椎間板ヘルニアに効果が期待できる筋トレメニューと実践時の注意点

椎間板ヘルニアに効果が期待できる筋トレメニューと実践時の注意点
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慢性的な腰の痛みやしびれに悩んでいませんか?椎間板ヘルニアと診断された場合でも、適切な筋トレを取り入れることで回復を促進できる可能性があります。過度に安静にすると筋力が低下し、かえって症状が悪化することもあるため注意が必要です。

この記事では、椎間板ヘルニアの改善に役立つ筋トレメニューを5つ厳選し、それぞれのやり方と注意点を丁寧に解説します。正しく筋肉を使うことで、快適な毎日を取り戻しましょう。

椎間板ヘルニアへの改善効果が期待できる筋トレメニュー5選

椎間板ヘルニアへの改善効果が期待できる5つの筋トレメニューは、以下のとおりです。

  • プランクで体幹強化
  • ドローインでインナーマッスル強化
  • バードドッグでバランス強化
  • ヒップリフトで臀筋強化
  • ウォールシットで下半身強化

プランクで体幹強化

プランクは、お腹や背中など、体幹全体の筋肉をバランス良く鍛える筋トレとして知られています。体幹は、体の軸となる部分であり、姿勢の維持や動作の安定に欠かせません。体を一直線に保つことで、姿勢の維持に重要な筋肉群が鍛えられます。プランクの手順は以下のとおりです。

  1. うつ伏せの姿勢になり、肘とつま先を床につける
  2. そのままお腹に力を入れる
  3. 頭からかかとまでが一直線になるように体を持ち上げる
  4. 呼吸を止めずに姿勢を保つ
  5. 20秒続ける

慣れてきたら30秒、1分と徐々に時間を延ばしていくと効果的です。肘は肩の真下にくるように位置を整えると、安定しやすくなります。お尻が上がりすぎたり、腰が反ったり、逆に沈み込まないように注意してください。鏡を見ながら行うと、正しい姿勢を確認しやすくなります。

ドローインでインナーマッスル強化

ドローインは、お腹の奥にあるインナーマッスル(腹横筋)と呼ばれる筋肉を鍛えるトレーニングです。インナーマッスルは、お腹周りを支える役割があり、姿勢を安定させるために重要です。腹横筋は意識して使わないと衰えやすい筋肉であるため、継続的なトレーニングが重要です。ドローインの手順は以下のとおりです。

  1. 仰向けに寝て、膝を立てる
  2. 息をゆっくりと吐きながら、お腹をへこませる
  3. 10秒ほど姿勢を保つ
  4. ゆっくりと元に戻す

10回程度繰り返すのが目安です。おへそを背骨に近づけるようなイメージで動かすと、インナーマッスルにしっかりと刺激が入ります。ドローインは寝た姿勢だけでなく、立っているときや座っているときも実践できます。日常生活の中で意識的にお腹をへこませる習慣をつけることで、インナーマッスルの強化につながります。

バードドッグでバランス強化

バードドッグは、体幹のバランス能力を高めるのに効果的な筋トレです。バードドッグの手順は以下のとおりです。

  1. 四つん這いになる
  2. 手は肩幅、膝は腰幅に開く
  3. 片方の腕と反対側の脚を同時に伸ばす
  4. 伸ばした状態を5秒ほど保つ
  5. ゆっくりと元に戻す

左右交互に5回ずつ行うことが基本です。体幹が一直線になるように意識しましょう。背中が丸くなったり、腰が反ったりしないように注意が必要です。バランスがとりにくい場合は、片脚だけ、または片腕だけを伸ばす練習から始め、少しずつ全身の連動に慣れていくと安心です。

ヒップリフトで臀筋強化

ヒップリフトはお尻の筋肉である臀筋を鍛える筋トレです。臀筋は、姿勢を維持するうえで重要な役割を果たしており、弱まると腰への負担が増加し、椎間板ヘルニアの悪化につながる可能性があります。腰痛持ちの方の多くは、臀筋が弱っている傾向があります。ヒップリフトの手順は以下のとおりです。

  1. 仰向けに寝る
  2. 足の裏を床につけ、膝を曲げる
  3. 息を吐きながらお尻を持ち上げる
  4. 1~2秒姿勢を保つ
  5. ゆっくりと息を吸いながら、お尻を床に戻す

10回程度繰り返すのが基本です。足の裏を床につけたとき、膝の角度が約90度になるように調整すると、安定した姿勢を保ちやすくなります。かかとに体重をかけるように意識すると、臀筋にしっかりと負荷がかかり、より効果的に鍛えることができます。肩から膝までが一直線になるように意識し、腰を反らせすぎないように注意しましょう。

ウォールシットで下半身強化

ウォールシットは、太ももやお尻の筋肉を鍛える筋トレです。ウォールシットの手順は以下のとおりです。

  1. 壁に背中をつけて立つ
  2. 膝を90度に曲げる
  3. 30秒~1分程度姿勢を保つ

足は肩幅に開き、つま先はやや外側を向けて行うのが理想的です。筋力に自信がない場合は、無理をせず短時間から始め、少しずつ時間を延ばしていくと安全です。膝が内側に入らないように気をつけながら、太ももの前側に効いている感覚を確認しながら行うと、より効果的に下半身を鍛えることができます。

筋トレは、腰椎椎間板ヘルニアの診断や治療、リハビリテーションに関するガイドラインでも、推奨されている運動療法の一部です。近年、ヘルニアの発症は若年化しており、早期からの適切な運動療法が重要視されています。

椎間板ヘルニアの筋トレにおける注意点4選

椎間板ヘルニアの筋トレにおける注意点は、以下の4つです。

  • 痛みを感じたら中止する
  • 正しいフォームを意識する
  • 専門家の指導を受ける
  • 無理な負荷をかけない

痛みを感じたら中止する

筋トレ中に少しでも痛みや違和感がある場合は、すぐに中止し、必要に応じて医師に相談することが大切です。継続的な痛みがある場合は、トレーニングを再開する前に必ず医師の診察を受けることをおすすめします。痛みは体からの重要なサインであり、無理を続けると神経の損傷や炎症の悪化につながる可能性があります。

椎間板ヘルニアは神経が圧迫されることで痛みを引き起こすことが多いため、軽度の違和感であっても、無理をせず中止する判断が求められます。無理を重ねることで症状が慢性化し、回復までに時間がかかる恐れもあります。

安全にトレーニングを続けるためには「少しだけなら大丈夫」と思わず、痛みを感じたら中断し、必要に応じて専門家の判断を仰ぎましょう。

また、椎間板ヘルニアの方が日常生活で避けるべき動作や姿勢も多数存在します。以下の記事では、症状を悪化させないために「やってはいけないこと」を詳しく解説しています。無意識のうちに負担をかけていないか確認しておきましょう。
>>椎間板ヘルニアでやってはいけないこと!悪化を防ぐ注意点

正しいフォームを意識する

筋トレの効果を引き出し、椎間板への負担を軽減するためには、正しいフォームの維持が欠かせません。誤ったフォームは鍛えたい筋肉に効かないだけでなく、腰に余計な負担をかけてしまう恐れがあります。

スクワットでは、膝が内側に入るとバランスを崩しやすく、腰椎へのストレスが増加します。フォームの乱れは、症状の悪化を招く可能性があります。正しいフォームを身につけるには、最初は専門家の指導を受けるのがベストです。

専門家の指導がない場合は、信頼できる動画や図解などを参考に、鏡を見ながら自分のフォームをチェックしましょう。正しいフォームを習得することで、安全かつ効果的なトレーニングが可能になります。

専門家の指導を受ける

椎間板ヘルニアと診断された方は、筋トレを始める前に、担当医に相談しましょう。医師や理学療法士などの専門家の指導を受けることで、症状や体の状態に合った適切なメニューで安全に運動を行うことができます。

ヘルニアの状態は人それぞれ異なり、ある人に効果的な筋トレが別の人には逆効果になる可能性もあるためです。専門家は、あなたの体の状態を詳細に評価し、適切な運動の種類や強度、頻度を決定します。

日常生活での姿勢や動作の指導、痛みを悪化させないための注意点などもアドバイスしてもらえます。自己流で筋トレを行うと、思わぬけがや症状の悪化につながるリスクがあります。安心して筋トレに取り組むためにも、専門家のサポートを積極的に取り入れましょう。

無理な負荷をかけない

椎間板ヘルニアの筋トレでは、無理な負荷をかけないことが大切です。高負荷の筋トレは、椎間板に過剰な負担をかけ、症状を悪化させる可能性があります。

重いバーベルを使ったスクワットなどは、ヘルニアにとって大きな負担です。高負荷の筋トレは避け、自重トレーニングや軽いダンベルを使ったトレーニングなど、低負荷の筋トレから始めましょう。

低負荷の筋トレでも、正しいフォームで適切な回数とセット数を行い、継続することで十分な効果を得られます。筋トレの頻度にも注意が必要です。毎日激しい筋トレを行うよりも、週に2~3回程度、休息日を挟みながら行うほうが、筋肉の回復と成長を促し、より効果的です。

筋トレで期待できる効果

筋トレで期待できる主な効果は、以下のとおりです。

  • 慢性的な痛みの軽減
  • 姿勢の改善による腰部への負担軽減

慢性的な痛みの軽減

椎間板ヘルニアによる腰痛は、生活の質を著しく低下させる要因です。神経の圧迫によって引き起こされる痛みは、筋肉の緊張や炎症と連動し、悪循環に陥りやすくなります。

体幹を中心とした筋肉を強化することで、腰椎が安定し、神経の圧迫を軽減する効果が期待できます。腹部や背中、臀部の筋肉は腰椎を支える重要な役割があり、筋力が向上すると、慢性的な痛みの軽減につながる可能性があります。

体幹強化には、プランクやドローインが有効です。プランクは腹筋と背筋を同時に鍛えることができ、ドローインでは腹横筋というインナーマッスルの活性化が図れます。バードドッグ、ヒップリフト、ウォールシットなども腰椎周囲の筋肉強化に適しています。

小児・思春期のレジスタンストレーニングに関する研究では、適切な負荷での筋トレが筋力と持久力の向上に有効であると報告されています。成人も同様に、正しい方法で継続すれば、安全かつ効果的なアプローチとなります。

なお、急激な激痛が現れ、歩行が困難になるほどの症状が出た場合には、無理をせず速やかに対応することが必要です。以下の記事では、椎間板ヘルニアによる激痛時の緊急対処法を解説しています。
>>椎間板ヘルニアで激痛が出て歩けないときの緊急対処法

姿勢の改善による腰部への負担軽減

椎間板ヘルニアは、姿勢の悪さも原因の一つです。猫背などの悪い姿勢は、腰椎に負担をかけ、椎間板ヘルニアの症状を悪化させる可能性があります。適切な筋トレを行うことで、姿勢を改善し、腰部への負担を軽減できます。

デスクワークなどで長時間座っていると、骨盤が後傾し、腰椎が丸まった状態になりがちです。腰椎が丸まった姿勢は、椎間板への圧力を高め、ヘルニアを悪化させる可能性があります。

体幹トレーニングは、正しい姿勢を維持するための筋力強化に効果的です。体幹が強くなると、骨盤を正しい位置に保ちやすくなり、腰椎への負担を軽減できます。

下半身の筋力トレーニングも重要です。下半身の筋肉が弱いと、姿勢が崩れやすくなり、腰椎への負担が増加します。スクワットやウォールシットなどのエクササイズで下半身を鍛えることで、姿勢が安定しやすくなります。

腹筋群や背筋群、臀筋群、下半身の筋肉をバランス良く鍛えることが重要です。筋肉がバランス良く強化されることで、体の軸が安定し、正しい姿勢を維持しやすくなります。結果として、腰椎への負担が軽減され、椎間板ヘルニアの症状の改善につながります。

姿勢が改善されると、腰椎への負担が減るだけでなく、呼吸がしやすくなったり、内臓機能が向上したりするなど、さまざまなメリットが得られます。外見や動作の安定性が向上することで、心理的な自信にも良い影響を与えます。

正しい姿勢に加えて、腰部の負担を軽減するストレッチを取り入れることで、さらに効果が高まります。以下の記事では、椎間板ヘルニアの痛みを和らげる姿勢と、自宅でできるストレッチ法について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアの痛みを和らげる姿勢と効果が期待できるストレッチ法を紹介

椎間板ヘルニアの再発を防ぐためのトレーニング習慣

椎間板ヘルニアの再発を防ぐためのトレーニング習慣について、以下の内容を解説します。

  • 柔軟性と筋力のバランスを意識する
  • 日常生活でも腰に優しい動作を心がける

柔軟性と筋力のバランスを意識する

椎間板ヘルニアの再発を防ぐには、筋肉の柔軟性と筋力のバランスを整えることが重要です。固まった筋肉をほぐすストレッチと、体幹や腰回りの筋肉を鍛える筋トレを組み合わせることで、より効果的に再発を予防できます。

ストレッチでは、お尻や太ももの裏側の筋肉を中心にほぐすことが効果的です。長時間の座位姿勢により筋肉が緊張しやすくなるため、意識的に伸ばすようにしましょう。床に座って片脚を伸ばし、もう片脚を曲げてかかとをお尻に近づけるストレッチや、椅子に片脚を乗せて前屈する方法などが有効です。

筋トレでは、体幹を鍛えるプランクや、お尻の筋肉を鍛えるヒップリフトなどが効果的です。筋力トレーニングとストレッチを組み合わせ、少しずつ継続することで、柔軟性と筋力の向上が見込まれます。日々の積み重ねが椎間板ヘルニアの再発予防につながります。

日常生活でも腰に優しい動作を心がける

トレーニングだけでなく、日常生活でも腰に負担をかけない動作を心がけることが、椎間板ヘルニアの再発防止には重要です。重いものを持ち上げるときは、膝を曲げて腰を落とし、背中を丸めないように意識しましょう。

背中を丸めたまま重いものを持ち上げると、腰に大きな負担がかかり、椎間板ヘルニアを悪化させる可能性があります。中腰の姿勢も腰に大きな負担をかけるため、なるべく避けましょう。

長時間同じ姿勢でいる場合は、こまめに休憩を取り、軽いストレッチを行うと効果的です。同じ姿勢を長時間続けると、筋肉が緊張し、血行が悪くなるため、腰痛を引き起こしやすくなります。

デスクワークが多い方は、椅子に深く座り、背筋を伸ばして座ることを心がけましょう。足の裏はしっかりと床に接地させ、骨盤を安定させる姿勢を意識します。

まとめ

椎間板ヘルニアの改善や再発予防には、適度な運動が欠かせません。以下の筋トレは、腹部や背中、臀部、下半身の筋力バランスを整えるのに役立ちます。

  • プランク
  • ドローイン
  • バードドッグ
  • ヒップリフト
  • ウォールシット

正しいフォームを意識し、痛みがある場合は無理をせず中止し、医師や理学療法士などの専門家に相談するようにしましょう。腰に負担をかけない動作を日常生活に取り入れることも重要です。筋トレと日常動作の見直しを組み合わせることで、症状改善や再発防止につながります。

ご自身の体調と相談しながら、無理のないペースで継続することが、快適な生活の実現につながります。

最近では若い女性の間でも椎間板ヘルニアの発症が増えていることが報告されています。以下の記事では、その背景や原因、そして若年層に適した対処法について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアが若い女性に増加中!原因と効果が期待できる対処法

参考文献

Paul R Stricker, Avery D Faigenbaum, Teri M McCambridge, COUNCIL ON SPORTS MEDICINE AND FITNESS. Resistance Training for Children and Adolescents. Pediatrics, 2020, 145, 6, p.e20201011

Basic Research and Transformation Society, Professional Committee of Spine and Spinal Cord, Chinese Association of Rehabilitation Medicine. Guideline for diagnosis, treatment and rehabilitation of lumbar disc herniation. Zhonghua Wai Ke Za Zhi, 2022, 60, 5, p.401-408

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