腰や足の痛み、痺れに悩まされていませんか? 朝起きたときや長時間同じ姿勢の後、激痛が走る場合は要注意です。椎間板ヘルニアが原因の可能性があります。日本では、人口の約8割が生涯に一度は腰痛を経験すると言われ、椎間板ヘルニアは代表的な疾患です。
この記事では、自宅でできる椎間板ヘルニアの改善が期待できるストレッチを、痛みの種類別にわかりやすく解説します。適切に行うことで、症状の緩和をサポートし、再発防止に役立つ可能性があります。
当院では、椎間板ヘルニアをはじめとした整形外科疾患に加え、自己脂肪由来幹細胞を活用した再生医療にも積極的に取り組んでおります。手術を避けたい方や、長年痛みに悩まされている方にとって新たな選択肢となるよう、最先端の治療をご提案しています。
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痛みを和らげるストレッチ
椎間板ヘルニアによる腰や足の痛みは、日常生活に大きな支障をきたします。立ち仕事や座り仕事など、長時間同じ姿勢を続けることで、痛みが悪化しやすいという特徴があります。痛みを和らげるためには、腰回りの筋肉の緊張をほぐし、椎間板への負担を軽減することが重要です。
痛みを和らげるためのストレッチとして、以下の3つをご紹介します。
- 膝を抱えるストレッチ(腰の緊張をほぐす)
- 腰をひねるストレッチ(脊椎の柔軟性を高める)
- 足の裏にタオルを使ったストレッチ(ハムストリングの柔軟性向上)
痛みの程度や可動域には個人差があるため、無理をせず、痛みのない範囲で行いましょう。
膝を抱えるストレッチ(腰の緊張をほぐす)
膝を抱えるストレッチは、腰の筋肉や腰方形筋、腸腰筋といった深部に位置する筋肉の緊張を和らげる効果が期待できます。深部に位置する筋肉は、姿勢を維持したり、身体を動かしたりする際に重要な役割を果たしています。長時間同じ姿勢を続けることで硬くなりやすく、腰痛の原因となることがあります。
膝を抱えるストレッチの手順は、以下のとおりです。
- 仰向けに寝て、両膝を曲げます。
- 両手で膝を抱え、ゆっくりと胸に引き寄せます。背中が床から離れないように意識することが大切です。床から離れてしまうと、腰に余計な負担がかかってしまう可能性があります。
- 姿勢を20〜30秒間保持します。深呼吸をしながら、腰の筋肉が伸びていることを意識しましょう。息を吸いながら準備し、息を吐きながらストレッチを深めるようにすると、より改善を期待できます。
- 息を吐きながら、ゆっくりと元の姿勢に戻します。
腰椎の自然な湾曲を保ちながら行うことが重要です。無理に膝を胸に近づけようとすると、腰に負担がかかり、逆効果になる可能性があります。心地良いと感じる範囲でストレッチを行い、痛みやしびれを感じる場合は、すぐに中止してください。
腰をひねるストレッチ(脊椎の柔軟性を高める)
腰をひねるストレッチは、脊椎や腰椎の柔軟性を高める効果が期待できます。椎間板ヘルニアは、椎間板への負担が蓄積されることで発症しやすいため、腰椎の柔軟性を維持することは、椎間板ヘルニアの予防や症状の改善につながります。腰をひねるストレッチの手順は、以下のとおりです。
- 仰向けに寝て、両膝を立てます。両肩は床につけたまま、リラックスした状態を保ちましょう。
- 両膝をそろえたまま、ゆっくりと左右に倒します。上半身はできるだけ動かさないように意識し、腰から下をひねるようにします。
- 各方向で10秒間保持します。深呼吸をしながら、腰の筋肉が伸びていることを意識しましょう。息を吐きながら膝を倒し、息を吸いながら元の姿勢に戻すのがポイントです。
- ゆっくりと元の姿勢に戻します。
- 反対側も同様に行います。
無理にひねろうとせず、痛みが出ない範囲で動かすことが大切です。椎間板ヘルニアを発症している場合は、痛みが強くなる可能性があるため、注意が必要です。1日数回行うことで、腰の柔軟性を維持できます。
足の裏にタオルを使ったストレッチ(ハムストリングの柔軟性向上)
足の裏にタオルを使ったストレッチは、太ももの裏側にあるハムストリングの柔軟性の向上を目的としています。ハムストリングは、大腿の裏側にある筋肉で、姿勢の維持や歩行に重要な役割を果たしています。
ハムストリングが硬くなると、骨盤が後傾し、腰椎への負担が増加するため、椎間板ヘルニアの症状を悪化させる可能性があります。足の裏にタオルを使ったストレッチの手順は、以下のとおりです。
- 仰向けに寝て、片足の裏にタオルをかけます。タオルは、滑りにくい素材のものがおすすめです。
- タオルの両端を両手で持ち、ゆっくりと足を持ち上げます。膝はなるべく伸ばした状態を保ちましょう。
- 足を伸ばしたまま、10秒間保持します。深呼吸を行いながら、太ももの裏側が伸びていることを意識しましょう。
- ゆっくりと元の姿勢に戻します。
- 反対側の足も同様に行います。
足を持ち上げる角度は、無理に高く上げようとせず、60度くらいを目安にしましょう。10秒間保持するのが難しい場合は、無理せず短い時間から始めるようにしてください。高齢の方や身体が硬い方は、タオルではなく、ゴムバンドなどを使用すると、より安全にストレッチを行うことができます。
症状が重い場合や、ストレッチを行っても痛みが改善しない場合は、医療機関を受診するようにしてください。医師の診察を受け、適切な治療を受けることが重要です。
以下の記事では、椎間板ヘルニアの初期に現れやすいサインや症状について詳しく解説しています。早期発見が回復の鍵となるため、該当する症状がある方はぜひ参考にしてみてください。
>>椎間板ヘルニアの初期症状と見逃せないサイン!早期発見のポイント
腰の負担を減らすストレッチ
人の身体は、加齢とともに椎間板の水分量が減少し、弾力性が低下していきます。日頃から正しい姿勢を意識し、適度な運動を行うことで、老化の進行を遅らせることは可能です。
腰の負担を減らすストレッチは、椎間板への負担を軽減し、腰回りの筋肉の柔軟性を高め、血行促進が期待できます。血行が促進されると、筋肉や神経への酸素供給が向上し、痛みの緩和につながります。腰の負担を減らすストレッチとして、以下の2つをご紹介します。
- 猫背改善ストレッチ(正しい姿勢を作る)
- 股関節ストレッチ(骨盤の安定性を高める)
猫背改善ストレッチ(正しい姿勢を作る)
猫背は、椎間板ヘルニアの症状を悪化させる大きな原因の一つです。正しい姿勢を保つことは、腰への負担を軽減し、痛みを予防するために重要です。猫背ストレッチの手順は、以下のとおりです。
- 壁の前に立ち、かかとやお尻、背中、後頭部を壁につけます。
- 両腕を肩の高さで横に伸ばし、手のひらを壁につけます。
- 息を吸いながら、両腕を頭の上に向かってゆっくりと上げていきます。壁から背中が離れないように注意しましょう。
- 息を吐きながら、両腕を元の位置に戻します。肩甲骨を寄せるように意識してください。
- 動作を5〜10回繰り返します。
ポイントは、以下のとおりです。
- 背中全体が壁から離れないように意識する
- 肩甲骨同士を中央に寄せるように意識する
- 無理なくできる範囲で繰り返す
痛みが出た場合はすぐに中止しましょう。
股関節ストレッチ(骨盤の安定性を高める)
股関節の柔軟性を高めることは、骨盤の安定性を向上させ、腰への負担を軽減するのに役立ちます。股関節ストレッチは、股関節周りの筋肉である腸腰筋や梨状筋といった深部に位置する筋肉をほぐし、柔軟性を高めることを目的としています。股関節ストレッチの手順は、以下のとおりです。
- 仰向けに寝て、両膝を立てます。足の裏は床につけたまま、リラックスした状態を保ちましょう。
- 右足を左足のももの上にのせます。無理に足を高く上げようとせず、股関節に痛みを感じない範囲で動作を行いましょう。
- 左手で左ひざ裏を抱え、息を吐きながら胸に引き寄せます。右のお尻が床から離れないように注意しながら、30秒ほどキープします。
- 反対側も同様に行います。
ポイントは、以下のとおりです。
- 呼吸を止めないように、自然な呼吸を続ける
- 股関節に痛みを感じたら、無理せず範囲を狭める
- 左右のバランスを見ながら行う
- ゆっくりとした動作で行う
急な動きは筋肉を傷つける可能性があります。股関節の柔軟性には個人差があるため、左右で異なる角度になることもあります。しかし、ストレッチだけでは根本的な解決にならない場合もあります。症状が改善しない、または悪化する場合は、医療機関を受診し、専門医の適切な診断と治療を受けるようにしましょう。
ストレッチの正しい方法と注意点
ストレッチは、間違った方法で行うと、逆に症状を悪化させてしまう可能性もあります。椎間板ヘルニアの症状緩和に役立つ可能性のある、ストレッチの正しい方法と注意点について、以下のとおり解説します。
- ストレッチ前のウォーミングアップ
- ストレッチの時間・回数・強度の目安
- 痛みを感じた場合の対処法
- ストレッチを習慣化するコツ
ストレッチ前のウォーミングアップ
ストレッチを始める前に、ウォーミングアップを行うことは大切です。ウォーミングアップなしで急にストレッチを行うと、筋肉や関節を痛めてしまうことがあります。ウォーミングアップをすることで、筋肉の温度が上がり、血行が促進され、柔軟性が向上し、怪我の予防にもつながります。
5〜10分程度の軽い運動が準備運動として適しています。ウォーキングや軽いジョギング、ラジオ体操などがおすすめです。ラジオ体操は全身の筋肉をバランスよく動かすことができます。
ストレッチの時間・回数・強度の目安
ストレッチを行う際には、時間や回数、強度を適切に調整することが重要です。長時間やりすぎたり、無理に伸ばしたりすると、筋肉や関節を痛めてしまう可能性があります。一つのストレッチにつき、20〜30秒程度を目安に、1日に数回行うようにしましょう。
ストレッチの強度は、痛みを感じない程度に調整することが大切です。「少し伸びている」と感じる程度が良いです。気持ち良いと感じるくらいの強さが適切です。もし痛みを感じたら、すぐに中止するようにしてください。
椎間板ヘルニアの症状は人それぞれです。ご自身の身体の状態に合わせて、ストレッチの時間や強度を調整することが大切です。
痛みを感じた場合の対処法
ストレッチ中に痛みを感じた場合は、無理せず中止することが大切です。痛みが強い場合は、冷罨法(れいあんぽう、患部を冷やす処置)を試してみましょう。氷水を入れた袋や保冷剤をタオルで包み、患部に15〜20分程度当てて冷やします。
患部を冷やすことで、炎症を抑え、痛みを和らげることができます。痛みが引かない場合は、医療機関を受診し、医師に相談するようにしましょう。自己判断でストレッチを続けると、症状を悪化させる可能性があります。
以下の記事では、椎間板ヘルニアの症状を悪化させないために日常生活で避けるべき動作や習慣について、具体的に解説しています。症状が悪化しないよう正しい知識を身につけましょう。
>>椎間板ヘルニアでやってはいけないこと!悪化を防ぐ注意点
ストレッチを習慣化するコツ
ストレッチで改善を期待するためには、継続して行うことが重要です。毎日決まった時間に行う、好きな音楽を聴きながら行う、家族と一緒に楽しく行うなど、続けやすい方法を見つけることが大切です。無理なく続けられるように、自分の生活スタイルに合わせた方法でストレッチを習慣化していきましょう。
ストレッチでの改善を実感することで、モチベーションを維持できます。ストレッチを始めてから腰痛が軽減した、身体が軽くなったなど、少しでも変化を感じたら、記録しておきましょう。モチベーションを維持し、習慣化することにつながります。
ストレッチと併用すると効果が期待できるケア方法
ストレッチは改善を期待できますが、他のケア方法と組み合わせることで、相乗効果が期待できます。ストレッチと併用することで効果が期待できるケア方法について、以下のとおり解説します。
- 温熱療法と冷罨法(れいあんぽう)の使い分け
- 腰に負担をかけない生活習慣(姿勢・歩き方の見直し)
- 体幹を鍛える筋力トレーニング
- 専門医の診察
温熱療法と冷罨法(れいあんぽう)の使い分け
温熱療法と冷罨法は、どちらも椎間板ヘルニアの痛みを和らげるのに役立ちますが、異なるメカニズムで作用します。温めるか冷やすか、状況に応じて使い分けることが重要です。温熱療法と冷罨法については、以下のとおりです。
療法 | 効果 | 適応期 | 方法 |
温熱療法 | 血行促進・筋緊張緩和 | 急性期を過ぎた後 | お風呂・温湿布・ホットタオル |
冷罨法 | 炎症抑制・痛み緩和 | 急性期(痛み始め) | 保冷剤・冷湿布 |
腰に負担をかけない生活習慣(姿勢・歩き方の見直し)
腰に負担をかけない正しい姿勢や歩き方を身につけることは、椎間板への負担を軽減し、症状の改善・再発予防につながります。腰に負担をかけない生活習慣として、正しい姿勢や歩き方を意識しましょう。
立っているときは背筋を伸ばし、お腹に力を入れ、骨盤を立てることを意識します。座るときは、浅く腰掛けず、深く座り、背もたれを使うようにしましょう。猫背は腰椎への負担を増大させるため、注意が必要です。
正しい歩き方は、歩幅を小さく、かかとから着地し、つま先で地面を蹴るように歩くようにすることです。大きな歩幅で歩くと、腰に負担がかかりやすくなります。
体幹を鍛える筋力トレーニング
体幹を鍛えることは、腰椎を支える筋肉を強化し、椎間板への負担を軽減する可能性があります。椎間板ヘルニアの予防・改善につながります。プランクやバックエクステンション、ブリッジなどの筋力トレーニングは、体幹強化を期待できます。
筋力トレーニングは、腰に負担がかかりすぎないように、無理のない範囲で行うことが大切です。最初は少ない回数から始め、徐々に回数を増やしていくことをおすすめします。
専門医の診察
ストレッチや他のケアを試しても痛みが改善しない場合や、しびれや麻痺などの神経症状が現れる場合は、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。医療機関では、MRI検査などで椎間板の状態を詳しく調べることができます。
腰椎椎間板ヘルニアは、腰痛や神経機能障害、臀部・脚の痛みといった下肢痛の一般的な原因です。ヘルニアとは、椎間板の髄核が線維輪を突き破って神経構造を圧迫している状態です。軽度の腰痛や臀部痛から、歩行不能や馬尾(ばび)症候群といった重症例まで、症状の重症度はさまざまです。
医師の診察を受け、適切な薬物療法などの治療法を受けることが大切です。治療計画は、患者さんの症状や身体診察所見、画像所見にもとづいて決定されます。症状が持続または悪化する場合は、手術が適切となる場合もあります。
まとめ
つらい腰や足の痛み、痺れを和らげるために、自宅で簡単にできるストレッチをぜひ試してみてください。腰回りの筋肉の緊張をほぐし、椎間板への負担を軽減が期待できます。膝を抱えるストレッチや腰をひねるストレッチ、タオルを使ったハムストリングのストレッチなど、どれも無理なく行えます。
ストレッチを行う際のポイントは、ゆっくりと動作を行い、痛みを感じない範囲で行うことです。ウォーミングアップをしっかり行い、ご自身の身体の状態に合わせて、時間や強度を調整することも大切です。
ストレッチは、椎間板ヘルニアの症状改善に役立ちますが、痛みが強い場合や症状が改善しない場合は、医療機関を受診するようにしましょう。自己判断せずに、専門医の適切な診断と治療を受けることが大切です。快適な日常生活を送るために、今日からストレッチを始めてみましょう。
以下の記事では、ストレッチだけでなく、椎間板ヘルニアの回復を早めるために日常生活で実践できる具体的な生活習慣や注意点について詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
>>椎間板ヘルニアを早く治す方法!回復を促進する生活習慣
参考文献
Andrew S Zhang, Andrew Xu, Kashif Ansari, Kyle Hardacker, George Anderson, Daniel Alsoof, Alan H Daniels. Lumbar Disc Herniation: Diagnosis and Management. Am J Med, 2023, 136(7), p.645-651.
Robert G Watkins 4th, Robert G Watkins 3rd. Cervical Disc Herniations, Radiculopathy, and Myelopathy. Clin Sports Med, 2021, 40(3), p.513-539.
中村耕三. 腰痛の疫学. 中外医学社, 2006.
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