腰の痛みに悩んでいる方は多いです。椎間板ヘルニアの原因として、日常の姿勢や動作が症状に影響している可能性があります。起立時や座っている姿勢、運転時など、それぞれの場面での適切な姿勢は、痛みの軽減につながる可能性があります。
この記事では、椎間板ヘルニアの痛みを和らげるための効果的な姿勢とストレッチ、日常生活で気をつけるポイントを解説します。この記事で椎間板ヘルニアへのストレッチ方法を知り、慢性的な腰の痛みの緩和と、快適な日常生活を目指しましょう。
目次
椎間板ヘルニアの痛みを和らげる4つの姿勢
椎間板ヘルニアの痛みを和らげるために、以下の4種類の姿勢を解説します。
- 立っているときの姿勢
- 座っているときの姿勢
- 寝ているときの姿勢
- 運転時の姿勢
立っているときの姿勢
長時間立っていると、腰に負担がかかり、痛みの悪化につながる可能性があります。正しい立ち姿勢を維持するために、以下のポイントを意識しましょう。
- 背筋を伸ばす:猫背は椎間板への負担を増大させる
- お腹に軽く力を入れる:体幹を安定させて腰への負担を軽減する
- 重心を両足に均等にかける:体のバランスが崩れると腰への負担が増加する
定期的に、ふくらはぎのストレッチやウォーキングなどを行うと、血行を促進できます。筋肉の緊張を和らげる効果が期待できるので、日常生活に取り入れて痛みの予防を図りましょう。腰椎椎間板ヘルニアの症状は人によって異なり、重症度に応じた対処法が必要です。
軽度であっても放置すれば悪化する可能性があるため、段階ごとの特徴と適切なケア方法を知っておくことが大切です。以下の記事では、腰椎椎間板ヘルニアのレベル別の特徴や対処法を紹介しています。
>>腰椎椎間板ヘルニア症状のレベル別特徴と対処法
座っているときの姿勢
デスクワークなどで長時間座り続けるときの姿勢にも注意が必要です。椎間板ヘルニアの痛みが気になる方は、以下の座り姿勢を意識しましょう。
- 椅子にはしっかりと深く腰を下ろす
- 背中は背もたれに沿わせて支える
- 両足の裏は床に接地させ、膝の角度が約90度になるよう調整する
パソコンを使用するときは、背筋をまっすぐに保ち、画面が目線と同じくらいの高さにくるように設定します。顎を軽く引いて画面を見る姿勢が理想的です。猫背や足を組んで座るなどは、腰への負担が増加するリスクがあるので避けましょう。
30分に一度は立ち上がって軽く体を動かすことが推奨されます。短時間のストレッチや歩行を取り入れることで、血行が促進され、筋肉や椎間板への負荷も軽減されます。椅子の選び方にも工夫が必要です。座面の高さが自分に合っていない場合は、足台やクッションなどを使って調整しましょう。
寝ているときの姿勢
寝ているときの姿勢も、椎間板ヘルニアの痛み緩和につながります。自分に合った姿勢と寝具が見つかると、快適な睡眠と痛みの軽減の両立につながります。以下2つの姿勢を意識しましょう。
- 仰向け:膝の下にクッションや枕を置き膝を軽く曲げた状態を保つ
- 横向き:両膝を軽く曲げ抱き枕を使用し体のバランスを安定させる
うつ伏せは腰を反らせて、椎間板への負担がかかりやすいので避けましょう。マットレスは適度な硬さがあり、体圧を分散してくれるタイプを選ぶ必要があります。枕は、首と頭を自然な位置で支えてくれる高さを選びましょう。自分に合った寝具を選ぶと、快適な睡眠が得られ腰の痛みの軽減につながります。
運転時の姿勢
長時間の運転は腰に負担をかけ、椎間板ヘルニアの痛みを促進する可能性があります。運転時には、以下の正しい姿勢を意識しましょう。
- シートの位置:アクセルやブレーキペダルを踏む際に膝が軽く曲がる程度
- シートの座り方:深く腰掛け背もたれに背中をつける
- ハンドルの位置:腕を軽く曲げた状態で握れる位置
腰を支えるクッションを使用するのも効果的です。長時間同じ姿勢にならないように、休憩を挟みながら運転しましょう。休憩時には、車外に出て軽いストレッチやウォーキングを行い、腰周りの筋肉をほぐしましょう。
椎間板ヘルニアへの効果が期待できるストレッチ5選
椎間板ヘルニアへの効果が期待できるストレッチは、以下の5つです。
- 膝を抱えるストレッチ
- 腰ひねりストレッチ
- マッケンジーエクササイズ
- ハムストリングスのストレッチ
- 大殿筋のストレッチ
膝を抱えるストレッチ
膝を抱えるストレッチは、腰回りの筋肉や脊柱起立筋、腰方形筋などをリラックスさせ、痛みを和らげる効果が期待できます。以下の流れでストレッチをしてみましょう。
- 仰向けに寝て両膝を曲げる
- 両手で膝を抱えゆっくりと胸に引き寄せる
- 膝を抱えた姿勢を20~30秒間キープする
- 息を吐きながら元の姿勢に戻す
深い呼吸を繰り返しながら、リラックスして行いましょう。無理に力を入れず、心地よいと感じる程度まで引き寄せましょう。痛みが強い場合は、無理せず膝を軽く抱えるだけでも構いません。膝を抱えるストレッチは、1日数回繰り返すと効果的です。
ストレッチを試す余裕もないほど強い痛みに襲われ、歩くのも困難になるケースもあります。そうした緊急時には、適切な対処法を知っておくことが重要です。以下の記事では椎間板ヘルニアで激痛が出た際の対処法を解説しています。
>>椎間板ヘルニアで激痛が出て歩けないときの緊急対処法
腰ひねりストレッチ
腰ひねりストレッチは、腰の柔軟性を高め、動きをスムーズにするのに役立ちます。腰ひねりストレッチの流れは以下のとおりです。
- 仰向けに寝て両膝を曲げる
- 両腕を横に広げ手のひらを下に向ける
- 肩は床につけたままリラックスする
- 息を吐きながら両膝をそろえたまま左右に倒す
- 左右それぞれ20~30秒間キープする
- 深い深呼吸を繰り返し元の姿勢に戻す
腰ひねりストレッチは、腰をひねることを意識し上半身はできるだけ床につけたまま行い、無理に腰をひねりすぎないように注意しましょう。左右交互に1日数回繰り返すと効果的です。
マッケンジーエクササイズ
マッケンジーエクササイズは、腰椎への負担を軽減し、痛みを和らげる効果が期待できます。後方に突出している椎間板を元の位置に戻し、腰痛の改善に期待できます。マッケンジーエクササイズは以下の流れで行いましょう。
- うつ伏せに寝て両腕を体の横に伸ばす
- 手のひらを床につけ腰に痛みを感じない範囲でゆっくりと上半身を起こす
- 肘を伸ばしたまま姿勢を数秒間キープする
- 息を吐きながら元の姿勢に戻す
ストレッチの最中、腰に痛みを感じたら、すぐに中止しましょう。腰に負担がかからない、無理のない範囲で行ってください。
ハムストリングスのストレッチ
ハムストリングスは、太ももの裏側にある筋肉です。筋肉が硬くなると骨盤が後傾し、腰椎のカーブが変化するため、腰への負担が増加する可能性があります。ハムストリングスの柔軟性が高まると、骨盤の位置に影響を与え、腰痛の緩和に役立つ場合があります。ストレッチは以下の流れで行いましょう。
- 仰向けに寝て片方の足を天井に向けて伸ばす
- タオルやベルトなどを足の裏にかけ手で持つ
- 息を吐きながら足を自分の方に引き寄せる
- 膝は伸ばした状態を保つ
- 足を引き寄せた姿勢を20~30秒間キープする
- 反対側の足も同様に行う
無理に足を引っ張らず、膝を曲げずに行いましょう。タオルがない場合は、手で太もも裏を持つとストレッチに代用できます。左右交互に1日に数回繰り返すと効果的です。
大殿筋のストレッチ
大殿筋は、お尻にある大きな筋肉です。筋肉が硬くなると、骨盤の動きが悪くなり、腰痛を引き起こす可能性があります。大殿筋のストレッチは、骨盤の動きをスムーズにし、腰への負担を軽減する効果が期待できます。大殿筋のストレッチは以下の流れで行いましょう。
- 仰向けに寝て両膝を曲げる
- 右足を左の太ももに乗せる
- 両手で左太ももを胸に引き寄せる
- 20~30秒間キープする
- 反対側の足も同様に行う
大殿筋のストレッチは、無理に太ももを胸に近づけすぎず、深呼吸を意識しましょう。左右交互に1日に数回繰り返すと効果的です。ストレッチは、椎間板ヘルニアの痛みを和らげる効果的な方法ですが、痛みが強い場合や症状が改善しない場合は、医療機関を受診し、医師の診断を受けるようにしましょう。
椎間板ヘルニアの痛みを悪化させないための生活習慣
椎間板ヘルニアの痛みを悪化させないための生活習慣について、以下の4つを解説します。
- 適度な運動:ウォーキングや水泳など
- 体重管理:肥満予防で腰への負担軽減
- 禁煙:血行促進で回復サポート
- 睡眠:質の高い睡眠で痛みを軽減
適度な運動:ウォーキングや水泳など
適度な運動は、硬くなった筋肉を和らげ、血行を促進し、回復をサポートするのに重要です。椎間板ヘルニアに適した運動は、ウォーキングと水泳が挙げられます。ウォーキングは、正しい姿勢を意識して、1日30分を目標に続けましょう。
水泳は、浮力によって腰への負担が軽減される傾向があるため、痛みがある方にも選択肢になる場合があります。水泳だけでなく、水中ウォーキングも効果的です。プランクやドローインなどのエクササイズは、体幹を鍛えるため、椎間板ヘルニアに有効な運動です。体幹を鍛えると腰椎が安定し、椎間板への負担軽減が目指せます。
体重管理:肥満予防で腰への負担軽減
体重が増えると、椎間板への圧力が増し、痛みを悪化させる原因につながります。適正体重の維持は、椎間板ヘルニアの予防や改善に貢献します。バランスの良い食事を心がけ、脂質や糖質の多い食品の過剰摂取は控え、野菜や果物、タンパク質などを含む食事を意識しましょう。
肥満の指標としてBMI(ボディマス指数)が用いられます。BMIは、体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))で計算できます。BMI25以上が肥満の目安であるため、ご自身のBMI値を確認し、肥満傾向にある場合は、生活習慣の改善に取り組みましょう。
禁煙:血行促進で回復サポート
喫煙は健康にさまざまな悪影響を及ぼし、椎間板ヘルニアの回復にも影響を与える可能性があります。ニコチンは、椎間板への酸素供給を不足させて、回復が遅れるリスクを高めてしまいます。禁煙は、ヘルニアの回復を促進させる効果が期待できますが、難しい場合は、医師や薬剤師のサポートを受け、禁煙補助薬や禁煙外来などを活用しましょう。
睡眠:質の高い睡眠で痛みを軽減
質の高い睡眠は、椎間板ヘルニアの痛みを軽減する効果が期待できます。睡眠不足は、痛みの感受性を高め、慢性痛を悪化させる可能性があるという報告がされています。快適な睡眠を得るためには、規則正しい生活リズムを維持し、リラックスできる睡眠環境に整えることが重要です。
寝る前にカフェインを摂取するのは避け、寝室は暗く静かな状態を保ちましょう。毎日同じ時間に寝起きすると、体内時計が調整され、自然な眠気を感じられます。
まとめ
椎間板ヘルニアは、普段の姿勢を意識することで椎間板の負担が軽減し、痛みの緩和につながります。ストレッチは、腰周りの筋肉の柔軟性を高め、痛みを軽減する効果が期待できます。以下の生活習慣の改善も椎間板ヘルニアの予防や改善に貢献します。
- 適度な運動
- 体重管理
- 禁煙
- 質の高い睡眠
個人によって症状や状態は異なるため、方法を試す前に、医療機関を受診し専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。痛みが強い場合や、症状が長引く場合は、早めに医療機関を受診しましょう。日常生活習慣を意識し、腰痛の悩みを軽減することで快適な日々を目指しましょう。
最近では若い世代でも椎間板ヘルニアを発症するケースが増えています。長時間のスマホやパソコン使用、運動不足など、思いがけない習慣が原因になることもあります。以下の記事では、若年層に椎間板ヘルニアが多い原因や初期症状について解説しています。
>>若い人の椎間板ヘルニアに多い原因とは?見逃されがちな初期サインと対策
参考文献
Edel T O’Hagan, Aidan G Cashin, Markus Hübscher, Saad Mohammad Alsaadi, Sylvia Gustin, James H McAuley. Does poor sleep quality lead to increased low back pain the following day?. Scand J Pain, 2023, 23, 2, p.333-340
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