腰の痛みやしびれ、歩くのもつらいと、椎間板ヘルニアの症状に悩まされている方は少なくありません。椎間板ヘルニアは、背骨の間にある椎間板というクッションが飛び出して、神経を圧迫することで痛みやしびれを引き起こします。適切なウォーキングが、椎間板ヘルニアの症状改善に役立つ可能性があります。
ウォーキングは腰を支える筋肉を鍛え、血行を促進し、痛み軽減効果をもたらす鎮痛物質「エンドルフィン」の分泌を促します。本記事では、ウォーキングのメリット・デメリットや注意点、ウォーキング以外のセルフケアについても解説します。椎間板ヘルニアと上手に付き合い、快適な日常生活を取り戻すためのヒントが満載ですので、ぜひ最後までご一読ください。
以下の記事では、椎間板ヘルニアの症状を悪化させる行動や避けるべき日常の習慣について詳しく解説しています。適切なセルフケアのためにもぜひご覧ください。
>>椎間板ヘルニアでやってはいけないこと!悪化を防ぐ注意点
目次
椎間板ヘルニア時のウォーキングは「状態を見ながら行うことを推奨」
椎間板ヘルニア時のウォーキングは、状態を見ながら行いましょう。すべての椎間板ヘルニアの患者さんにウォーキングが適しているわけではありません。特に、痛みやしびれが強い時期に無理に歩くと、かえって症状が悪化してしまう可能性があります。症状が強い時期は、安静を保つことが最優先です。
強い炎症が残っている時期のウォーキングは、神経への刺激が増し、炎症が悪化し、痛みがさらに強くなってしまう可能性があります。ウォーキングを始める際は、事前に医師へ相談しておき、自分の状態に合う方法かどうかを確認すると、安心感を得て行えます。
椎間板ヘルニアでウォーキングをするメリット3選
椎間板ヘルニアでウォーキングをするメリットは以下の3つです。
- 痛みの軽減効果
- 筋力強化による腰への負担軽減
- 血行促進による回復効果
痛みの軽減効果
ウォーキングは、体内で生成される「エンドルフィン」という物質の分泌を促します。エンドルフィンは、モルヒネ様作用を持つ神経伝達物質です。エンドルフィンが分泌されることで、椎間板ヘルニアによる痛みを軽減する効果が期待できます。炎症を引き起こす物質の排出も促されるため、痛みの緩和につながります。
筋力強化による腰への負担軽減
ウォーキングは、筋力強化による腰への負担軽減の効果も期待できます。正しい姿勢を意識したて歩行は、腹筋や背筋、大殿筋などがバランス良く強化できます。そして、弱体化した腰椎をサポートでき、症状の改善につながるのです。
腰を支える筋肉、特に体幹のインナーマッスルの衰えも、椎間板ヘルニアの痛みの原因です。インナーマッスルとは、深層部に位置する筋肉群で、姿勢の維持や体の安定に重要な役割を果たしています。
血行促進による回復効果
ウォーキングは、血行を促進する効果があります。歩行によって筋肉が収縮と弛緩を繰り返すことで、ポンプのような作用が働き、血液循環が活発になります。血行促進によって、椎間板への酸素供給や栄養供給が改善され、損傷した組織の修復を促進できます。結果として、痛みの軽減や回復期間の短縮にもつながるのです。
椎間板は、血管が少ない組織であるため、栄養供給が他の組織に比べて限定的です。そのため、血行不良になると、椎間板への栄養供給が滞り、損傷の修復が遅延し、症状の慢性化につながる可能性があります。
椎間板ヘルニアのウォーキングにおける注意点4選
椎間板ヘルニアのウォーキングにおける注意点は以下のとおりです。
- 痛みが出る場合は中止する
- 正しい姿勢を意識する
- 適切な靴を選ぶ(クッション性があって足にフィットするもの)
- ウォーキング時間や距離は徐々に増やす
痛みが出る場合は中止する
ウォーキング中に少しでも痛みを感じたら、直ちに中止してください。痛みは体が発する危険信号です。多少の痛みなら問題ないと安易に考えず、体の異変を敏感に察知して、適切に対応することが大切です。ウォーキングを続けることで、炎症が悪化し、神経がさらに圧迫される可能性があります。
痛みが治まらない場合は、ウォーキングを中止し、医療機関を受診することをおすすめします。自己判断で治療を中断せず、医師の指示に従うことが重要です。
正しい姿勢を意識する
ウォーキング中は正しい姿勢を維持することが重要です。背筋を伸ばし、あごを軽く引き、目線は前方に、肩の力は抜いてリラックスした状態を保ちましょう。猫背や前かがみ、あるいは逆に腰を反りすぎる姿勢は、椎間板に大きな負担を与えます。
腰椎椎間板ヘルニアの場合は、腰を丸めた状態だと椎間板が刺激されやすいため、前かがみの姿勢や猫背は避けなければなりません。正しい姿勢を意識することで、ウォーキングの効果を最大限に引き出し、快適に運動を続けることができます。
適切な靴を選ぶ(クッション性があって足にフィットするもの)
適切な靴選びは、快適で安全なウォーキングに欠かせません。クッション性が高く、足にフィットする靴は、歩行時の衝撃を吸収し、足腰への負担を軽減します。椎間板への負担も軽減され、症状の悪化を防ぐことができます。靴を選ぶ際には、実際に履いてみて、サイズや履き心地を確かめることが重要です。
サイズが合わない靴や、足に合わない靴は、歩行時のバランスを崩し、転倒のリスクを高める可能性があります。スポーツ用品店などで専門家のアドバイスを受けながら、自分に合った靴を選ぶことをおすすめします。
ウォーキング時間や距離は徐々に増やす
ウォーキングを始める際は、最初から長時間、長距離を歩こうとせず、徐々に時間と距離を延ばしていくことが重要です。いきなり負荷をかけすぎると、体に負担がかかり、症状悪化につながります。最初は1日10分程度から始め、1週間ごとに5分ずつ時間を増やすなど、徐々に延ばすことをおすすめします。
厚生労働省は、1回あたり10分以上の中程度の運動を1週間あたり150分以上行うことを推奨しています。椎間板ヘルニアの症状がある場合は、自身の状態に合わせて無理なく行うことが大切です。痛みが少しでも出たら、すぐに中止し、安静にしてください。
ウォーキング以外の椎間板ヘルニアのセルフケア3選
椎間板ヘルニアの治療には、手術が必要なケースもありますが、多くの椎間板ヘルニアは保存療法で改善が期待できます。痛みがある場合は、ウォーキング以外のセルフケアも検討する必要があります。ウォーキング以外の椎間板ヘルニアのセルフケアは以下のとおりです。
- ストレッチで筋肉をほぐす
- 生活習慣を改善する
- 専門医の指導を受ける
セルフケアを正しく理解し、実践することで、椎間板ヘルニアの症状緩和、そして再発予防につなげましょう。
ストレッチで筋肉をほぐす
椎間板ヘルニアを発症すると、腰や背中の筋肉がこわばりやすくなり、その結果として血流が滞りやすくなります。こうした筋肉の緊張は、周囲の神経を刺激・圧迫し、痛みやしびれを引き起こす原因になることがあります。そのため、ストレッチなどで筋肉をゆるめ、血行を改善することが症状の緩和に役立ちます。
日常生活の中で無理なく取り入れられるストレッチを行うことで、筋肉の柔軟性が高まり、再発予防にもつながります。症状の改善に効果が期待できるストレッチ方法は以下のとおりです。
- 膝を抱えるストレッチ
- 腰回しストレッチ
- ハムストリングスのストレッチ
- 梨状筋のストレッチ
膝を抱えるストレッチは、仰向けに寝た状態で行い、両膝を胸に引き寄せ、15~30秒ほど維持します。大腿四頭筋や腸腰筋、腰方形筋といった、腰痛に関連する筋肉の柔軟性を高めます。
腰回しストレッチは、足を肩幅に開いて立ち、両手を腰に当て、ゆっくりと腰を大きく回します。左右10回ずつ行います。腰回りの筋肉をほぐし、可動域を広げる効果があります。
ハムストリングスのストレッチは、床に座り、片方の足を伸ばし、もう片方の足の裏を太ももの内側につけます。伸ばした足のつま先に向かって上体を倒し、15~30秒ほど維持します。ハムストリングスの柔軟性を向上させることで、骨盤のバランスが整いやすくなり、姿勢の安定にもつながります。結果、腰にかかる負担を軽減し、腰痛の予防や再発防止に役立つとされています。
梨状筋のストレッチは、坐骨神経痛の緩和に有効とされる方法の一つです。椅子に腰かけた状態で、片方の足首を反対側の太ももの上に乗せ、脚を組むような姿勢を取ります。そのまま上半身をゆっくりと前方に倒し、無理のない範囲で15~30秒ほど姿勢をキープします。無理に力を入れず、呼吸を止めずに行うのがポイントです。
梨状筋のストレッチによって梨状筋の緊張を和らげることができ、神経への圧迫が軽減されることで、痛みやしびれといった症状が緩和される可能性があります。効果のアップが期待できるストレッチのポイントは、次の通りです。
- 痛みのない範囲で行う
- 呼吸を止めずにゆっくりと行う
- 反動をつけない
痛みを感じたら無理をせずに中止するようにしましょう。
以下の記事では、椎間板ヘルニアの症状を和らげるために自宅で無理なく実践できるストレッチ方法を、より詳しく解説しています。安全にケアしたい方は、ぜひ参考にしてください。
>>椎間板ヘルニアの改善が期待できるストレッチ!自宅でできる痛み軽減法
生活習慣を改善する
日常生活における姿勢や運動習慣は、椎間板ヘルニアの症状に影響を与えます。正しい姿勢を意識し、適度な運動を継続することで、椎間板への負担を軽減し、症状の改善、再発予防を期待できます。パターン別の正しい姿勢は以下のとおりです。
- 立っているとき:背筋を伸ばし、お腹に軽く力を入れる
- 座っているとき:浅く腰掛けず、深く座り、背筋を伸ばし、骨盤を立てるように意識する
- 寝ている時:仰向けの場合は膝の下にクッションを敷き、横向きの場合は膝を軽く曲げて、抱き枕などを抱える
デスクワークが多い方は、適切な高さの椅子を選び、足を床にしっかりとつけることが大切です。普段の生活では、以下の点にも注意しましょう。
- 長時間同じ姿勢を続けない
- 重い荷物の持ち方に注意する
- 猫背にならないように注意する
専門医の指導を受ける
セルフケアの効果を感じられない場合や椎間板ヘルニアの症状が重い場合は、必ず専門医の指導を受けましょう。医師の診察によって、MRI検査などを行い、椎間板の状態を正確に診断します。薬物療法や理学療法、手術など、症状や病状に合わせた適切な治療法を選択してもらえるため、安心感も得られます。
セルフケアの指導や生活習慣の改善指導も行ってもらえるので、回復が早まる可能性も高まります。椎間板ヘルニアは、早期に適切な治療を行うことで、症状の改善や再発予防が期待できます。自己判断せず、専門医に相談し、適切な治療とセルフケアを行いましょう。
近年では、保存療法や手術に加え、再生医療などの新たな治療法も登場し、椎間板ヘルニアの「治らない」というイメージが変わりつつあります。以下の記事では、最新の治療法や回復の可能性について詳しく解説していますので、今後の治療選択の参考にしてみてください。
>>椎間板ヘルニアは一生治らない?最新治療と回復の可能性
まとめ
椎間板ヘルニアになると、痛みやしびれで歩くのがつらくなる方もいるかもしれません。しかし、症状が落ち着いている時期であれば、ウォーキングは症状改善に効果が期待できます。ウォーキングによって、腰を支える筋肉が鍛えられ、血行促進にもつながります。ウォーキングを行う際の注意点は以下のとおりです。
- 長時間同じ姿勢を続けない
- 重い荷物の持ち方に注意する
- 猫背にならないように注意する
痛みやしびれが強いときは、無理せず安静にしましょう。ウォーキングを始める際は、医師に相談し、自分の状態に合ったペースで行うことが大切です。適切な靴選びも重要です。椎間板ヘルニアの症状改善に役立つウォーキングを、安全かつ効果的に行うための一助となれば幸いです。
腰に負担をかけにくい姿勢の取り方やストレッチの方法を知っておくことは、痛みの緩和や再発予防に役立ちます。以下の記事では、椎間板ヘルニアの痛みを軽減するための正しい姿勢や、自宅でできる効果的なストレッチ方法を詳しく紹介しています。
>>椎間板ヘルニアの痛みを和らげる姿勢と効果が期待できるストレッチ法を紹介
参考文献
厚生労働省:健康づくりのための身体活動・運動ガイド
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