慢性的な腰痛、寝ているときの痛みやしびれの悩みは、腰椎椎間板ヘルニアが原因かもしれません。安静にしていても痛みが続くのは、想像以上につらいものです。日本人の約25%が腰痛を有しているとされており、腰椎椎間板ヘルニアに悩む方も含まれています。快適な睡眠は心身の健康に不可欠です。
間違った寝方をしていると、かえって症状を悪化させてしまう可能性もあります。この記事では、腰椎椎間板ヘルニアの痛みを軽減する効果的な寝方や、避けるべき寝方、適切な寝具選びのポイントまで解説します。毎晩の睡眠の質を向上させ、日中の活動も快適に過ごせるよう、ぜひ参考にしてください。
以下の記事では、初期段階で見逃しやすいサインや早期発見のためのチェックポイントを詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアの初期症状と見逃せないサイン!早期発見のポイント
目次
腰椎椎間板ヘルニアで腰痛を悪化させない!楽な寝方3選
腰椎椎間板ヘルニアの痛みを悪化させないためには、日中の姿勢だけでなく、寝ている間の姿勢にも気を配ることが大切です。腰椎椎間板ヘルニアの痛みを悪化させない寝方について、以下の3つを解説します。
- 横向き寝
- 仰向け寝
- うつ伏せ寝
横向き寝
横向き寝は、腰への負担を軽減するのに効果的な寝方です。膝を軽く曲げ、抱き枕やクッションを太ももの間に挟むと、骨盤が安定し、腰椎への圧力が分散されます。椎間板ヘルニアは、神経が圧迫されることで痛みやしびれが生じるため、神経の圧迫軽減が重要です。
横向き寝では、背骨が自然なS字カーブを維持しやすいため、神経への圧迫を最小限に抑えることができます。痛みがある側を下にして寝ると、患部にさらに負担がかかり、症状が悪化する可能性がありますので、避けてください。横向き寝で抱き枕やクッションを使うもう一つのメリットは、寝返りがスムーズになることです。
寝返りは、体の同じ部位にかかる負担を軽減し、血行を促進するため、質の高い睡眠を得るためには不可欠です。
仰向け寝
仰向け寝は、体の圧力が均等に分散されるため、腰への負担が少ない寝方です。しかし、腰が反りやすい方は、仰向けで寝ると腰椎への負担が増加し、痛みが増すことがあります。痛みが増す場合、膝の下にクッションなどを置くと腰の反りが抑えられ、腰への負担や痛みを和らげる効果が期待できます。
膝を軽く曲げることで、腰部の筋肉がリラックスし、より快適な睡眠を得ることができます。仰向けで寝る際に、腰とマットレスの間に隙間ができる場合は、タオルなどで隙間を埋めることで、腰への負担軽減が期待できます。
うつ伏せ寝
うつ伏せ寝は、腰を反らせる姿勢になるため、椎間板への負担が大きくなり、腰痛を悪化させる可能性があります。腰椎椎間板ヘルニアの方は、基本的にうつ伏せ寝は避けるべきです。どうしても楽な場合のみ、短時間行うようにしてください。
長時間うつ伏せで寝続けると、腰痛が悪化したり、寝違えを起こしたりするリスクが高まります。
症状を悪化させないための寝具選び
適切な寝具を選ぶことは、症状の悪化を防ぎ、快適な睡眠を得るために重要です。症状を悪化させないために選ぶ寝具について、以下の2つを解説します。
- マットレス:硬すぎず柔らかすぎないものを選ぶ
- 枕:首のカーブを支え、高すぎないものを選ぶ
マットレス:硬すぎず柔らかすぎないものを選ぶ
マットレス選びで最も重要なのは、硬すぎず柔らかすぎない適切な硬さのものを選ぶことです。柔らかすぎるマットレスは体が深く沈み込み、腰を支えることができず、かえって負担がかかってしまいます。体重が一点に集中することで、特定の部位への圧迫が強くなり、血行不良や神経の圧迫を引き起こす可能性があります。
柔らかすぎるマットレスは寝返りが打ちにくくなるため、同じ姿勢を長時間続けることになり、痛みが悪化しやすいです。反対に、硬すぎるマットレスは体の凸凹した部分への圧力が集中し、血行が悪くなることがあります。骨の突出している部分が圧迫され、痛みや不快感を引き起こす可能性があります。
腰椎椎間板ヘルニアの場合は、適度な硬さで体圧を分散してくれるマットレスが理想的です。体重が均等に分散されることで、腰への負担が軽減され、神経への圧迫も最小限に抑えられます。適切なマットレスの硬さは、個人の体重や体型、痛みの程度によって異なります。
一般的には、仰向けに寝たときに腰とマットレスの間に手のひら一枚分程度の隙間ができる程度の硬さが適切とされています。購入する際は、実際に寝転がって確かめてみることをおすすめします。数分間寝転がり、腰の部分に違和感や痛みがないか、寝返りがスムーズに打てるかを確認しましょう。
枕:首のカーブを支え、高すぎないものを選ぶ
枕は、首のカーブを自然に支え、頭と首が一直線になる高さが理想的です。高すぎる枕は、首が不自然に前傾し、気道を圧迫する可能性があります。首の後ろの筋肉が緊張し、肩や首のこりを引き起こして、頭痛の原因となることもあります。
低すぎる枕は、頭が不安定になり、首が過度に伸展し、痛みや不快感を引き起こすことがあります。自分に合った高さの枕を選ぶことで、首への負担を軽減し、快適な睡眠を得られる可能性があります。柔らかすぎる枕は、寝ている間に頭が沈み込み、気道を圧迫する恐れや、首を支えられず、寝違えの原因になることもあります。
適度な弾力性があり、頭をしっかりと支えてくれる枕を選びましょう。仰向けで寝たときに、首に隙間ができない自然なカーブを保てる枕がおすすめです。横向きで寝る場合は、肩幅を埋める程度の厚みのある枕を選ぶと、首への負担軽減が期待できます。
枕の素材も重要です。低反発素材やパイプ素材など、さまざまな素材がありますが、それぞれ特徴が異なります。自分の寝方に合わせて、適切な素材の枕を選びましょう。横向きで寝る場合は、頭部をしっかりと支える低反発素材の枕が適しています。
腰椎椎間板ヘルニアによる痛みは腰だけでなく、足の付け根にまで広がることがあります。以下の記事では、足の付け根に痛みが出る原因や、自宅でできる対処法について詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
>>【医師監修】腰椎椎間板ヘルニアによる足の付け根の痛みの原因と対処法
症状を悪化させないための睡眠環境のポイント
椎間板ヘルニアの症状を悪化させない睡眠環境のポイントは、以下の3つです。
- 寝具を清潔に保つ
- 寝具の素材を選ぶ
- 睡眠環境を快適にする
不衛生な寝具は、アレルギー症状を引き起こし、腰椎椎間板ヘルニアの痛みを悪化させる可能性があります。清潔な寝具を保つためには、定期的な洗濯と天日干しが効果的です。シーツや枕カバーは週に1回程度の洗濯、布団や毛布は月に1回程度天日干しして、ダニやカビの繁殖を予防しましょう。
防ダニ加工の寝具カバーを使用するのも良いです。寝具の素材は、吸湿性と放湿性に優れた綿や麻などの天然素材だと、湿気がこもりにくくおすすめです。化学繊維の中には通気性が悪く、湿気をため込みやすいものもあるため、吸湿性・放湿性などの特性を考慮して選びましょう。
寝室は、定期的に窓を開けて換気し、新鮮な空気を取り込むことが大切です。一般的に、室温は18〜20度、湿度は50〜60%が快適な睡眠環境と言われています。
腰椎椎間板ヘルニア時の睡眠に関するよくある誤解
つらい症状を少しでも早く和らげようとする寝方や行動の中には、症状を悪化させてしまうものもあります。腰椎椎間板ヘルニアの症状を悪化させないために、よくある誤解について、以下の内容を解説します。
- 無理に横になる
- 同じ体勢で長時間寝る
- 痛み止めを常用する
- 自己判断でストレッチやマッサージを行う
無理に横になる
腰椎椎間板ヘルニアになると、痛みで動くのもつらいと感じ、横になれば楽になると思いがちです。しかし、常に横になることが最善とは限りません。ヘルニアの状態によっては、座っているほうが楽な場合もあります。無理に横になることで、かえって腰への負担を増大させ、痛みやしびれを悪化させる可能性があるからです。
椎間板ヘルニアは、椎間板の中にある髄核というゼリー状の物質が、線維輪という外側の組織から突出することで起こります。飛び出した髄核が神経を圧迫することで、痛みやしびれなどの症状が現れます。横になると、髄核にかかる圧力が変化し、神経への刺激が強くなることがあります。
無理に横になるのではなく、楽な姿勢を見つけることが大切です。ソファに寄りかかる、リクライニングチェアを使用するなど、自分に合った姿勢を探してみましょう。横になる場合でも、膝を軽く曲げる、クッションを使うなどして、腰への負担を軽減する工夫をしましょう。
横になった際に痛みが増すようであれば、無理をせず、他の姿勢を試すことが重要です。
同じ体勢で長時間寝る
同じ体勢で長時間寝続けると、特定の部位に負担がかかり続け、血行不良や筋肉の凝りを招き、痛みが増悪する可能性があります。血行不良や筋肉の凝りは、腰椎椎間板ヘルニアの患者さんにとって大きな問題です。血行不良は神経への酸素供給を阻害し、筋肉の凝りは神経をさらに圧迫するからです。
腰椎椎間板ヘルニアの痛みを軽減するためには、定期的に寝返りを打つことが重要です。寝返りを打つことで、体の重さが分散され、特定の部位への負担を軽減できます。血行が促進されることで、筋肉の緊張が和らぎ、痛みの緩和にもつながります。
痛み止めを常用する
痛み止めは、炎症を抑え、痛みを一時的に和らげる効果が期待できますが、ヘルニアの根本的な原因を解決するものではありません。常用すると、以下の問題が生じる可能性もあります。
- 胃腸障害
- 腎機能障害
- 薬への依存
痛み止めを使用する際は、医師の指示に従い、適切な量と期間を守ることが重要です。自己判断で服用量を増やす、長期間服用し続けることは避けましょう。痛み止めだけに頼るのではなく、他の治療法と併用することで、より効果的に痛みを管理できます。
椎間板ヘルニアは手術をせずに自然治癒するケースもあり、その回復には一定の期間と適切なセルフケアが必要です。以下の記事では、自然治癒の経過や注意点について詳しく解説していますので、再発予防や正しい判断の参考にしてください。
>>椎間板ヘルニアの自然治癒期間は?回復過程とセルフケアの注意点を解説
自己判断でストレッチやマッサージを行う
腰椎椎間板ヘルニアの痛みを和らげるために、自己判断でストレッチやマッサージを行うことは危険です。間違った方法でマッサージを行うと、症状を悪化させる可能性があります。特に、腰をひねる、反らすなどの動きは、ヘルニアを悪化させる可能性があるため、避けるべきです。
インターネットや書籍で紹介されているストレッチやマッサージが、すべての人に安全で効果的とは限りません。個々の症状やヘルニアの状態によって、適切なストレッチやマッサージは異なります。ストレッチやマッサージを行う際は、必ず医師や理学療法士などの専門家の指導を受けるようにしましょう。
専門家の指導のもと、適切な方法で行うことで、安全かつ効果的に痛みを軽減し、症状の改善を図ることができます。
まとめ
快適な睡眠は、心身の健康にとって重要です。腰椎椎間板ヘルニアの痛みを悪化させないためには、寝ている間の姿勢に気を配りましょう。横向き寝では、膝を軽く曲げ、抱き枕やクッションを挟むと、骨盤が安定し、腰椎への圧力が分散されます。
仰向け寝では、膝下にクッションを置き、腰の反りを軽減することで、腰椎への負担を和らげます。うつ伏せ寝は、腰への負担が大きいため、どうしても楽な場合のみ短時間行いましょう。
寝返りは、体の負担を分散し、血行を促進するため重要です。硬すぎず柔らかすぎないマットレスや首を支える適切な高さの枕、清潔な寝具を選ぶことで、より快適な睡眠を得られます。自分に合った寝方や寝具を見つけることで、痛みを軽減し、快適な睡眠を手に入れましょう。
症状の重さに応じた対応を知っておくことも大切です。以下の記事では、腰椎椎間板ヘルニアの症状をレベル別に整理し、それぞれに適した対処法について詳しく解説しています。
>>腰椎椎間板ヘルニア症状のレベル別特徴と対処法
参考文献
中井徹.腰痛の疫学.Orthopaedic Practice,2010,31,7,p.670-674
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