に戻った
  • MRIで炎症や圧迫所見が軽減している
  • 日常生活のコルセットが不要である

医師や理学療法士による最終チェックを受け、腰に負担がかかるフォームが残っていないかを確認しましょう。パターから始め、アプローチやショートアイアン、ミドルアイアン、最後にドライバーという順に段階的に試していきます。練習後も痛みが出ず、日常生活を問題なく送れるようになれば、再開可能のサインです。

ゴルフを続けるための注意点

ゴルフを続けるための注意点について、以下の内容を解説します。

  • ストレッチを行う
  • 腰への負担を減らすゴルフフォームを意識する
  • ゴルフに適した筋力トレーニングを取り入れる
  • サポーターや装具を活用する
  • ラウンド中に無理をしない

ストレッチを行う

ストレッチ方法と効果については、以下の表のとおりです。

ストレッチ方法効果
股関節仰向けに寝て、片膝を胸に引き寄せ、反対の足は伸ばしたまま、15〜30秒間キープする股関節の柔軟性向上、可動域拡大、けが予防
ハムストリング椅子に座り片足を伸ばしてつま先を上に向け、上体を前に倒したまま、15〜30秒間キープする腰の負担軽減、骨盤と腰椎へのストレス軽減
腰部仰向けで両膝を曲げてそろえ、左右にゆっくり倒すことを10回繰り返す腰部の柔軟性向上、ゴルフスイングの動作改善

ストレッチは、椎間板ヘルニアの予防だけでなく、ゴルフのパフォーマンス向上にも役立ちます。痛みや違和感がある場合は無理に行わず、医師や理学療法士に相談してください。

腰への負担を減らすゴルフフォームを意識する

ゴルフスイングは、腰に大きな負担がかかります。腰への負担が少ないフォームを身につけることは、椎間板ヘルニアの悪化を防ぐために重要です。自己流で修正するのではなく、プロのコーチにスイングをチェックしてもらい、適切な指導を受けましょう。

体幹を安定させ、腰の回転をスムーズに行うことを意識しましょう。急激な動きや無理な姿勢は避け、常に自分の身体の状態に気を配りながらスイングすることが大切です。文献でも、体幹の安定性とスムーズな腰の回転が、椎間板ヘルニア予防に効果的であると指摘されています。

ゴルフに適した筋力トレーニングを取り入れる

筋力トレーニングの方法は、以下の表のとおりです。

トレーニング名方法
プランクうつ伏せの状態で、肘とつま先を地面につけて身体を一直線に保ち、30秒キープする
バックエクステンションうつ伏せになり、両腕を頭の後ろで組み、上半身をゆっくり持ち上げ、数秒間キープする
スクワット足を肩幅に開き、膝を曲げて腰を落とす動作を10回繰り返す

筋力トレーニングは、ゴルフだけでなく、日常生活動作の改善にもつながるため、積極的に取り組むことが推奨されています。運動不足や筋力低下は、腰痛や椎間板ヘルニア再発のリスクを高めるため、適度な運動習慣を維持することが重要です。

サポーターや装具を活用する

サポーターや装具は、腰痛を軽減し、椎間板への負担を減らす効果が期待できます。正しく装着することで、効果的に腰をサポートし、ゴルフ中の動きを安定させることができます。さまざまな種類があるので、専門家に相談して自分に合ったものを選びましょう。

ラウンド中に無理をしない

ラウンド中は、無理をせず、自分の体調に合わせてプレーしましょう。痛みが出たらすぐにプレーを中断し、休憩を取ってください。プレー前後のウォーミングアップとクールダウンも忘れずに行いましょう。痛みが強い場合や症状が悪化している場合は、プレーを中止し、医師に相談することが大切です。

無理なプレーは、椎間板ヘルニアの悪化につながるだけでなく、他のけがのリスクも高める可能性があります。

椎間板ヘルニアとゴルフを両立するポイント

椎間板ヘルニアとゴルフを両立するポイントは、以下のとおりです。

  • 早期に医療機関を受診する
  • 適切な治療を受ける
  • セカンドオピニオンを取り入れる

早期に医療機関を受診する

椎間板ヘルニアの治療において、早期の診断と適切な治療開始は重要です。椎間板ヘルニアを放置すると、症状が悪化し、日常生活にも大きな支障をきたす可能性があります。まずは整形外科を受診し、レントゲンやMRIなどの画像検査で椎間板ヘルニアの状態を正確に把握することが重要です。

医師は、画像診断に加えて、神経学的検査や問診を通して、痛みの部位やしびれの範囲、筋力低下などの症状を詳細に評価します。情報にもとづいて、椎間板ヘルニアの重症度を判断し、患者さん一人ひとりに最適な治療方針を決定します。

適切な治療を受ける

椎間板ヘルニアの治療には、薬物療法や理学療法、手術療法など、さまざまな選択肢があります。それぞれの治療の特徴は以下の表のとおりです。

治療法概要
薬物療法痛みや炎症を抑える消炎鎮痛剤や神経の炎症を抑える薬を使用
理学療法ストレッチや筋力トレーニングで腰回りの筋肉を強化し、腰椎への負担を軽減
手術療法保存療法で効果が不十分な場合や神経症状が強い場合に、ヘルニア除去手術や人工椎間板置換術など実施

椎間板ヘルニアは手術をせずに自然治癒するケースもあり、その回復には一定の期間と適切なセルフケアが必要です。以下の記事では、自然治癒の経過や注意点について詳しく解説していますので、再発予防や正しい判断の参考にしてください。
>>椎間板ヘルニアの自然治癒期間は?回復過程とセルフケアの注意点を解説

セカンドオピニオンを取り入れる

治療方針に疑問を感じた場合や、他の医師の意見も聞いてみたい場合は、セカンドオピニオンを受けることを検討しましょう。セカンドオピニオンとは、現在治療を受けている医師とは別の医師に意見を求めることです。治療に対する不安や疑問を解消し、より納得のいく治療選択につなげることができます。

まとめ

椎間板ヘルニアと診断されても、ゴルフを諦める必要はありません。椎間板ヘルニアにはさまざまな種類や重症度があり、症状の現れ方も個人差があります。悪化の兆候を早めに察知し、適切なケアを行うことで、ゴルフとの両立は十分可能です。

ストレッチやスイングフォームの見直し、体幹を鍛える筋力トレーニング、腰をサポートするコルセットやサポーターの活用も効果的です。医師の指導のもと、無理をせず、自分の身体に合った方法を楽しみましょう。焦らず、できることから少しずつ始め、自分のペースでゴルフライフを満喫してください。

ヘルニアを気にしている方の中には「椎間板ヘルニアは一生治らないのでは?」と不安に思う方も多いかもしれません。実際には多くの治療法が進化しており、回復の可能性も十分にあります。以下のページに記載している最新の治療情報を知っておくことで、前向きな選択ができるようになります。
>>椎間板ヘルニアは一生治らない?最新治療と回復の可能性

参考文献

Corey T Walker, Juan S Uribe, Randall W Porter. Golf: a contact sport. Repetitive traumatic discopathy may be the driver of early lumbar degeneration in modern-era golfers. Journal of Neurosurgery: Spine, 2019, 31, 6, p.914-917

Shaojie Du, Zeyu Cui, Shurui Peng, Jieyu Wu, Jinhai Xu, Wen Mo, Jie Ye. Clinical efficacy of exercise therapy for lumbar disc herniation: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Frontiers in Medicine, 2025, 12, 1531637, p.1531637

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